発生から26年を経て急展開した、名古屋市の主婦殺害事件。警察は1日、逮捕した69歳の女を立ち会わせ、事件が起きたアパートを現場検証しました。(11月1日OA「サタデーステーション」)
■青い服で足早に現場へ…
報告・仁科健吾アナウンサー
「安福容疑者とみられる人物が事件現場に入っていきました。髪の毛はミディアムほどで、うつむいた状態で事件現場へと入っていきました」
容疑者とみられる姿を、サタデーステーションのカメラが捉えました。青い服で足早に、そしてうつむきながら現場を訪れた容疑者とみられる人物。26年前起きた、名古屋主婦殺害事件。殺人の疑いで逮捕された、安福久美子容疑者立ち会いのもと現場検証が行われました。執念で保存された殺害現場で、何を語ったのでしょうか。
1999年11月、名古屋市。主婦の高羽奈美子さん(当時32歳)が首などを複数回刺され死亡した事件。実に26年もの間、未解決だった事件が動いたのは31日のこと。
愛知県警村上健司刑事部長(10月31日)
「本日発生からおよそ26年の時を経て、被疑者を殺人罪で通常逮捕しました」
■当初はDNA型の提出拒否
30日、安福容疑者が出頭したことから動き始めた事件。新たにわかったことは、出頭するまでの経緯。
報告・仁科健吾アナウンサー
「逮捕された女は、今年に入り捜査線上に浮上。当初警察が求めたDNA型の提出を拒否していたことがわかりました」
今年に入り、捜査線上に浮上していたという安福容疑者。警察は複数回話を聞いていたことがわかりました。DNA型の提出も求めていましたが、容疑者は拒否。先月になり応じたということです。出頭したのは30日。その翌日の31日、現場に残されていたDNA型と一致。つまり容疑者は鑑定結果が出る時期に合わせて出頭したとみられます。
取り調べには素直に応じているという容疑者。「あっています」と容疑を認めています。
■事件の前年容疑者「私結婚したけど…」
新たに分かった事はもう一つ。容疑者と被害者の夫・悟さんとの接点です。
逮捕から一夜明け、事件を報じる新聞に目を通す被害者の夫・悟さん。
奈美子さんの夫・悟さん
「奈美子への恨みじゃなく自分への恨みかもしれないので、自分が泣いていたら(犯人が)喜ぶばかり。絶対泣かないようにしようとやってきました」
逮捕された安福容疑者は、夫の高校時代の同級生。そして同じソフトテニス部に所属していたことがわかりました。
奈美子さんの夫・悟さん
「バレンタインの手紙とかチョコもらっていた。同じクラスの別の子が好きだった。『あなたと交際することはできない』と傷つけるような言い方はしてなかった」
事件が起きる一年前、部のOB会で顔を合わせた際、容疑者から「結婚した」と聞かされていました。
奈美子さんの夫・悟さん
「男女で食事して高校のテニスコートまで行ったとき、無事結婚できたんだと思ったら高校時代と違って明るく、『私、結婚したけども、仕事も一生懸命やって大変』と言っていて、明るくなってよかったみたいな…。(容疑者の)連絡先も知らないし、全然心当たりがない」
事件現場となったアパートから車で20分ほどのところに家族と暮らしていたとみられる安福容疑者。
安福容疑者の近所の人
「敷地内のお掃除されていたりとかは何回かあって。あいさつ程度に会釈くらいだったので、おとなしい方なのかなっていう印象。静かな方だなって感じ」
■同級生明かす容疑者の素顔「おとなしい子」
安福容疑者の同級生に話を聞くことができました。
安福容疑者の同級生
「おとなしい方。目立つこともしないし。学校ではおとなしい子でした。人を傷つけること言わないし、そういう態度もまったくなく」
同級生である夫・悟さんにチョコを渡したことについては…
安福容疑者の同級生
「(Q恋愛感情を同級生に抱いていた?)まったくないです。そういう話を聞いたこともないし。あの子が好きだとかチョコレート渡したとか、そういう話は聞いたことない」
■生前の被害者「今が一番幸せ」
生前の奈美子さん(1999年4月撮影)
「ママと一緒です。こうちゃんです」
まさに「幸せ」を絵に描いたような日常でした。
奈美子さんの夫・悟さん
「(妻・奈美子さんは)『私、人生でいまが一番幸せな時かもしれない』と言っていました」
しかし、その幸せな日々は一変します。
奈美子さんの夫・悟さん(2014年取材)
「(奈美子さんは)ここでうつぶせで倒れていた。ひざから下が廊下に出ていた。(部屋の)奥を見たら航平がいた」
■被害者が残していた長男の成長日記
当時2歳だった長男の航平さんは無傷で、奈美子さんの遺体のそばに座っていたといいます。まだ幼かった息子の航平さんは事件の、そして母親との記憶はありません。
奈美子さんの息子・航平さん(当時高校2年生)
「少しずつ僕の成長を日記に書いてくれたので、優しい人だなと」
これは奈美子さんが記していた、航平さんの成長日記です。
(奈美子さんが書いた日記)
『初めてパパの顔を見て笑う、かわいい。』
『よく笑ってくれるようになって、ますますかわいくなってきた。』
奈美子さんの息子・航平さん(当時高校2年生)
「小さいときに自分のお母さんはいないものだと思った方が楽だと思ったのかもしれない…」
航平さんを男手1つで育ててきた夫・悟さん。何度も何度も駅や街頭に立って、情報提供を呼びかけてきました。
■「絶対に逃がさない」被害者・夫の執念
奈美子さんの夫・悟さん(以前の取材に)
「絶対に逃がさないよと。私の家(アパート)には、(犯人の)DNAが残っているので、いつ逮捕されるかわからない緊張感は与え続けていきたい」
現場となった自宅アパートの玄関には、犯人のものとみられる血痕や足跡が残されていました。事件後に引っ越して、住まいを別にしながらも、悟さんはこのアパートを借り続けています。事件から26年間、賃料の総額は2200万円を超えています。
奈美子さんの夫・悟さん(以前の取材に)
「できたら犯人を捕まえて、警察署の取調室で調書を取るんじゃなくて、ここまで来て、現場そのままなので実況見分をしてもらったら…」
また事件当時、殺人罪の公訴時効は15年でしたが、悟さんは他の被害者遺族らとともに「時効制度撤廃」を求め続けてきました。そして事件から11年後の2010年、殺人罪の時効は撤廃されました。
奈美子さんの夫・悟さん(2010年)
「あと(時効まで)4年半しかなかったと思ったが、本当にやったぞと思う。これでとりあえず犯人を捕まえることが最終目標だから。犯人は(時効まで)あと4年半で逃げ切れると思っていたので、時効撤廃でずいぶんがっかりしたのでは…」
「犯人を逃がさない…」そんな悟さんの執念が26年の時を経て、容疑者逮捕へと繋がったのです。
■容疑者逮捕から一夜明けて遺族は
奈美子さんの夫・悟さん
「(Q奈美子さんに容疑者が捕まったことは…)今朝なんかは、(容疑者が)捕まって、いま大変だよ、ぐらいのことは伝えましたけど。いまだに動機がはっきりしないので。僕なんか悪いことしましたか、というのは聞きたいですね」
動機に心当たりはないという悟さん。警察は事件の詳しい経緯を調べています。









