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国際自然保護連合「IUCN」による世界自然遺産「登録延期」の勧告が判明した今月4日。

5月4日環境省会見「IUCNが誤解していたり、理解が得られていない部分があれば、そこについてはきちっと修正を求めたり」

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

“想定外”の「登録延期」勧告に戸惑いを見せた環境省ですが、4段階の評価の下から2番目という厳しい評価を受け止め、現在は推薦を一旦取り下げることも検討しています。

厳しい勧告をどう受け止めるべきなのか。先週、記者を集めて東京で開かれた勉強会。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

吉田教授「この評価というのは前向きに受け止めて、修正すべきは修正したうえで再推薦が望ましいんじゃないかと思っている」

筑波大学大学院で世界遺産について研究する吉田正人教授は、奄美・沖縄4島の推薦地が国際的な評価を得られなかった理由を次のように語りました。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

吉田教授「登録基準の”生態系”と”生物多様性”、この2つで推薦して、IUCNの評価としては、9(生態系)については「登録資産が分断されている、そのためにですね、生態学的な持続可能性が疑問がある」ということで、この基準には合致しないと」

世界自然遺産への推薦は、どのように評価されていくのか。大きな基準は4つあります。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

環境省は、この4つのうち今回の推薦地域は「生態系の進化・発展の顕著な見本」「絶滅危惧種など生物多様性の保全に重要な自然」という基準にあてはまるとしていました。

しかし吉田教授によると、IUCNは、特にヤンバルの推薦地で11か所にわたり登録地域が分断されている点をマイナス評価した、と指摘しました。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

吉田教授「東海岸側のところにですね、4つくらい分断されてますし、北にもう1つ、それから西側の汐屋湾のほうに向かっては2つ。これが永続的に残るということを考えると、今生息しているこの小さな森だけ守ればいいというのではなくて、気候変動などもありますから、もうちょっと広めに将来の生息適地が変わっても守れるような、地域の設定をする必要がある」

やんばるの推薦地域が11か所に分断されてしまったのには理由があります。

おととし12月に返還されたばかりの跡地は、汚染の調査が終わったばかりで、やんばる国立公園への編入も今年7月の予定。推薦した時点では世界自然遺産への推薦地に含めることができなかったのです。さらに違った側面からも問題が指摘されています。

吉田教授「緩衝地域というのは緩衝帯ですので、ちゃんと囲むように緩衝しないといけないけど、これは西側にしかついていないですね」

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

世界遺産地域と一般の地域を隔てる緩衝地帯。緩衝地帯は世界遺産地域を包むように存在することが理想ですが、やんばる地域では東側にはほとんど存在していません。

吉田教授「これでは緩衝地帯の意味をなしていないですし、日本自然保護協会でもこの推薦の仕方はまずいですよということは、推薦された時から申し上げていました」

不十分な緩衝地帯の設定には、返還されていない北部訓練場も影響しています。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

IUCNは、返還された北部訓練場の跡地を推薦地域に含めることだけでなく、返還されていない北部訓練場も世界遺産推薦地域の包括的な管理計画に加えるように、と求めています。

日本自然保護協会は、環境省に対し、こうした問題点を去年の3月時点で指摘していました。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は

日本の管理権が及ばないアメリカ軍基地内で、自然の管理をどう担保するのか。汚染が次々見つかった返還跡地の原状回復は徹底できるのか。

今回世界自然遺産への推薦を取り下げるとしても再び推薦するまでには大きな問題が立ちはだかっています。

IUCN 世界自然遺産 登録延期勧告 その理由は