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那覇空港から浦添市へと続き、県民の大切な移動手段となっている”ゆいレール”は、現在2両で運行していて、2023年度内に3両編成の車両を導入する計画を進めています。

山口県から沖縄へ!新しく作られた車両の第1号が大海原を越える「大移動」に密着しました。月が街を照らす深夜。那覇の港からトラックで運ばれたのは、「ゆいレール」で初めての3両編成の車両。車両基地にたどり着くまで、およそ960km・3日間の旅の道のりがありました。

寺崎未来記者「ゆいレールの新しい車両が作られるのは瀬戸内海に面する山口県下松市です」

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

瀬戸内工業地域の一角を担い、沿岸に工場が立ち並ぶ、山口県の東部にある下松市はJR山陽本線下松駅を中心に住みやすいエリアを形成し、「新幹線の生まれる街」としても知られています。

1921年から102年の伝統を誇る鉄道工場、日立製作所・笠戸事業所でゆいレールの新しい車両は完成しました。

寺崎未来記者「ピカピカの新車です。これからおよそ960km、2日半の船旅に向けて準備万端です」

グレーの車体に首里城を表す赤色のラインが入った新型車両。今回、初めて側面に行先表示器が設置されているほか、また、唯一の乗務員である運転士がホームの乗客に注意を呼びかけるための車外スピーカーなど、新しい装備を充実させて利便性の向上を図っています。

コロナ前までの観光客の増加に対応して、ラッシュ時の混雑を解消するため、3両編成の導入が着々と進められています。2両の定員が165人だったのに対して、3両編成は251人を一度に運べるようになり、輸送力の強化が期待できます。

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

2025年度までに3両編成9本・2両編成16本という構成にする計画で、2023年度内に2本がデビューする予定です。(現在は2両×21編成)

3両編成の第1号を沖縄に届けるため、朝早くに作業が始まりました。けん引車に引っ張られ、到着したばかりの輸送船が臨める場所まで進むと。

寺崎未来記者「およそ1年半かけてつくられたゆいレールの新しい車両。これから大型クレーンに吊り上げる作業が始まります」

7人の作業員で車両の4カ所にワイヤーを固定し、フロント部分には風などによる揺れを防ぐためのロープを取り付けます。そして、15トンの車体がゆっくりと、8mの高さまで宙に浮きました。

54年にわたって、高さ40mから時代とともに鉄道車両の進化を見つめてきた大型クレーンがまだ台車と組み合わされていない車体を慎重に港に運んでいきます。なんといっても運転席のない真ん中の車両「中間車」は、”3両編成の象徴”とも言える存在です。その第1号が姿を表し、大阪に船籍を置く貨物輸送船「はるか」の船室に吸い込まれていきました。

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

その後、車輪やモーター、ブレーキなどが組み合わさった台車や床下機器をカバーする「スカート」が運ばれ、全ての船積みが終わりました。そして、午後4時。

寺崎未来記者「ゆいレールの3両編成・第1号を乗せた貨物船が日立製作所・笠戸事業所を出港しました。山口から沖縄へ。960km、2日半にわたる海の旅が始まりました。対岸の離島・笠戸島と港の間をゆっくり抜けて、やがて瀬戸内海の奥に消えていきました」

山口県下松市の港を出発した船はこの後、豊後水道を通って九州の東側へ抜け、沖縄県那覇港を目指します。

きのう、那覇ふ頭には朝早くから準備万端で船の到着を待つ作業員たちの姿がありました。

「よくある仕事ではないので(車両の水切りは)何年ぶりかなので忘れているところもあるかなと思うけど、慌てないで安全作業をしてください」

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

寺崎未来記者「64時間の長旅を経てゆいレール3両編成を乗せた船が那覇港に到着しました」

新型車両を見ようと、親子連れや鉄道ファンなど、たくさんのギャラリーが集まりました。午前は台車や部品と先頭車1両、午後は先頭車1両と中間車を「水切り」し、トレーラーの台車に乗せられます。

寺崎未来記者「開業20年目、初の中間車がクレーンに吊り上げられています。これから那覇港に下ろされます」

新型3両列車の第1号が沖縄に初上陸しました。

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

最終目的地の車両基地に向かう陸上輸送は、モノレール終電後のきょう未明に行われました。経路や装備などの最終確認を終え、午前1時すぎ。台車に乗せられた中間車が、トラックにけん引され、街の明かりを反射しながら那覇ふ頭を出発しました。

交通量が少なくなった国道58号の終点、明治橋交差点を右折すると、時速30kmの速さで巨大な車両が陸橋を渡ります。那覇港から車両基地までの4kmの道のりをおよそ15分。中間車が車両基地に入っていきました。

けん引するトラックと誘導車が港に戻ると、第2便は先頭車が待っていました。丸みを帯びた列車の”顔”がひときわ存在感を放ちながら、夜の那覇を走ります。

ゆいレール3両が山口県から海上輸送

20m超の大型トレーラーが交差点を大回りしながら曲がる職人技と、周辺の交通をコントロールし、車両を補助する誘導車の連携で予定より45分早い午前2時30分に輸送が完了しました。

貨物輸送船が那覇に到着してから18時間半。長い長い一日がようやく終わりました。今後、車体と台車、部品が組み合わせられ、試運転や習熟訓練を経て、2023年度中にデビューする予定です。