特集です。1972年に沖縄が本土に復帰して、きょうで53年の節目になります。
復帰をするときに「本土並み」を求めた「基地の負担」。しかし、現在でも沖縄には、全国にあるアメリカ軍専用施設の7割が集中している状況です。
おとといも、アメリカ海兵隊のヘリコプターが物資の落す事故を起こすなど、県民は様々な影響を受けていました。
さらに、沖縄戦終結後からアメリカ統治下を経て現在に至るまで、暗い影を落としているのが軍関係者による犯罪です。

今回、防止策の一環として在日アメリカ軍が設置を表明したフォーラムが先週、初めて開かれました。
その効果を識者の目も踏まえて検証していきます。
塚崎記者「米軍キャンプ・フォスター前です。沖縄県のも車両が到着しました。これから日米のフォーラムに参加するものとみられます」
今月9日、アメリカ軍基地内で開かれたのは兵士の犯罪について対策を関係機関が話し合う「フォーラム」。去年6月、アメリカ兵による性的暴行事件が、県内で相次いで発覚して以降、対策として打ち出したもののひとつでした。

県・溜知事公室長「各機関が米軍の事件事故防止のためにできることを提案しあう場になったのは大きな意義があった」
林官房長官「フォーラム創設に至った」「在日米軍の綱紀粛正・再発防止の米側の真剣な姿勢を示す」「政府として歓迎する」
この日の会議で実際に議論となったのは、着任した軍関係者への研修の見直しや、先月実施された沖縄市での合同パトロールの他の地域への拡大などでした。
県・溜知事公室長「米軍人の意識をどんどん変えていく取り組みを地道に粘り強く取り組むことが重要なのかと考える」

会合の開催も「定期的」としていますが「年1回以上」とされており、次回の開催も未定だといいます。
前泊教授「またパフォーマンスが始まったのかという印象」「実効性があるという形は、パトロールまでやって見せたりしているが」「一連の米軍の行動はパフォーマンスに過ぎない」「本質的な解決にならないことをなぜ繰り返すのか」
一方、このように指摘するのは、基地問題の分析を続けてきた沖縄国際大学の前泊教授。
前泊教授が指摘するのは、アメリカの国防総省がまとめた軍内部での性暴力の発生件数です。2024会計年度では8195件と、2年連続で減少はしたものの、高止まりの傾向にあります。

先月発覚した、3月に起きた海兵隊員の日本人女性への性的暴行も発生場所は基地内のトイレでした。
前泊教授は、これまでの調査も踏まえて、この数字も氷山の一角だと指摘します。
前泊教授「沖縄からすれば、毎年9千件起きている性犯罪がフェンスの外に、こぼれ出ているのかと」「性犯罪の被害にあった女性兵士たちで訴えているのは4分の1」「あとは昇進できないとか、軍にいられなくなると脅されていっていない」「この数字が実際に議論されているのか」「フェンスの外側にこの犯罪が漏れていることに対してどうなのか」「沖縄側にできることは非常にストレートに言えば」「フェンスの外に出すなということ」「フェンスの外側にどのくらい米兵が暮らしているかも、いまは掌握できていない」

前泊教授が研究を続ける沖縄国際大学は、宜野湾市にあり、普天間基地がすぐそばにあります。
2004年8月には、アメリカ海兵隊のCH53大型輸送ヘリが墜落、隣接する基地の危険性の現実を改めて突きつけました。
そして、今回発覚したのは同じく普天間所属機・UH1からの落下事故です。
橋本総理(当時)「普天間飛行場は今後5年ないし、7年以内に、これから申し上げるような措置が取られた後に全面返還されることになります」

1996年。当時の橋本総理が表明した普天間基地の返還。
移設先とされた辺野古新基地も、政治的な妥協や対立が何度も繰り返される中で完成は遠のき続けています。
アメリカ軍の幹部からは、本音も漏れるようになっていると前泊教授は語ります。
前泊教授「この基地は本当に役に立つのかということにも」「米軍が今時ミサイル戦争の時代にミサイル一発で使えなくなる基地を」「今頃作っているのかと」「あと何年かかるのかと。あと13年と。馬鹿かお前たちは」「そんな議論が行われたようだ」「時代の流れの中で本来の目的も失っている基地建設が続いている」「しかもそれは完成するのはいつかわからない」「今時、こんな時代になぜ新しい平場の基地を作っているのかという話」「こうした変化が起こっていることに対して、日米双方が本当に腹を割って、本音で安全保障の議論をしているのか疑問」

屋良朝苗元知事「核も基地もない平和の島として回復していきたい」「合言葉、願い、念願になっていた」
1972年の本土復帰当時の屋良朝苗元知事の肉声です。復帰の前後にはベトナム戦争への出撃拠点とされた沖縄。その戦争が1975年に終結し、ことしで半世紀が経ちました。その後、冷戦構造が崩壊しても沖縄の基地は「対テロ戦争」や「対中国」の拠点として名目をつけては維持されてきました。
時代が流れても変わることのない現状に、改めて目を向ける必要もあります。
2016年、軍属の男が暴行目的で女性を襲い殺害した事件が発生した後、日本政府は「沖縄・地域安全パトロール隊」を結成し、現在でも年間4億2000万円あまりの予算をかけ100台が稼働していますが、実効性に疑問符がつきます。
アメリカ軍が設置した「フォーラム」について、前泊先生が指摘されたように「ただのパフォーマンス」ではなく、県民が実効性を感じられるものにしてほしいと思います。