アジア歴訪の最終盤となった米中首脳会談で、トランプ米大統領は10月30日、「会談は素晴らしかった。10点満点中で12点だ」と満足感を示した。焦点となったのは、世界の供給網を揺るがすレアアース問題。双方は激しい対立の末、規制と関税の応酬を一時的に見送り、懸案解決は先送りされた。中国は今年4月、ジスプロシウム、テルビウムなど7種のレアアース輸出規制の強化を発表。以後、米国が申請した輸出のわずか25%しか認可されず、米国ではSUV(スポーツ用多目的車)工場の一時停止など生産現場への影響が広がっていた。中国は10月、輸出管理の対象を加工技術にも拡大し、海外の防衛・半導体企業への輸出制限の方針を発表。世界市場は再び緊張に包まれた。しかし、今回の会談で、中国がこの追加規制を1年間見送ることで合意。対抗措置として米国が表明していた100%の追加関税も発動を見送ることとなった。また、両国は経済協力の再構築に踏み出し、中国は米国産の大豆輸入を即時再開。米側も合成麻薬「フェンタニル」の流入を理由に課していた関税を、20%から10%へ引き下げた。トランプ氏は来年4月に訪中する予定。
レアアースは、ハイテク製品や防衛装備に不可欠な戦略資源とされ、中国は世界の採掘量の約70%、精製では約90%を占め、圧倒的な支配力を持つ。輸出規制の対象となったジスプロシウムはジェットエンジンに、イットリウムは高周波レーダー・システムに不可欠。米国の戦闘機「F35」1機には約400キロのレアアースが使用され、原子力潜水艦では4600キロが必要とされるという。10月28日、東京で行われた日米首脳会談では、重要鉱物・レアアースの供給確保に向けた新たな枠組み創設で合意。両首脳は、「日米両国の国内産業にとって極めて重要な原材料および加工済みの重要鉱物、並びにレアアースの供給を支援する」と表明した。さらに、両政府は「エネルギー」「AI」「レアアース」を中心とする21の投資プロジェクトの共同文書を発表。日本企業の投資関心総額は60兆円規模となる見通し。トランプ大統領の今回のアジア歴訪は、さながら「レアアース対策の旅」であった。10月20日、米国で行われた豪州首脳との会談では、採掘・加工協力で合意。26日のASEAN首脳会議では、タイ・マレーシアとの間でレアアース協力覚書を締結。そして、28日の日本での合意、30日の日中首脳会談。資源確保を軸とする新たな経済安全保障の枠組みが、アジア全域に広がりつつある。
10月30日、韓国・慶州で開かれたAPEC首脳会議の場で、トランプ大統領と中国の習近平国家主席が6年ぶりに対面で会談した。会談時間は1時間40分に及んだが、両国関係の最大の火種とされる「台湾問題」には一切言及がなかったという。米中が経済と安全保障の微妙な均衡を探る中、米国内では「中国との関係改善を優先しているあまり、台湾を犠牲にするのでは」との懸念が高まっていると、米「ブルームバーグ」が報じた。また、台湾の頼清徳総統は、米国の保守系ラジオ番組に出演し、「台湾が併合されれば、中国は米国と世界の舞台で競い、ルールに基づく国際秩序を変える上でさらに強力になる」と発言。米中に対し、強い危機感を示した。また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、頼総統は8月に中南米3カ国を歴訪する際、米ニューヨークへの立ち寄りを希望していたが、トランプ政権は「中国との会談に集中するため」として訪問計画の取り消しを求めたという。さらに、米紙「ワシントン・ポスト」は、複数の政府関係者の話として、トランプ大統領が「米中首脳会談の可能性を優先するため、台湾への4億ドル規模の軍事支援の承認を一時的に拒否した」と報じた。政権発足以来、トランプ氏は今年2月に、台湾有事への介入を問われて「コメントしない。そうした立場には立ちたくない」と発言していた。
★ゲスト:ジョセフ・クラフト(経済・政治アナリスト)、柯隆(東京財団主席研究員)、鈴木一人(東京大学公共政策大学院教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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