2018年に、生後11カ月の長女を暴行し、死亡させたとして、傷害致死の疑いで2022年に逮捕された母親(29)の裁判員裁判で無罪の判決が言い渡されました。
■“虐待の疑い”から事件に…3年以上勾留
福岡地裁で3日に開かれた判決公判。
鈴嶋晋一裁判長
「被告は無罪」
検察側は懲役8年を求刑。弁護側は無罪を主張していました。
母親(29)は、3年以上に渡って拘置所に収容され、保釈請求がようやく認められたのは去年8月。自宅から裁判所に向かいました。裁判員裁判の判決を受け止めます。
母親(29)
「しっかりと裁判官が今までの裁判を振り返って判断してくれると信じているので、もう普通に帰れることを信じています」
“事件”とされたのは、病院からの「虐待の疑いがある」という通報でした。
母親(29)
「ここでミルクを作っていたら、後ろの方で音がしたので、何かなと思ってここから見たら、長女が横向きに倒れていて」
2018年7月、自宅で長女と過ごしていた母親は、様子がおかしいことに気付き、119番通報しました。病院に搬送された長女は頭部を骨折していて、急性硬膜下血腫や、びまん性脳腫脹により、3日後に亡くなりました。
■検察側「育児ストレスで暴行」と主張
福岡県警捜査第1課 平瀬正孝課長(2022年2月当時)
「本件が確実に児童虐待による傷害致死事件だと」
裁判で、検察側は「育児などでストレスを抱えていた被告が暴行を加え、死亡させた」と主張しました。しかし、母親(29)には『側頭葉てんかん』の持病があり、事件の前にもキッチンで長女と一緒に倒れていたことがありました。その時の記憶はありません。
■弁護側「発作で事故の可能性」
弁護側は「てんかんの発作が起きて、長女が落下したか、一緒に転倒した、事故の可能性がある」と主張しました。さらに、母親が駆け付けた救急隊に「座らせて遊ばせていたら、横に倒れた」と説明していたことについて、検察側は「救急隊に嘘をつき、搬送時は発作を起こした可能性を説明していなかった」と指摘。弁護側は「てんかんの症状などで記憶が混濁していた。妊娠中のため薬を飲まない選択をしていた」と説明しました。
裁判長は…。
鈴嶋晋一裁判長
「事件当日、警察官からの事情聴取において、被害者にそのような外傷が生じた原因について、自身にてんかん発作が起きたのかもしれない旨を述べている。発作前後の記憶がはっきり残っておらず、発作自体に気付いていなかった場合、それ以上、具体的なエピソードを述べることは困難であるから、検察官の主張は採用できない」
保釈後の母親(29)
「ずっと手が合わせられなかったので、ごめんねと。一生謝り続けるんだろうな、心の中で」
2人目を妊娠中でした。
母親(29)
「自分の薬のせいで障がいを持った子が生まれてくると、あの時、薬を飲まなければ…とか、絶対後悔するとも思ったし。それなら飲むのをやめようと判断しました」
家族同伴での医師からの説明を受ける機会がなく、てんかんに関する正しい情報を得られていなかったといいます。逮捕によって、幼い息子と過ごす時間も限られました。
■裁判長「故意の暴行といえない」
16回に渡る公判では、法医学医や脳神経外科医など17人が証言に立ちました。
鈴嶋晋一裁判長
「(頭部の傷は)一度、それほど強くない力で打つことによっても生じ得るもので、てんかん発作による事故であっても、被害者がこのような傷害を負うことはあり得ると言える。間違いなく被告が被害者に故意の暴行を加えたと言うことはできない」
母親(29)
「長女に対する思いとか、これまでの3年半の生活とか、家族とのやり取りとか、全部思い出して涙が出てた。故意の暴行じゃなかったとしても、長女が亡くなったことは事実ですし、もう二度とこういう病気に対しておろそかにしないように。子どももいますし、家族もまた一からスタートしようと言ってくれているので」
福岡地検は「判決内容を精査し、上級庁とも協議のうえ、適切に対応する」としています。































