トランプ政権によるベネズエラへの軍事作戦と政権転換は、西半球全体に大きな波紋を広げている。米国はベネズエラでマドゥロ大統領を拘束し、暫定政権の発足を主導したが、その後の国家再建をどのように進めるのかが国際社会の注目を集めている。こうした中、ルビオ米国務長官は1月7日、ベネズエラ再建に向けた「3段階計画」を明らかにした。第1段階は「安定化」で、ベネズエラ産原油を米国が販売し、その収益を管理する。将来的には、この収益をベネズエラ国民に分配する考えだとしている。第2段階は「復興」と位置づけられ、米国企業の市場参入を進めるとともに、反体制派の釈放を通じて市民社会の再建を開始するとしている。そして、第3段階が「政権移行」で、ルビオ国務長官は「最終的に国を変革するのはベネズエラ国民だ」と強調した。
この3段階計画の出発点となるのが原油の扱いであるが、政権内部からは一段と踏み込んだ発言も出ている。米エネルギー省のライト長官は、ベネズエラ産石油の販売について「米国が無期限に管理する」と明らかにした。さらに、トランプ大統領は自身のSNSで、米国との新たな原油取引で得た資金は「米国製品のみの購入に充てる」と投稿。購入対象として、米国産の農産物や医薬品のほか、ベネズエラのエネルギーインフラ再建に用いる設備などを挙げている。ベネズエラの石油事業再建を巡る協議の場では、トランプ大統領が、石油企業による投資額が少なくとも1000億ドル、日本円で約15兆8000億円に上るとの見通しを示し、「参入する企業には莫大な利益がもたらされる」と強調した。しかし、協議に参加したエクソンモービルの最高経営責任者(CEO)は、現在のベネズエラの状況では「投資は不可能だ」と指摘しており、民間企業側には慎重な姿勢も目立つ。一方、ベネズエラの石油を巡っては、海上での強硬措置も相次いでいる。
トランプ政権によると、大西洋やカリブ海で、ベネズエラ暫定政権と連携する形で石油タンカーの拿捕を進めており、9日までに計5隻を拿捕した。その中には、ロシアと関係があるとされる不審な動きを見せたタンカーも含まれている。米政府は1月7日、北大西洋上で、制裁対象となっていたロシア船籍の石油タンカー「マリネラ」を含む2隻を拿捕したと発表した。「マリネラ」はもともとガイアナ船籍の「ベラ1号」で、2025年12月に船名を変更。制裁下の石油を秘密裏に輸送する、いわゆる「影の船団」の一角として米国の制裁対象に加えられていた。英紙テレグラフによると、「ベラ1号」は2025年8月、イランを出港し、ベネズエラに向けて航行していたとされる。その後、同年12月17日に米国沿岸警備隊が拿捕を試みたが、船舶は位置信号を遮断して北東方向へ逃走。消息を絶っていた。米当局は1月1日、船名を「マリネラ」に変更した同一船舶を大西洋上で再び追跡し、1月6日には米軍がアイルランド沖で監視活動を実施。翌7日、正式な拿捕に踏み切った。米ホワイトハウスのレビット報道官は7日の記者会見で、「この船舶は制裁対象の石油を輸送していたベネズエラの影の船団の一部であり、現政権下では容認しない」と述べ、強硬姿勢を鮮明にした。これに対し、ロシア外務省は8日、「民間船舶を事実上乗っ取り、乗組員を拘束した行為は国際海事法の重大な違反だ」と反発し、深刻な懸念を表明した。米国側はその後、拘束していたロシア人船員2人を解放する方針を決定している。
ベネズエラで大統領拘束に成功したことを受け、トランプ政権は対外的圧力を盾に主導権を確保する姿勢を強めている。その矛先は西半球に位置するグリーンランドにも及び、不安と緊張が広がっている。ベネズエラで軍事作戦が行われたのと同じ1月3日、Xに星条旗で塗りつぶされたグリーンランドの地図が投稿された。投稿したのは、トランプ大統領の側近で、スティーブン・ミラー次席補佐官の妻、ケイティ・ミラー氏で、第1次トランプ政権で大統領顧問を務めた人物。投稿には「まもなく」との短い言葉が添えられていた。これに対し、デンマークは即座に反発した。4日、フレデリクセン首相は声明で、「米国に対し、歴史的に緊密な同盟国とその国民に対する脅しをやめるよう強く求める。グリーンランドの人々は、自分たちは売り物ではないと表明している」と述べた。
一方、トランプ大統領自身も、グリーンランド領有への意欲を改めて示した。9日、記者団に対し、「米国が行動しなければ、ロシアか中国にグリーンランドを支配されてしまう。デンマークとは穏便な方法で合意したいが、できなければ強硬な手段に出る」と語った。政権中枢からも強い発言が相次いでいた。5日、ミラー次席補佐官は米CNNの番組で、「グリーンランドは米国の一部であるべきだというのは、この政権の発足以来、実際にはトランプ1期目に遡る米政府の公式の立場だ」と主張し、「グリーンランドの将来をめぐって、米国と軍事的に戦おうとする国など存在しない」と言い切った。6日には、ホワイトハウスのレビット報道官が声明で、「トランプ大統領は、グリーンランドの取得が国家安全保障上の優先事項で、北極圏での敵対勢力の抑止に不可欠だと明言している」と説明した。その上で、米軍の最高指揮官である大統領にとって「軍の活用は常に選択肢の一つ」だと述べ、軍事力行使の可能性にも言及した。8日には、バンス副大統領が、「欧州の指導者に伝えたいのは、米国大統領の発言を真剣に受け止めるべきだということだ」と述べ、欧州がグリーンランドの安全保障を重視しないのであれば、「米国が何らかの対応を取らざるを得なくなる」と警告した。
こうした発言の連鎖に、デンマーク側の警戒感は一段と強まっている。フレデリクセン首相は、「米国がNATO加盟国を軍事的に攻撃することを選ぶなら、NATOを含め、第2次世界大戦終結以降に築かれてきた安全保障体制のすべてが停止することになる」と強い表現で警鐘を鳴らした。緊張の高まりを受け、マルコ・ルビオ国務長官はデンマーク側との協議に乗り出す姿勢を示している。7日、ルビオ氏は「誰が大統領であっても、国家安全保障への脅威があると判断すれば、軍事的手段で対処する選択肢を持っている。ただし、外交官として私は常に別の方法で解決することを望んでいる」と述べ、12日からの週にグリーンランドを巡ってデンマークと協議する考えを明らかにした。さらに、ホワイトハウス内部で、グリーンランド住民への一時金支給案が検討されていたことを、ロイター通信が報じた。1人当たり1万ドルから10万ドル、日本円で約158万円から約1580万円を支給する案について、政府関係者や補佐官らが協議したという。支払い総額は約60億ドル、約9470億円に達する可能性があり、デンマークからの分離を促し、将来的な米国編入を目指す狙いがあるとみられている。
★ゲスト:小谷哲男(明海大学教授)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)
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