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県内企業や県経済の最新動向を深堀りするQビズです。新型コロナによって、航空関連産業は大きな打撃を受けています。そうした中、業績を堅調に伸ばし、黒字に転換した企業があります。キーワードは、「国内企業の方針転換」!コロナ禍でも元気な秘密を探りました。

那覇空港内にあるMROジャパン。航空機の整備を専門としている企業です。その格納庫では、様々な航空会社の機体の整備や修理がおこなわれています。新型コロナによって、航空関連産業が大きな打撃を受ける中。

MROジャパン・中司直己社長「業績としては良くなってきてる」

経営は昨年度から黒字に転換!アジアの拠点をめざし、成長を続ける沖縄の航空機整備ビジネス。その最前線に迫ります。

航空機整備ビジネス コロナ禍でも元気な秘密

国内初の航空機整備専門の企業「MROジャパン」。MROとは、「メンテナンス」「リペア」「オーバーホール」の頭文字をとったもので、航空機の整備や修理事業のことをいいます。格納庫は、敷地面積がおよそ3万平方メートルと国内最大規模。大型機1機と小型機3機を同時に整備することができます。

様々な規格の航空機に対応するため、必要な工具を保管する工具室は、まるでホームセンターのよう!およそ1万点の工具がバーコードで管理されているんです。超音波を使い、機体の見えない傷の検査をしていたのは、入社6年目の志喜屋匠吾さんです。

志喜屋匠吾さん「私達が入社したときは、本当にドックに1機2機、機体が入っていて多いぐらいだったんですけれども、今現在、ドックのすべてが機体で埋まるような状況になってまして。いろんな機体を自分の手で整備できる喜びがあります」

2015年、全日空が出資して設立したMROジャパン。沖縄での事業スタートを目指し、大阪で人材育成などの準備を行ってきました。こちらは、入社当時の志喜屋さん。整備に携われる喜びに溢れていました。

志喜屋匠吾さん「今まで見ているだけだった航空機を自分の手で整備するその喜びが一番の魅力だと思います」

航空機整備ビジネス コロナ禍でも元気な秘密

そして、おととし、那覇空港で整備事業がスタート。整備は大きく分けて、フライトの間に行うライン整備と、数年毎に行う大規模なドック整備があります。MROジャパンが主に担当するのはドック整備。短いものでは数日、長いと1か月に及びます。

これまでこうした整備は、機体を所有する航空会社が行なっていました。しかし、世界的に航空需要が高まり、自社に整備部門をもたない格安航空会社がアジアを中心に増加したことで、整備専門の会社のニーズが高まったのです。

新型コロナによって、航空関連産業は大きな打撃を受けたにも関わらず、MROジャパンは、2020年度の決算では、目標を1年前倒しして黒字化を達成。今年度も、堅調に売り上げを伸ばしています。元気の秘密は何なのでしょうか。

航空機整備ビジネス コロナ禍でも元気な秘密

MROジャパン・中司直己社長「コロナ禍で行き来ができないので、海外に委託できない作業がMROジャパンの方に来まして、その関係もありまして、生産量を減った分をカバーしたっていうのが大きな要因です」

これまで、国内の航空会社は、コストの安い中国などのMRO企業に委託することがほとんどでした。機体を整備に出す場合は、自社の検査員を現地に派遣しなければならないため、コロナ禍の今、国内の航空会社がMROジャパンに委託するケースが増えてきています。

依頼の内容や量が変化したにもかかわらず、柔軟に対応できた背景には、生産性の効率化や人材育成に積極的に取り組んできたことがあります。

そのひとつが、マニュアルや手順書などを作る専門チームです。

航空機整備ビジネス コロナ禍でも元気な秘密

生産業務部・内倉宏人さん「マニュアルは一種類じゃなくてですね、例えば整備作業をやるのに必要な手順が書いてあるマニュアルですとか、例えばあとはその部品を交換する部品番号、がどの品番を使うかっていうのを調べるためのマニュアルですとか」

マニュアルは、機体や航空会社ごとに異なるため、工程ごとに、どのマニュアルを参照するか、カードとよばれる手順書を作成します。多いときで400~500枚のカードが必要になることも。また、朝の日課では。

整備士「ブルーマットの上に乗った時に、タキロンが床の上で滑ってしまい、転びそうになった」「ひたひたになっているのが全然見えなくて、暗かったので、それで滑りかけた」

整備士たちが確認しているのは、作業中におきたヒヤリハットの事例。作業の安全確保と効率化につなげるのが狙いです。

MROジャパン・中司直己社長「海外のやっぱり人件費は非常に低いので、全体の競争力の大きな要因になっているのは確かに事実なんですけれども、高い品質と効率化でカバーをして、できるだけ価格を正面で下げて、その両面で勝負をしていけばですね、これあの十分に競争力が高められるんじゃないかなというふうに思っています」

沖縄で整備事業をスタートしてから3年。現在、社員はおよそ350人。そのうち150人が県出身者です。日本の航空機整備技術を結集した新しい産業は、沖縄に根ざした企業へと成長しています。

航空機整備ビジネス コロナ禍でも元気な秘密

アジアにおける航空機整備需要は、今後10年間で2倍へ拡大が見込まれています。県は、2018年11月の開設以来、MROジャパンが堅調に業績を伸ばしていることに対し、「今後の事業に大いに期待している」としています。

また県は、航空機整備から派生して、航空機に搭載する装備品やエンジン等の整備、部品の保管や配送、整備に関するコンサルティング、研究開発、航空機関連産業に従事する人材育成など、様々な需要があると見込まれています。

今は、コロナ禍で、国内の航空会社の需要が支えている側面もあり、コロナ回復後にMRO先進国のシンガポール、マレーシアなど人件費の安いアジアのMRO企業とどう勝負するかカギとなりそうです。