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学校に関わる様々な話題をお伝えする学校ウォーカー。さて、いわゆる全国学力テストで、沖縄が2年連続全国最下位となったことをうけ先月から始まったのが全国トップの秋田県との教員の相互派遣事業です。秋田の先生が県内の小学校に配属されて2か月、現場ではどのような変化が起きているのでしょうか?実近記者が取材しました。

小玉先生「ピンポーン、どっちかにあって、どっちかにない」

那覇市の松川小学校5年3組。算数の授業です。担任の小玉教諭は、先月、秋田県からやってきました。

小玉先生「わくわくしてくるな」「どうしよう〜て、してやったりだな」

教員の相互派遣事業は、おととし始まった全国学力テストで、2年連続最下位だった沖縄県が2年連続トップだった秋田県の指導方法を学ぼうとスタートしました。秋田県から小玉教諭ら2人が県内の小中学校に派遣され、県内からも2人が秋田県に派遣されています。黒板の前に子供を立たせ、教室の後ろに立つ小玉教諭。授業中は教室内を歩き回り、ほとんど黒板の前には立ちません。

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次の授業は道徳です。小玉先生「生きています15歳 500グラムで生まれた全盲の女の子」

この日のテーマは命。小玉先生「じゃあちょっとグループで机そのままでいいから、いすだけちょっとやって」教科書を読み終えると、課題を与えて、グループで話し合わせます。

小玉先生「今回(グループ内の)1番の人から発表してもらいたいと思います」

グループごとの発表です。授業では何度も課題を与え、毎回、グループ内の違う子供が発表します。結果、ほとんどの子供が意見を述べることになります。一見学力とは、あまり関係がないようですが、小玉教諭は、2ヶ月を経て県内の教育現場には、今こうした改革が必要だと感じています。

小玉先生「今一番感じているのは、子供が自分の思いを進んで話すことができないのかなと、もっと話してほしい、話す力をつけさせたい」 

教室の机の並べ方も、子どもたちが話し合いやすいよう、工夫されています。

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小玉先生 「自分たちが考えたことが、やはり、形になっていったり、広がっていったりすることで、子供たちの意欲が高まったり、学習に向かう姿勢が大きく変わってくるんじゃないかなということを思っています」「教師が与える力ではなくて、子供たち自身の学び合いが子どもたちを育てていくのかなあと」「なんとか意欲と学力をいま一緒に育てていけないかなというところを感じています」

「なんとかかんとか・・・ああ、いいね、うん、いい、いい、周りの人の支えもあるんだ、うんうん、」「やっぱり子供というのは、自分をアピールしたいし、自分を知ってもらいたいし、そういう子どもたちだと思うんですけど、それが今まで、十分に出し切れてなかったのかなあと」

自分の机も、子供たちと常に関われるよう教室の後ろに配置しています。小玉教諭は授業中、よく一眼レフカメラを持ち歩きます。

小玉先生「子供たちの表情見たり、悩んでいる姿だったり、それから鉛筆を持っている子どもの目だったり」写真に残すことで、子どもたちの一瞬一瞬を、評価してあげられると話します。写真は、毎日発行される、学級通信にも掲載されます。

この学級通信も、小玉教諭のこだわりに満ちています。 同時に、家庭にはメッセージカードが配られ、保護者からは様々な声が返ってきます。このような家庭と学校の双方向の交流は、この2ヶ月で驚くほど進んだといいます。こちらは、子供たちの宿題。毎日、課題が与えられますが、そこにも、親が様々なメッセージを書き込むようになりました。

こうした家庭の力は、学力を伸ばすために欠かせないものだと小玉教諭は考えています。

子供達「楽しいです」「分かりやすいし、勉強がはかどる」「番号決めてやったら、全員にあたるから、発表しない人もあたって、積極的になれるところがいいと思います」「発表すると自分の考えを発揮できて、心の中がすっきりするから」「(するようになった?)(なんで?)おもしろいから、おもしろくなったから」

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同僚の教師「子どもが楽しいのが一番。子供の笑顔をどんどん引き出すっていうのを小玉先生とても重視していらっしゃって」

校長先生「小玉先生のお話を伺いながら、ああ、ここは変えなくちゃいけないと思われる部分は思い切って変えていってます。それはもう大きな刺激であり、影響力ですね」

県教育委員会「秋田県の優れた素晴らしい実践があるでしょうから、そういったことを県全体に波及していってもらいたいと」

小玉先生「私は、(沖縄の)子供たちはすごいエネルギーを持ってますし、能力的には非常に高いものを持っていると感じています。その力を、私はまず十分に引き出してあげたい」

小玉教諭の派遣期間は1年間。県では、事業を3年間継続する方針で、今後の波及効果が注目されます。「学力テストの点数を上げるため」というとちょっと…それだけを目的にしていいのかな?と思いますが、子どもたちの本来の可能性を伸ばすために国内の先進事例を参考にするという視点で見ると教師たちにとっても、子供たちにとっても得るものは大きいと言えそうです。