まもなく東日本大震災から15年です。災害現場では救助犬の活躍が期待されますが、認定基準が統一されていないため、すぐに活動できない現状があります。1人でも多くの命を救いたいと新たな挑戦が始まりました。
大規模な災害現場で倒壊した家屋から生存者を見つけ出す「災害救助犬」。東日本大震災の直後、災害救助犬ボランティア団体で理事を務める古川さんは甚大な被害を受けた岩手県釜石市にいました。
災害救助犬ネットワーク 古川祥子さん
「(東日本大震災の現場は)範囲が広すぎてどこから探していいのか。言葉が出なかったですよ、悲惨すぎて」
日本では災害が発生した際、警察や自衛隊などに所属する犬が救助活動を担うほか、民間のボランティアでも救助犬が育成されています。
古川祥子さん
「ご飯代だけでも2~30万円かかって、遠征費とかでも結構するので、年間100万円は超える」
それでも、「救える命を救いたい」という強い思いから、古川さんは本業のドッグトレーナーのかたわら、毎朝2時間、救助犬とともにトレーニングを積み重ねています。
しかし、これほどの訓練を重ねる古川さんですらすぐには捜索にあたれず、待機を強いられています。そのため、これまで生存者を発見できたことはまだなく、もどかしい思いを抱えているといいます。
古川祥子さん
「能登の時も早く現場に着いていたのに待機をしなきゃいけない状況。もっと早く現場に入れたら、救える命はたくさんあったはず。かなりモヤモヤしました」
なぜ、現場ですぐに捜索にあたれないのか。国の災害対応を研究している東京大学の沼田准教授は、日本にある複数の災害救助犬団体がそれぞれの認定基準で活動している現状が一つの原因になっていると指摘しています。
東京大学 生産技術研究所 沼田宗純准教授
「トレーニングのスキルの基準がバラバラで統一されたものがない」
そのため、行政が「どの犬が本当に現場で使える救助犬か」を迅速に判断できず、投入が遅れてしまっている現実があるといいます。
この壁を打ち破るため、沼田准教授は旗振り役をかって出ました。
沼田宗純准教授
「統一基準を作りたいと思っています。色々な国で、統一された国家基準がありますので、我々はそれを参考にしてうまく採り入れながら、日本に合うような基準ができるといいと思っています」
モデルにするのは災害救助犬先進国のスイスです。視察に訪れたのは、アルプスの山岳救助で培われたノウハウを基に世界最高峰の災害救助スキルを誇る団体「REDOG」です。
その訓練は極めて厳格で、数年間にわたるトレーニングと試験を通過しなければ現場に立つことは許されません。
目指すのは日本初となる「災害救助犬統一認定制度」。犬の育成過程から評価基準まで国が統一した審査体制を作る試みです。
しかし、基準を統一するだけでは民間の救助犬の力を最大限に活かすことはできず、受け入れる側の態勢を整えることも不可欠です。
沼田宗純准教授
「行政側はそこに指揮命令をする、指示をして動いてもらうだけのマンパワーもない」
スイスのREDOGは24時間体制で出動に備えていて、政府や軍とも緊密に連携して、国内外の被災地へ迅速に駆け付けています。
一方、日本ではどこに何頭の災害救助犬が存在するのか全体像を把握し、派遣先を差配するというような「指示系統」が行政側に確立されていないのです。
沼田宗純准教授
「最終的にはやはり国がしっかりと国としての基準を作って、(認定試験の)修了者の名簿を管理して、適切に配置をするという全体の調整を国がやるということが理想」
さらに沼田准教授は、国として救助犬の訓練場を整備することや現場で活動した際の経費の支払い、税制優遇など、国がシステムとして支援する仕組みの必要性も訴えます。
沼田宗純准教授
「首都直下地震でも、生き埋めで助けなきゃいけない人が、計算上ですけど7万人を超えている。南海トラフになると、10万人以上が生き埋めで要救助者に」
未曽有の災害。その時、いち早く生存者を特定できる救助犬の存在は不可欠です。
古川祥子さん
「日本における統一基準がちゃんと確立されれば、どこの地域にどのぐらいの救助犬がいるのか、派遣するうえでは良いシステムになるんじゃないか」
善意に頼るボランティア任せの時代から、社会の「インフラ」へ。迫り来る大災害の日に1人でも多くの命を救うため、今月半ばには新制度設立に向けた初めてのシンポジウムが開かれます。







































