辺野古新基地建設をめぐり、基地周辺の住民らが県の行った埋め立て承認撤回の効力回復を求めた裁判で、きのう最高裁は、4人の原告のうち3人の原告適格を認めました。
訴えを起こしてから7年以上。ようやく国の裁決が適切だったかの実質審理へ移ります。今後の争点は?専門家の意見を交えながら解説します。
ペク弁護士(記者会見)「原告ら住民らの原告適格が認められて、その中身の判断審理をすることになっているという点について、我々としては大きな意義があると思っております」
きのうの最高裁判決後に行われた原告側の記者会見、弁護団は住民3人の「原告適格」が認められた意義を強調しました。そもそも、この裁判はどのようなものなのか改めて整理します。
この裁判は、辺野古新基地建設をめぐり、2018年に沖縄県が行った「埋め立て承認の撤回」を、国が無効とした裁決の取り消しを求めているものです。この国の判断をめぐっては、県と辺野古周辺の住民らがそれぞれ別々に国を提訴していました。
しかし、県が起こした訴訟については「県に裁判を起こす資格がない」として司法から却下され、すでに終結。そのため、住民側に裁判を起こす資格、いわゆる「原告適格」があるかどうかに注目が集まっていました。
一審の那覇地裁は、住民が被害を直接受ける恐れがないとして、訴えそのものを退ける却下判決を言い渡しました。これに対し、二審の福岡高裁那覇支部は、影響を受ける恐れがあるとして「原告適格」を認めていました。
双方の主張が対立するなか、最高裁が出した結論は、住民の居住地などで判断が分かれる形となりました。
最高裁は、建物の高さ制限などを理由に墜落事故への懸念を訴えていた住民1人については「著しい被害を直接的に受けることが想定される地域に居住しているとはいえない」として原告適格を認めませんでした。
一方、航空機騒音の予測エリア付近に暮らす3人については「健康や生活環境に著しい被害を直接受けるおそれがある」と認め、住民側の主張を受け入れました。
原告の金城武政さん「しかるべきこちらの方に気持ちを受け止めてくれたことは、嬉しく思います。かといって安心、楽観的にはできない」
提訴から7年、国の法的手続きは本当に妥当だったのか。ついに、その「中身の審理」が始まる道を開いた今回の判決。2004年の行政事件訴訟法改正にも携わった、都市開発研究所の福井秀夫(ふくい・ひでお)主席研究員は、今回の最高裁の司法判断をこのように評価します。
福井教授「少なくともこの航空機の騒音に関しては、埋立事業で端的に原告適格があるんだという点がはっきりした点では、非常に一歩前進だとは思います。ただ理由付けや、この騒音以外の原告適格根拠を否定した点については非常に大きな課題がまだ残っていると思われます」
騒音以外で認められなかったこと、そして今後の裁判についても課題が課題が残ると話す福井氏。では今後の争点については?
福井教授「実質的に騒音が中心の法案審理での争点になるわけですから、具体的にこの原告3人の方の将来予測される騒音がどうなのかということを科学的実証的にきちんと検証していくことが必要だと思います」
福井教授「国側に対して今度の差し戻し審で始まる那覇地裁等がきちんと証拠の開示を命じて、不利な証拠、有利な証拠すべてを包み隠さず法廷に提出して、本当に将来懸念がないのかどうかということを第三者的独立の立場で、司法がきちんと精査していくことが課題になると思います」
ここからは新田記者です。新田さん、今回の最高裁判決ですが、改めてポイントはどこにありますか?
新田記者「はい。一番のポイントは、最高裁が『将来的に発生する被害の恐れ』を根拠に、住民の裁判を起こす資格(原告適格)を広く認めた点にあります。これまでの行政訴訟では『すでに具体的な実害が発生していること』が非常に厳格に求められて、門前払いされるケースがほとんどでした。そうした高いハードルを、一歩乗り越えたと言えます」
では、これから始まる実際の裁判には、どのように影響するのでしょうか?
新田記者「これからいよいよ本題の審理に入っていきます。ただ、司法が認めたのは、あくまで『騒音による健康被害などの恐れ』についてです。先ほど専門家の福井教授が指摘したように、裁判を進める中では、どの程度の騒音が発生し、どう住民の生活に悪影響を与えるのかを、住民側が『科学的・客観的』に実証していくことが求められます」
ただ新田さん、すでに提訴から7年が経っていて、辺野古の工事は今もどんどん進んでいますよね。この「時間の経過」や「既成事実」は、今後の司法判断に影響を及ぼすのでしょうか?
新田記者「そこが、これからの大きな懸念点です。福井さんは『大きな影響があり、今後はそこを注視しなければならない』と話します。行政法の中には、たとえ国の手続きが「違法」だったと認められたとしても、すでに建設が大きく進んでしまっている場合いまさら元に戻すと社会的な混乱が大きいという理由で、判決では違法性を認めつつも処分は取り消さないとする『事情判決(じじょうはんけつ)』という仕組みがあります」
「福井さんは『国の違法な裁決は、本来なら無効にされるのが原則だ。工事が進んだことを理由にうやむやにされるような特例が、今回、乱用されないかどうかを注視していくことが極めて重要だ』と指摘しています」
7年以上という長い年月を経て、ようやく審理のスタートラインに立てたこの裁判。国の法的手続きは本当に適切だったのか。これからいよいよ本題に入る中で、司法がどのような判断を示すのか、改めて注目が集まります。
