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那覇市の県立博物館・美術館で開かれている憲法9条をテーマにした作品展で、昭和天皇の写真を加工した作品が展示されなかったことが14日までにわかりました。

展示されなかったのは富山県出身の芸術家・大浦信行さんの作品です。作品は、「遠近を抱えて」という14点の版画で構成されていて、昭和天皇の写真やきのこ雲、骸骨などがコラージュされています。これらの作品は2008年、ニューヨークと東京の私立の美術館で展示されましたが、今回、沖縄では主催者の県立美術館や県教育委員会が「教育機関の一つである公立の美術館にこの作品を展示するのはふさわしくない」と判断。牧野博隆館長によりますと、作者の大浦さんと担当の学芸員にその意向を伝え、合意を得た上で展示から外したということです。

この企画展「アトミックサンシャインの中へ・イン沖縄」では、憲法9条の理想、そして今もアメリカ軍が駐留する沖縄の現実を様々なアーティストが作品で表現しています。

県立博物館・美術館によりますと、今回の大浦さんの作品については、1月に美術館から大浦さんの担当の学芸員に対して作品を展示物から除外するよう要請。そして2月末にこの作品を展示しないことで学芸員と合意しました。

取材に対し牧野館長は「作家の自由な表現は尊重するが、県の教育機関での展示には適切でないと感じた」と作品の感想を述べ、制作者側の同意を得た上で展示から外したことを強調しています。一方、県の教育委員会は、今回の教育委員会の行為は検閲に当たるのではとの記者の質問に対し「事前調整の段階で教育的観点から配慮をお願いした」と検閲を否定しています。

しかし、憲法学が専門の琉球大学法科大学院・高良鉄美教授は「美術館側と芸術家側との事前の話し合いの内容にもよる」とした上で「今回の美術館や県教育委員会の行為は、憲法で保障されている表現の自由の侵害にあたる可能性がある」と指摘しました。また「表現者が一番言いたかったこと、一番訴えたい作品というのが問題になった場合には、表現者の意図が全く外に出されない、あるいは表現の中で萎縮してしまう」とも述べました。

公の機関である県の美術館の責任者が直接、芸術家の表現を取捨選択することについては、政治的な考えが働いたのではと疑われても不思議ではありません。