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今、沖縄のある焼き物が、ヨーロッパの美術界で注目されています。陶器とガラスを融合する世界で唯一の技法で生み出された「石垣焼」その魅力に迫ります。

去年12月、フランス、パリ。ルーブル美術館の地下の会場で開かれた、フランス国立美術協会の展覧会で、一際注目を集めた日本代表作品。石垣市の陶芸家、金子晴彦さんの石垣焼です。

150年以上の歴史を持ち、かつてはピカソなど美術界の巨匠も会員に名を連ねたこの展覧会で、陶芸作品としては異例の、2部門で金賞を受賞しました。

石垣焼とは、日本の伝統的な、漆黒の「油滴天目」をベースとしながら、陶器とガラスを融合し、まるで沖縄の海を思わせる、独特のブルーを生み出す、世界で唯一の技法です。

石垣市にある、石垣焼の工房。年間10万人の観光客が訪れます。

ニュージーランド人観光客「Its absolutely beautiful, I really love the colors, I think it really represents local color of the sea and」

石垣焼の製造工程。土から成形された作品は、その後、素焼きされます。素焼きされた器の周囲に、油滴天目の模様となる釉薬を塗っていきます。

器の真ん中の部分には、別の釉薬が塗られています。釉薬の原料となる鉱石は、石垣島などから採取されたもので、ここに、透明なガラスをのせて焼くことで、特徴的なブルーが生まれます。

金子さん「ガラスがキャンパスになって、このミネラル分が溶け込むことによって、また特殊な焼き方をすることによって、湧いてくると言うんですか、発色法なんですね。ですからそういう意味では、素材も重要なんですが、焼き方に秘密があります。」

ガラスをのせて焼く工程は、企業秘密。最後の窯出しの作業を見せてもらいました。

金子さん「こういう風に綺麗に上がってくれた時にはすごく嬉しいですね、これも綺麗ですね。」

石垣焼の成功率は、わずか3割。陶器とガラスの融合は難しく、多くは発色しなかったり、割れてしまうと言います。

金子さんは、かつて与論島で焼き物を作っていた父親の影響で、陶芸の世界に入りました。

大学を卒業して一度は大手広告代理店に就職しましたが、17年前に石垣島に移住、石垣焼を創設しました。最初は失敗ばかりでした。

金子さん「何回も辞めたいという思いはありましたけど」「ガラスと陶器の融合という意味では、先駆者なものですから、なんとかそういう意味ではこの分野を完成させたいという思いがありましたね。」

石垣焼のブルーは、「石垣ブルー」と呼ばれています。金子さん「この石垣のブルーの海というのは本当に最高のブルーで、このブルーがいかに石垣島を訪れる観光客の心を癒すかっていうのを見ていただければ一目瞭然だと思います」

5年前からは、ヨーロッパの見本市や展覧会に積極的に出品するようになりました。金子さん「一つは、石垣という名前を世界の美術館なり、有名コレクターに収集して欲しかった。それがやがて、八重山の沖縄の財産になっていくという思いがあったものですから」

こちらは市内にある、石垣焼の器を使ったレストラン。石垣焼は、今や島の中だけでなく、国内外のレストランで使われています。金子さんの生み出す石垣ブルーが、今、世界の人を魅了しています。

フランスでも展示された石垣焼ですが、今月19日からは恩納村の沖縄科学技術大学院大学で展示されるということです。