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先週、県内の多くの中学校で卒業式が執り行われました。晴れの日に名護市の中学校では、子どもたちの門出を祝いました。大人たちが、再現しようとしていたこととは?

厳かな雰囲気で執り行われた、名護市の屋部(やぶ)中学校の卒業式。ことしは、133人がこの日を迎えました。式典が進むなか、会場の外では懸命に巻き割りをする男性の姿があり、その近くにある袋には、大量の「松の青葉」が入っています。また、別の場所では同じ服装をした女性たちの姿が。

1冊の本が紡ぐ絆 名護・屋部中学校の卒業生を包んだ「特別な風習」とは

「これから厳しい高校生活にいろいろだと思いますけど、屋部での思い出を大事に巣立っていただきたいです」

この地域で「ある風習」を再現するために準備されたのだそうです。

元教師 比嘉ゆり子さん「渡波屋の歴史の中に、この渡波屋(とわや)から出稼ぎに行く我が子を見送った。中学生がこの地域学習で学んでいるので、それをじゃあ再現したらどうかということで」

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その根拠となっているのが、福岡県出身の記録作家、上野英信(うえの・えいしん)が残した「眉屋私記」(まゆやしき)です。

戦前、炭鉱移民でメキシコに渡った山入端萬栄(やまのは・まんえい)の家族の物語を通して、沖縄の貧困や差別を乗り越えた人々の姿を描いた作品。その中に、屋部地区のエピソードが触れられており、地域にとって貴重な記録文学だといいます。

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比嘉ゆり子さん「やっぱりその人たちの思いというのは、これから若い人たちがこの真屋敷を受け継いでいかなければいけない、若い人たちに伝えたいと」

卒業式本番の一週間前。地区を一望できる拝所・渡波屋(とわや)には、PTA会長をはじめ多くの保護者が集まり、本番当日に向けて準備が進められていました。メインは、狼煙をあげることです。

松川嘉樹さん「火起こしですね。まず、基本的にこれで火を安定させて燃焼してきたら松の葉っぱを入れて煙を出していくという準備の段階です。子どもたちの未来に向かって羽ばたいてほしいなっていう気持ちを込めて、有志や地域の方も含めて協力して準備しています」

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PTA会長 岸本司さん「課題は音響と風の部分というところ、一応今日分かったので、それを来週に向けて改善しながら頑張りたいと思います」

卒業式の終わりに近づいた頃、渡波屋(とわや)にいた狼煙をあげるチームと、パーランクーで祝うチームが配置に付き、準備完了。薪ストーブに火入れをしていよいよ狼煙をあげます。

しばらくすると、パーランクが鳴り始め、その奥で煙が見えてきました。その後、狼煙の勢いが増した頃に、式典を終えた卒業生が通りかかります。そして、保護者は卒業生に向かい、渡波屋(とわや)から思いを伝えます。

1冊の本が紡ぐ絆 名護・屋部中学校の卒業生を包んだ「特別な風習」とは

保護者「3年A組、卒業おめでとう。お父さんもお母さんも先生方も、地域のみんなもずっと愛しているよ!頑張れ!!」

保護者「3年C組、卒業おめでとう。次の舞台でも全力で頑張れ!応援してるぞ」

保護者「みんな1人1人が主役です。愛と希望と夢をもって突き進んでいってね」

そして、卒業生からも親たちにメッセージを送ります。

1冊の本が紡ぐ絆 名護・屋部中学校の卒業生を包んだ「特別な風習」とは

卒業生「夢に向かって頑張るぞ!おぉ!!」

多くの保護者や教員、そして地域の人に見守られながら133人は学び舎を巣立ちました。

卒業生「夢はスペインでサッカー選手になって、バロンドールを取れる選手になりたいです」

卒業生「(この演出は)特別感があるし、歴史って感じでめっちゃ好きです。育ててくれてありがとう!愛してるよ!」

卒業生「少し寂しいですけど、また大人になったら帰りたいなって思っています」

1冊の本が紡ぐ絆 名護・屋部中学校の卒業生を包んだ「特別な風習」とは

卒業生「屋部中、旅立ってしまうのかなって悲しい気持ちもありましたが、新たな人生の一歩って捉えて、頑張っていきたいと思います。ちっちゃい頃から、こんな私を育ててくれてマジでありがとうございました」

PTA会長 岸本司さん「地域の人たちと保護者一体となって、屋部の風習を再現して子どもたちを見送るということができて、120点満点でとてもうれしいです。この風習というのを、やはり子どもたちにも分かっていただいて、これからも続けていきたいと思います」

1冊の本がつなぐ、地域と卒業生たちの絆。多くの感謝を伝えた子どもたちは、新たなステージに向かいます。

1冊の本が紡ぐ絆 名護・屋部中学校の卒業生を包んだ「特別な風習」とは

キャスター「今回取材した當山記者です」

當山記者「VTRでもありましたが、眉屋私記は福岡県出身の記録作家、上野英信さんが炭鉱移民としてメキシコに渡った山入端萬栄さん一家の生涯や、屋部の歴史を記録した作品です。この一部に渡波屋から出稼ぎに行く我が子を見送ったという記録が残されていることから、保護者から卒業式の花道で取り入れてみたいと意見があがったということです」

キャスター「実際に参加されたということでいかがでしたか?」

當山記者「そうですね。実際に参加させていただきましたが、送り出した人たちからは『時代は変わっても送り出す気持ちは変わらない。子どもたちを見送ったけれど、また帰ってきてもいいよという想いも伝えたい』という話を聞くことができて、地域の歴史を大切にしたいという思いと、次の世代に繋げていきたいという思いが感じられる素敵な卒業式でした」