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美ら島の提案です。私たちは日々の暮らしで知らず知らずのうちに環境を汚染していることがあります。たとえば雨の日に道路の雨水を排水する、雨水溝(うすいこう)。街を通り、海に流れ込むこの雨水溝を通して、海と環境を子どもたちと一緒に考えるユニークな取り組みが、宮古島市で行われました。

街中の通りのそばにある、雨水溝。セメントで作られたものやスチールでできた蓋を通って雨水を集めて流すための溝ですが、同時に道路の吸殻や小さなゴミが流れ込みます。しかも生活排水が流されているところもあり、汚れた水はそのまま海に流れていくのです。

宮古島総合博物館で毎年開かれている「こども博物館講座」。小学生を対象に宮古島市の自然や文化などについて学んでいます。今回のテーマは「宮古の水環境と生き物」。カニ・魚など水の生き物たちや、サンゴ礁を観察しながら宮古の環境問題について考えてきました。

今回の講師をつとめる、藤田義久さん。講座最終回のこの日、宮古の環境を守るために何ができるかを話しました。藤田さんが取り上げたのが、雨水溝です。

藤田さん「これ、よーく見るとゴミやチリがたくさんあります。台風のときとか覗くと、こんな感じでチリが波に乗って流れてく」

藤田さんは、水生生物の研究の傍ら、NPOとして海をまもるプロジェクトも展開しています。プロジェクトは「この先、海です」。雨水溝の役目と、それが海を汚している実態を理解するとともに、それを防ぐための取り組みを展開しています。

まずは雨水溝はどのようなものか、子どもたちと市内をまわります。車内では、宮古島市の雨水溝の場所や作りを博物館職員から聞きました。

最初に子どもたちが訪れたのは、市内を流れる雨水溝。心無い人が投げ込む、空き缶や大小のゴミが浮かびそして家庭などから流れ込む生活排水が川を汚し、異臭をはなっている様子を、子供たちはその目で確かめます。

藤田さん「雨水だけを流すところなんだけど、こうやって家庭から出てくる水がみんなここに繋がっちゃってる」「こういうところが、ずっと(雨水溝に)つながってる」

本来、雨水だけを流す目的の雨水溝。しかし現実にはゴミを捨てる人も多く、何気なく道端に捨てたタバコの吸い殻などの小さなゴミも、雨水と一緒に流れ込んでいます。

子どもたち「おー、きたない!」

街中をとおり、海に近くなると水はさらに汚れてきます。ここは平良港に近い、雨水溝の最終地点。この汚れた水がそのまま排水口から海に流れ込む仕組みを、多くの子供たちが初めて知りました。

子どもたち「Q汚い川がそのまま海に流れ込むとこも見たでしょ、排水口。ああいう風になってるって知ってた?Aはじめて知った」「無駄に水を流したり、ポイ捨てしないようにしたいと思った」

藤田さん「自分の家の前、足もとから海に繋がってるということをまず知ってもらいたかった、海は遠いところの遠い場所でなくすぐ自分の目の前、家の外から繋がってる」

海を守ることの大切さは分かっていても、自分たちの暮らしや何気ない行動が海を汚していることがある。藤田さんはこの事実を知ってもらったうえで、子供たちの、そして人々の意識を変える行動を実践します。

藤田さん「ここに繋がってる小さな溝とかに、今からペイントをしに行きます。わかったかな、この溝が全部ずっと海に通じてるということ」

藤田さんが進めるプロジェクト「この先、海です」。道にゴミを捨てないよう、雨水溝にゴミを流さないようペイントやステッカーで呼びかけるものです。マンタやジンベイザメなど、生き物の鮮やかなイラストとシンプルなメッセージが、目を引きます。そして何より子どもたちや地域にとって、楽しいこと。これがポイントです。

藤田さん「自分でなにか海のためにできることを探してもらいたくてひとつの考え方として今回やってもらってます」

「ほら、カニあるよ一枚。やどかりはー?」「早いもん勝ち早いもん勝ち。マンタ、ヤシガニ。先生カニの研究してんだよ、カニとってよ! やどかり」

自分の好みの生き物の型紙を選び、作業はスタートです。博物館講座で海に生きる生き物たちを観察し、その海を無意識に人間が汚していることも知った子どもたち。自分たちにできることは何かを考えながら、一つ一つ丁寧に、ペイントしていきます。道端のゴミを拾いながら。

子ども「ゴミがあったらちゃんと拾いたいです」「川にゴミ捨てちゃダメだと思う」「学校に登校する時にも少し意識してゴミを拾おうと思います」「自分たちの生活のなかでこんなに川を汚してる人もたくさんいるんだなって思いました」

意識を変えると、暮らしが変わる。暮らしが変わると、すこしづつ環境もかわる。子どもたちや地域が環境問題を考え、海のことを考える一つのきっかけがこのペイントから生まれることをサポートしたいと、藤田さんは考えています。

藤田さん「例えばごみを拾うとか捨てないということは自分が他の人にも伝えられることです。環境問題いろいろあると思うけど、難しい問題もたくさんあるんだけど」「実は自分の生活の足もとから海のことを考えることができる、ということでこういうアプローチをいろんな所ですすめていけたらと思ってます」

意識が変わると暮らしが変わり、暮らしが変わると環境も変わっていきます。子どもたちに向けた取り組みが各地に広まることを期待したいですね。