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きょうの特集は、心と体の性別が一致しない性同一性障害の夫とその妻について。性別を変更した夫が自分たちの子どもを持とうと決心した時、夫婦にはどんな思いが交錯したのでしょうか。

非配偶者間の人工授精AID(エー・アイ・ディー)で第1子を誕生させた澤岻さん夫婦の思いに迫りました。

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良心さん「AIDだけでなくて自分が性同一性障害というのを隠していきたくないし、それは僕自身が自分のアイデンティティーを認めていないと、生まれてくる子どもに対してちゃんと真剣に向き合えないなというのがあるから、僕にとっては覚悟をもっている。協力し合って、しっかり支え合える社会にしていくのが、次は僕たち親の役割だと思う。」

2008年、女性から男性へ性別を変更した澤岻良心さんと、さおりさん夫婦。良心さんは、いつか子供を持ちたいと思っていましたが、当時日本では対応してもらえる場所がなかったため、アメリカで自らの卵子を採り、精子バンクを利用し受精卵にして凍結保存しました。

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2013年2月、結婚したさおりさんの子宮に、凍結保存していた受精卵を移植。しかし、2人の願いは叶いませんでした。しかし、2014年、今度は、さおりさんの卵子と第三者からの精子提供による人工授精が、実を結びます。

良心さん「血(の繋がり)も大事なんだけど、それ以上の関わり方もきっとできると思うので、そういう意味で血の繋がりを越えた家族になっていきたいなと思います。」

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良心さんは、性同一性障害に向き合う団体のリーダー的な存在。出産を2か月後に控えたこの日、同じように悩む人たちに、子供を持つ選択肢や、子供を持つことでどんな未来を築きたいのか語りました。

講演会の参加者「まずは自分から勉強してパートナーの方にこういう感じだったよっていうことで報告して一緒に考えていきたい」

講演を終えた良心さん、さおりさんの妊娠を喜ぶ半面、気がかりなこともありました。

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良心さん「わかんないよね。子供が成長して学校にいったときに何を言われて帰ってくるのかとか、公にしているから、自分にとっては普通にお父さんなのに、外の人からすると元女だったよって言われるかもしれない。どういう言われ方するかかわからないですよね。そういう不安はある」

そんな中迎えた、出産の時。

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さおりさん「一生懸命出ようって頑張っているんだって思うと、耐えきれるし、すぐ会えるて思っているから、だから頑張れたんだなと思います。」

この世に生まれた喜びを表現するように、元気に泣く赤ちゃん。りょうとさんたちは、心で感じること、たくさんの愛情を感じてほしいとの思いから、良心さんと同じ心の字に愛と書く(とあ)という名前をプレゼントしました。

良心さんの母・八重さん「りょうとにそっくりで不思議」

初孫の誕生を喜ぶ一方、世間の無理解にも晒されました。

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八重さん「自然に逆らうことに対しての批判。私たちのこと親身に考えているからこそそういう言葉も出るんじゃないかなと思って(いました)。これから先も覚悟の上だと思うし、でも、大切に愛して育てたらきっと大丈夫と思っています」

性同一性障害の夫婦が子どもを持ちたいと思うことは特別なことなのでしょうか?良心さんを知る当事者からは、子どもをもつことへの率直な思いが聞かれました。

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当事者団体代表 gid.jp 沖縄支部長「実際ごく普通の男女であっても、子供ができない体であったり、そういったことでAID選ばれるご夫婦もいっぱいいますので、それが特別なこととはあまり思っていないですね。」

そんな中、去年12月画期的な判決が出ました。良心さんのように、第三者からの精子提供で人工授精した夫婦の子どもが嫡出子として認められたことで、法律上の親子関係が認められるようになりました。

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良心さん「「血の繋がりをこえるために、頑張らなきゃいけないかなとちょっと思っていたけど、でも生まれてきてはじめて心愛を抱っこしたらそんなんじゃなくて、もうすでに家族だよって教えてくれたような気がしてすごく気が楽になりました。意識しすぎていたのは、もしかしたらこっち側の方かもしれない。」

いくつものハードルや、自身の葛藤を越えて自分の性と向き合っている澤岻さん一家なんですね。法律上でも、やっと家族になれましたが、これからも、様々な課題はあります。多様な家族の姿を理解し、応援することが求められています。