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「私の前に見えるのが、およそ180軒の住宅が立ち並ぶ宜野湾市のキャンプ瑞慶覧です。この場所は本来であれば、去年3月までに日本に返還される予定でしたが、ここにあるすべての住宅で、肺がんの原因になる可能性があるアスベストが見つかったのです。」

宜野湾市の住宅地から20メートルも離れていないアメリカ軍の住宅で、空調ダクトの断熱材として使われていたアスベスト。

宜野湾市民「率直に心配です。肺気腫(肺胞が破壊される疾患)等が心配です」「私の年齢になってくると三大疾患のうちの一つですから肺がんが」「気にはなりますね 大変ね。」いつもこのあたりを配達しているのですか?郵便配達の職員「だいたいそうですね」「具体的に人体にどのような形であらわれるかということが早めにこちらに教えてもらえればね」

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県は、キャンプ瑞慶覧の周辺で大気調査を行い、その結果、一般の大気に含まれるアスベストの基準値の範囲内だったとし、人体への影響はないと結論付けました。しかし、宜野湾市の伊波市長はアスベストを含んだ廃棄物が、日本の大気汚染防止法を無視して読谷村やうるま市に運び出されていたことに強い懸念を示します。

伊波宜野湾市長「廃プラスチックとして届けられていた経過もあるということで、その段階で何でアスベストとして処理されなかったのかという事が極めて重大な問題であると」

このキャンプ瑞慶覧の地主の9割が土地の返還に反対し、基地の継続使用を要望した背景にはこうした基地内の環境汚染や跡地利用への不安があります。土地の返還後に、廃油が入ったドラム缶やロケット弾が地中から次々に発見され、跡地利用が遅れた北谷町のキャンプ桑江。アメリカ軍がどれだけ環境を汚染しようと、土地の返還時にその原状回復義務は負わないことを定めた日米地位協定。その問題点に迫ります。

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今回のアスベストの処理方法や北谷の例を見ただけでもアメリカ軍がいかに環境汚染に無頓着であるかが分かりますが、現在県が基地の立ち入り調査をするためには地位協定上、アメリカ軍の許可が必要で、今回の件では立ち入り要請からその許可が出るまで実に2週間以上もかかりました。

そして先週金曜日にようやく実現した調査では県の職員による写真撮影さえ許さず、地元の宜野湾市は調査に参加も出来ませんでした。アメリカ軍の特権的な立場を環境面でも認めている日米地位協定。その改正の可能性について、アメリカ政府の外交政策の担当者や環境問題の専門家に聞きました。

軍関係者の事件事故の防止や日米地位協定の改定をアメリカ政府に直接要請するために訪米した仲井真知事。

仲井真知事「地位協定の改定については、環境問題の解決について非常に関心を持っておられるという印象を受けた」

県基地対策課 又吉進課長「環境関連の問題があった時に、速やかに国内法に基づいて日本側が対処できるような仕組みを作って頂きたいと要請した」

環境面での対応の改善に手ごたえを感じたと語る仲井真知事。オバマ大統領の外交政策の顧問を務めるシーラ、スミス氏もワシントンでQABの取材に応じ、環境問題への取り組みを優先課題にするオバマ大統領が、地位協定の改定に柔軟な姿勢を示す可能性はあると語りました。

シーラ、スミス氏「私は日本政府の交渉次第では、改定は可能だと思います」「実際、韓国では粘り強い交渉の結果、韓国の環境法令を基地内にも適用することを実現しています」

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91年と2001年の2度の改定を経て、基地内で環境汚染が起きた場合には、自治体の立ち入りと共同調査、そしてアメリカ軍の環境浄化義務を定めた韓米地位協定。これに対し、日米地位協定は1960年の制定以来一度も改定されていません。

沖縄大学 桜井学長「日米地位協定は日本の主権は全く無いに等しい」

環境学を専門とする沖縄大学の桜井学長は、安全保障を理由にアメリカ軍に様々な特権を与える日米地位協定は民主主義を否定していると指摘します。

沖縄大学 桜井学長「(米軍基地は)国防上必要だと。国防は国の専権事項だと外交も国の専権事項だと言って国が権限を握り、下々は黙れということになっている、これは民主主義ではない」

そして、沖縄の基地の環境汚染に歯止めをかけるため立ち入り調査を要請する権利などを規定した県の生活環境保全条例をうまく活かすべきだと訴えます。

沖縄大学 桜井学長「最終的なバリアとしては日米地位協定があって(立ち入りを)認めるか認めないかは米軍次第だが今までは申し入れることさえ駄目だった そんな馬鹿なと」「この条例は繰り返し使っていく必要がある。我々はこの条例に基づいて申し入れると」「米軍がNOと言ったらNOを県民に伝えるのが大事」

伊波宜野湾市長「国として米側に安全基準を守らせる姿勢を出していくことが重要」「国の怠慢が住民への被害をもたらしていると思いますので」

ことし6月以降に渉外知事会の一員として再び訪米し、日米地位協定の改正を最大の要求項目にしてアメリカ政府に直談判する予定の仲井真知事。県民を基地の公害から守るためにも、具体的な成果が期待されます。 

きょうはサンフランシスコ講和条約が結ばれ沖縄が日本国から切り離された「屈辱の日」。それから57年 半世紀以上過ぎても日本が主権を回復していないことを思い知らされますね。

様々な不平等の根拠になっている地位協定ですがせめて環境の基準くらいは同じ空気を吸い 同じ土地の上で暮らすものとして、その国の基準に合わせて対応するのが当然ではないでしょうか。