築70年の木造商店。最後の姿を追います。町民のコンビニとして親しまれてきた本部町の「仲宗根ストアー」。老朽化による建て替えで、お引越しすることになりました。最後の営業日に密着すると、長年愛され続けてきた理由が見えてきました。

老朽化のため、解体されることになったこの建物、数日前まで、日用品であふれる、まちの商店でした。

買い物客「さびしいよね。昔の形がなくなるからね。」「町民のコンビニストアみたいな感じですから。」

店主「ありがとうございましたですよね。それ以外はもうないですね。」

本部の名物商店 引っ越し前の最後の1日

戦後まもなく建てられたこの場所で、人びとは、何を買い求めてきたのだろう。仲宗根ストアー、引っ越し前の最後の1日をカメラで追いました。

あたりは真っ暗な午前4時半。開店の準備にやってきたのは、2代目店主の仲宗根純子さん。嫁ぎ先の家業を手伝うようになって37年。店の引っ越しを控え感慨に浸る、というわけではないそう。

仲宗根ストアー・仲宗根純子さん「この建物の、いつ崩れるかとか、これが心配で。子どもたちも言うんですけど、早く新しい建物にしたいって。」

倒壊寸前の小さな商店、早朝から、人の出入りが続きます。こちらの親子が届けたのは、お弁当。地元の業者・数か所から弁当や総菜をバリエーション豊富に、1日100食仕入れるのだそうです。

箱いっぱいの揚げ物を抱えた女性。総菜の製造業者です。すべてを陳列したあと、店の奥へ向かいました。

総菜業者「(Q.お買い物もされるんですね?)頼まれものですね。近所の方から。」

買い物客「氷あります?」

氷を買いに来た女性。お孫さんの水筒に入れてあげるんだそう。そして、自分用には、ホットコーヒー。続いての男性も、コーヒー。近所のコンビニが閉店したため、客のリクエストを受け、コーヒーマシーンを置きました。

本部の名物商店 引っ越し前の最後の1日

あさ6時半。混み合ってきました。お客さんを待たせないよう、レジは2人体制。手伝っているのは、仲宗根さんのこどもたち。頼もしい3代目です。朝の弁当ラッシュが終わりました。つづいては、荷物の集荷時間にあわせて、宅急便の配送ラッシュ。

配達を依頼した人「東京の息子に、缶詰とか。」

ずっしりとした荷物の重みに、遠くの家族を思う気持ちが詰まっています。

築70年、木造2階建て瓦屋の仲宗根ストアー。戦後、本部町の有力者が、十・十空襲で焼け野原になったふるさとに、貸店舗として建てたのが始まりです。

持ち主が材木商をしていたこともあって、柱は、建物の1~2階を貫く一本柱。薬局やそば屋として使われたのち、半世紀前に、仲宗根ストアーのものとなりました。

本部の名物商店 引っ越し前の最後の1日

しかし、2~3年前の台風で、店の壁面を覆っていたブーゲンビレアが倒れたことをうけて、仲宗根さんは、建て替えを決めました。

鮮やかな青のジャケットが素敵なおばあさん。ゆっくりとした足取りで、店内の品物を選んでいました。本部町の山間の集落に暮らしています。

仲宗根育さん「きょうどうする?タクシー?タクシー呼ぶ?」

移動手段はタクシー。2週間に1回ほどのペースで、お店に通っています。

タクシーを呼ぶ声「仲宗根ストアーまでお願いしまーす」

おばあさん「壊される?」仲宗根育さん「壊される~」おばあさん「なんで、つくるまで、どこに行くの?」仲宗根育さん「別のところでやるから、お店自体は閉まらないよ。」

仲宗根育さん「もう、とってもありがたいですよね、やっぱり。遠くから、わざわざ遠くから、こんなやって買いにきて、顔みせにきてくれるので、うれしいですね。」

午後3時をまわると、学校帰りの子どもたちでにぎやかに。いつも一緒という3人組。

小学生「お腹空いたときとか、暑いときとかに、クーラーに涼みにくる。(Q.この建物をみて、どう思う?)えっと、古いけど、あのー、なんていうんだろう、おいしいお店。」

こどもたちの一番人気は?

女の子「シャーベットひとつください!」康智さん「70円ですね。」

レモン味のシャーベット。

本部の名物商店 引っ越し前の最後の1日

母親「駄菓子をよく買いに来てました。お母さんと一緒に。私も小さいときから通っているお店なので、ずっとこのままなので、もうさみしいですね、変わるのは。」娘「このままでいいのにね。」

夕方、客足が落ち着くと、仲宗根さんは、冷蔵庫の掃除を始めました。

仲宗根純子さん「(Q.この建物にどんな言葉をかけたい?)子どもたちも、学校卒業するまでお店で、子どもたちも朝から小さい時から手伝ってもらって、運動会と行事がかち合ったときは、制服つけたまま。ミルクあげたりおしめ替えたり。レジのそばにベビーベッド置いていたんですよ。子どもこっちで寝かして、泣いたらお客さんが抱っこしてあやしたり、お客さんたちにも、こどもたちお世話になりましたね。」

浮かんでくるのは、子どもと過ごした思い出ばかり。

本部の名物商店 引っ越し前の最後の1日

仲宗根純子さん「本音を言うと、やっぱり壊したくはないですよね。でもどうしても老朽化でやっぱり壊さないといけないのかな、というのもある。」

仲宗根家の記憶が詰まった建物。3代目を継ぐ子どもたちと、引っ越しの準備を進めます。

さて、現在の仲宗根ストアーは、元の店舗のすぐ隣に仮店舗を構えていました。2週間前に移転したとは思いがたい、老舗の空気感です。仮の店舗でも、なぜか変わらぬ仲宗根ストアー。建て替え工事が済んだあと、この場所で、また懐かしい景色に出会えそうです。