ベネチア国際映画祭で、ドキュメンタリー映画『NAZA』が、審査員特別賞を受賞しました。
内容は、イスラエル軍の将校や、兵士への内部取材を重ねた調査報道です。
イスラエル人の監督たちは、イスラエル軍が民間人の犠牲を織り込んだうえで、空爆を行っていると告発しました。
ユバル・アブラハム監督(10日)
「空爆による街の壊滅や、子どもの殺戮が、3年も連日、続いています。事実はそろっていますが、加害者側にも取材する責任を感じました。内部証言を突きつけ、現実を否定できないようにすべきだと」
2023年10月以来、ガザでの犠牲者は7万3789人。負傷者は、17万人を超えています。
空爆は、がれきだらけになった今も続いていて、避難民のテントや配給場所が攻撃を受けています。
イスラエル軍は「民間人の犠牲を最小限にしている」としてきましたが、映画で描かれていたのは、異なる実態でした。
ユバル・アブラハム監督(10日)
「これはガザに対する戦争で、本質は民間人の殺戮だということ。誤爆や事故ではなく、極めて組織的な攻撃でした。当初から明白であるべき事実を、本作は内部証言で示しています」
ただ、この映画を撮った監督たち、イスラエル国内では、裏切者扱いです。
映画のタイトル『NAZA』は、イスラエル情報機関が、空爆で巻き添えになる民間人の数を予測するときに使う軍事用語に由来します。
ユバル・アブラハム監督(10日)
「実態を最も知るのは、盗聴担当の将校でした。爆撃前にスパイウェアで、民家を盗聴するのが方針でした。作中で将校はこう語っています。『赤ん坊の泣き声、テレビの音、夫婦の会話などを一軒ずつ盗聴して爆撃する。全員を“NAZA”とみなして、機械的に標的選定を繰り返す』と」
この映画、イスラエルでは、まだ公開されていません。それでも、すでに大きな反発が起きています。
イスラエル ネタニヤフ首相
「衝撃です。私たちは世界的な反ユダヤ主義の扇動と戦っていますが、我々の内側から発せられたのは、到底、容認できません」
イスラエル ゾハル文化・スポーツ相
「国籍法は『イスラエル国に対する背信行為』を理由とする国籍剥奪を認めており、内務省には、監督たちのイスラエル国籍剥奪の手続き開始を願います」
批判は野党から、そして、リベラル系のメディアからも出ています。
ハーレツ紙
「これほど衝撃的な証言を、検証可能なファクトなしに提示しているのは問題だ」
ただ、監督たちは、このように主張しました。
ラヘル・ショール監督(10日)
「残念ながら時が経っても、国際社会は惨状を止めようとしません。だから迷わず決めました。カメラの前で語ってくれる人がいるなら、記録して発表する意義があると」
■パレスチナ・ガザ地区への攻撃が始まってまもなく3年。その攻撃を主導しているネタニヤフ首相に、いま、イスラエル国内でも逆風が吹いています。
イスラエルでは、来月、総選挙が予定されています。
イスラエルの公共放送が行った最新の世論調査を見ますと、定数120議席のうち、前回選挙で32議席を獲得したネタニヤフ首相率いる『リクード』は20議席の獲得にとどまり、中道政党の『ヤシャル』が24議席と、第一党に躍り出ることが予想されています。
◆この背景について、イスラエルの政治に詳しい防衛大学校の立山良司名誉教授に聞きました。
立山名誉教授は「多くの国民は“安全を取り戻す”という考えが強く、軍事作戦への支持は高い。一方で、軍事作戦の長期化に伴い、予備役の招集期間を延長するなど、国民への負担が増し、 政権への不満も高まっている。ネタニヤフ氏にとって、これまでと比べ厳しい状況だ」といいます。
◆政権が変わる可能性もゼロではないが、イスラエルの対外的な姿勢が変わる可能性はあるのでしょうか。
立山名誉教授は「政権が変わっても、イスラエルの姿勢に変化はない。多くのイスラエル国民は今も“自分たちが攻撃される”という恐怖心を感じていて、野党もそれに応える形になる。つまり、ハマスやヒズボラなどの武装解除という目標は、現政権と変わることなく、周辺に対する“攻撃的な軍事作戦”は続くのではないか」と話します。
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