今、人気温泉地でサル被害が急増しています。なぜ増えているのか、専門家は今後さらに増える可能性を指摘しています。
■屋根ドン!窓をこじ開け侵入も
野生のサルの群れが出没しているのは関東有数の温泉地である神奈川県湯河原町。
サル被害に悩む住民(80代)
「網戸を破って中に入っちゃう。それでここから、また出ていく。家庭菜園を(例年は)やるんだけれど、今はもうやらない。サルが来るから…」
今年、湯河原町ではサルによる被害が相次ぎ、町民にとって“大きな悩みの種”となっていましたが…。
サル被害に悩む住民(50代)
「屋根とかに上がっているみたいで、振動とかがすごくて、最近は特に気になるかなと」
冬を迎えた今、さらに被害が拡大。湯河原町で宿泊施設を営む男性は“サルの行動がエスカレート”しているといいます。
シェアハウス湯河原 百武正人さん
「これ、結構重いんですよ。人間が開けてもかなり重い。1枚板のガラスなんですけど、これも重さとしてはサルは開けられないと思っていた」
重たい窓をサルがこじ開け、侵入。これは「今までになかった出来事」だといいます。
室内には、この宿の体験プログラムの一環で観光客が干していた「干し柿」がありましたが、食べごろを迎える前に、すべてサルに奪われてしまいました。
シェアハウス湯河原 百武正人さん
「(プログラムは)別のものを準備するしかない。干し柿は今年は諦めて」
シェアハウス湯河原 百武正人さん
「車の上!車から降りた」
再び目の前に現れたサルの群れ。慌てて室内に戻ると…。
シェアハウス湯河原 百武正人さん
「破られた。こんな感じで開けられて、入られた可能性がある…」
障子を破られていました。
番組が設置した固定カメラには、取材を終えた直後にサルが現れ、じゃれて遊ぶ様子が…。このサルが窓を開けて障子を破り、室内に侵入したとみられています。
シェアハウス湯河原 百武正人さん
「油断するとやられる。“いたちごっこ”が続いている感じ」
さらに今、“目撃エリアにも変化”が。9月の取材では駅前や温泉宿が立ち並ぶ、いわゆる「繁華街」に多く出没していましたが…。
タクシー運転手
「今は(繁華街に)あまり出てこない。住宅街に住んでる人は結構、被害を受けてる」
サルの行動範囲が“住宅街”に移っているといいます。向かってみると…。
取材スタッフ
「民家に入ろうとしています」
住宅街に現れたサル。狙っているのは…。
取材スタッフ
「早い!慣れた手つきでみかんを食べています。皮落としている」
サル被害に悩む住民(67)
「もう食べ放題ですよ。柿やみかん(の木)がある。大概とられますね…」
■なぜ?“湯河原サル軍団”大暴れ
なぜ今年、湯河原町で被害が急増しているのでしょうか。専門家は「我々、人の行動が関係している」と指摘します。
日本霊長類学会 清野未恵子理事
「もともと観光目的に餌(え)付けをされていた経緯から、人間が利用するような食物に対して少しずつ慣れていった」
湯河原町周辺では1950年代ごろから、観光客などによる継続的な餌付けが行われ、さらに、ここ数年、外国人など観光客数が増加傾向に…。
その結果、サルが「山より人里の方が栄養価の高い食べ物がある」と学習し、頻繁に人里に降りてくるようになってしまったのではといいます。
さらに、多くの観光客が集まることが予想されるなか、地元観光協会も注意を呼び掛けます。
湯河原温泉観光協会 久能木孝一さん
「餌(えさ)をやりたくなるような人情的には分かるんですけれども、人の食べ物の味を覚えるなど状況によっては、人が近付いたことによって威嚇したり、飛びかかられたりする危険性もあるので、とにかくサルを見つけたら近付かない」
そして取材班は“サルの拠点”を発見。取材を進めると、湯河原町だけでなく、さらなる被害拡大の恐れが…。
関東の温泉地である湯河原町で拡大するサル被害。日が沈み、サルが向かった先は…。
かつてはアパートとして利用されていた、いわゆる“空き家”です。夜な夜なサルが出入りする様子が…。
そして、日の出の時間が近付くと建物から出てきた10匹ほどのサル。早朝の住宅街に大きな鳴き声が響き渡ります。
“空き家”の近くに住む住民(73)
「うるさいです。約10匹いるとやっぱりうるさい」
こうした“空き家”を拠点にすることでサルは山に戻らず、住宅街で効率よく栄養を摂取する術を覚えてしまうと専門家は指摘します。
日本霊長類学会 清野未恵子理事
「できるだけ短い時間に効率よくエネルギーを得ようと思った時に、人里の中で近い場所を探すということで、“空き家”が選ばれることがある。栄養が豊かなままだと子どもを出産する機会が多くなる。2年に1回出産していたのが1年に1回、毎年出産する」
観光客による餌付けや空き家、こうした問題は湯河原町に限ったことではなく、全国各地でサル被害が増える危険も…。
湯河原町ではこれ以上の繁殖に歯止めを掛けるため、今年度中に雄ザルの捕獲を目指すと同時に全頭捕獲に向けて神奈川県へ要望書を提出。慎重に議論が進められています。







































