2013年1月30日 18時50分

Qリポート 91歳反骨のジャーナリスト

今年92才で現役という伝説のフォトジャーナリスト、福島菊次郎さんをご存じでしょうか。去年ドキュメンタリー映画も公開され、話題になりました。

戦争、公害、原発など国家の罪を問い続ける反骨のジャーナリスト・菊次郎さんに、今の沖縄へのメッセージを頂きたく山口県のご自宅に押しかけ、お話を伺ってきました。

間もなく92才を迎える福島菊次郎さん。愛犬ロクとこの小さなアパートで暮らしている。

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今も原発反対運動を取材したり、東日本大震災の現場にも足を運ぶ姿が映画「ニッポンの嘘」で紹介され、ジャーナリストを目指す若者達の間では伝説の存在になっている。

菊次郎さん「(フォトジャーナリスト塾の様子)事象が法を犯している時はね、カメラマンも法を犯してかまわない。」

軍隊経験を持つ菊次郎さんは、戦後の日本の再軍備が許せず、自衛隊を好意的に紹介すると偽って内部に入りその実態を暴く写真集を刊行した。

菊次郎さん「軍需工場の中に入って。これも、防衛庁を騙して撮った写真なのね。取材規制をどう突破して中に入るかというのが取材の大前提でしょ?」

徹底した反権力・反国家の原点になったのは広島の原爆だった。

菊次郎さん「僕は被爆者が死んでいく状況を100人近く撮ってるの」「入院している被爆者は裏門からしか出て行かないし。裏門って言うのは死んで出て行くことね。」

写真集「ピカドン」。原爆の後遺症に苦しみ続け、貧困生活を余儀なくされた、被爆者・中村重松さんの苦悩が描かれている。「俺の敵を取ってくれ。」中村さんは、10年間カメラを向け続けた菊次郎さんにそういった。

しかし、その子供達は、家族の生活をさらけだした菊次郎さんを恨んでいた。それが、葬式で突きつけられる。

菊次郎さん「すぐに香典もっていったの。そしたら息子がさ。おまえ、いや、貴様、貴様って言ったの。なにし来たか。帰れ。そーなんだよね。たとえば普通、そういう目にあったらそれはね、公表しなきゃいけないことだけれども、俺たちは大体すべて隠してきたじゃん。」

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菊次郎さん「写真家なんて業な商売なのね、人の腹を全部暴き出して食っているわけだ。それからその人たちを救えなくてもさ、それをうまく撮ればさ、賞がもらえたりするじゃないの。罪は深いなあ。」

それでも、恨まれてでも撮らないといけない写真がある。三里塚や安保闘争など、国家権力と戦う民衆の姿を追いながら写真が逮捕に繋がらないかなど、悩むことも。

菊次郎さん「これくらい横顔が写っておれば誰かという割り出しはすぐ分かるわけ。警察が捕まえようと思ったら、凶器準備し放題。礼状が待ち受けているわけ。」

菊次郎さん「どういうんだろうなあ。こういうものを撮ったらさ、あの人が逮捕されるとか言うようなことにいちいち我々が左右されるとしたら。」

菊次郎さん「首になったら困るし、家庭があるし、食っていかなければいけないし。でも基本的にいえばジャーナリストでありカメラマンである以上さ。分かったものをとらないわけには、発表しないわけにはいかないのね。それは中立じゃない訳」

菊次郎さん「中立ってのは常に、厳正に対立する両方の行動、やってきたこと、やろうとしていることが読み取れる人でないと、そういう立場はもてないわけ。」

戦後の日本をあぶり出す写真を数千点発表しながらも、沖縄の写真は一枚もない。実は「集団自決」のガマに通い撮り溜めたネガがある。

菊次郎さん「これは、自分でも迷ってるの、これはもう出さないほうがいいんじゃないかと思って。」

沖縄へ深い思いを持つ菊次郎さんに、国が住民を訴えた、高江のヘリパッドを巡る番組を見て頂いた。

菊次郎さん「うーん。結局、ずっと我慢し続けなければいけないのか。」

菊次郎さん「三権分立の憲法ができて新しい時代できたのに、司法と行政が結託しているのがこういう状態をもたらしたわけで。」

菊次郎さん「権力には勝てないということはあるよね。でも、でもそうだから諦めてやらないのか、でも、もう到底ね、良心的に、自分の問題としても許すことができないから石を投げる、火炎瓶を投げたり。一部が過激化して、それが反対に、反体制運動を排除する原因にされるわけね」

底辺で権力に抵抗する人達を60年以上追いかけてきたからこそ菊次郎さんは言う。

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「現代の市民運動に問われているのは、勝てなくても、抵抗して未来への種をまこうとするのか、逃げて再び同じ過ちを繰り返すのか。その二者択一である」

一方で「民衆は正義だ」などとも思っていない。

菊次郎さん「国民というのは今まであくまでも政党の被害者として位置づけられ、その存在が正統付けられているのね。沖縄なんてその極点にあるわけだけれども」

菊次郎さん「政府が悪い、民衆は善だったみたいなことじゃなくて。反原発運動も同じことだけども、僕は祝島を考えるときに、僕は猟師の子だから本当は猟師に味方したいわけ。でも一番最初に海を売るわけじゃん」

菊次郎さん「猟師って言うのは聖域にいるわけ、被害者であるという聖域。本当にそうだろうか。それでいいんだろうか。」

被害者であるという聖域に逃げ込むな。それは、原発を例にしながら沖縄に向けられた言葉に思えた。被爆都市・広島の嘘が報道の原点になった菊次郎さんならではの、重たい言葉だった。

80才から始めた執筆業で3冊の本を出版、あと3冊書く予定だという。

菊次郎さん「今度はね、自衛隊と兵器産業、それから三里塚も、書いてないし全部で6冊書く予定だった。ところがもう目が見えんようになってさ。あ、記憶のほうだけはね。それだけはちゃんとしている。それがこのぼけた頭に残っているから・・・。」

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