北日本では「爆弾低気圧」の影響で大荒れの天気となった3連休初日。クマの目撃や被害が1日も相次ぎ、各地が対策に追われています。中には“不要不急の外出自粛”が呼びかけられる地域も(サタデーステーション2025年11月1日OA)
■爆弾低気圧で北日本が大荒れ 冠水や倒木も
冠水し、川のようになった国道230号。3連休の初日、北日本は大荒れの天気となりました。
報告・高橋海斗(1日北海道・釧路市)
「道路わきには水がかなり溜まっていて、前が一瞬見えなくなります」
北日本を中心に100地点以上で6時間雨量が11月として観測史上1位となりました。雨だけでなく激しい風も吹きつけます。台風並みに発達した低気圧の影響です。最大瞬間風速は北海道えりも岬で49メートルを超えた他、青森県八戸市でも36メートル以上を観測。樹木が倒れたり、収穫が始まったばかりのリンゴが落ちるなど被害が広がりました。
■3連休初日の高尾山 クマ鈴を付ける外国人登山者も
一方の関東は行楽日和。1日、サタデーステーションが訪れたのは東京・高尾山。紅葉は、ほんのり葉が色付き始めていますが見ごろはもう少し先、今月15日ごろになりそうです。
報告・朝倉有香ディレクター(1日高尾山)
「リュックの後ろに鈴が付いています」
クマ鈴を付けている外国人登山者などもいました。
オーストラリアからの登山者
「周辺でクマが出ていると聞いたから自分用に小さいの(ベル)を買ったんだ」
都内在住の登山者
「結構大きめの音で結構遠くにいる人にも気付いてくれるので重宝しています。周りに人がいなそうだなと思ったら自分でおーいって声出しながら走ったりしていますね」
隣町の東京・あきる野市は3日前の先月29日にクマが出没したばかり。この地域に住む南澤さんもクマを目撃したといいます。
クマを目撃した南澤進一さん(67)
「(クマは)このカキの木に登ってカキを食べていました。10月の6日ですね(大きさは)1メートルくらいですね。ワナを仕掛けても入らないんで、やっぱり早く駆除してもらいたいですけどね」
■クマが牛舎で牛のエサを…
東北ではクマによる人身被害が増え続ける一方です。福島県大玉村の牛舎では先月31日、エサやりをしていた男性がクマに襲われ負傷。周辺では、1日朝にかけてクマ2頭が駆除されましたが、男性を襲ったクマかはわかっていません。
報告・佐野楓
「被害にあった男性は、こちらの牛舎で電気をつけたところ、2頭のクマがいて向かってきたということです」
猟友会のメンバー
「牛舎の一番奥の方にエサを食べて居座っていたみたいで、クマの方から向かってくるような状況だったので、危険だということで発砲した」
山形県南陽市では、1日朝、市の職員(58)がクマに襲われ、右手を骨折する重傷を負いました。現場近くの小学校では、3日前、玄関のガラスがクマに割られるなど出没が相次いでいて、この職員は別の職員と2人で警戒にあたっていました。
■秋田でクマ狩猟期間スタート マタギが感じた異変
去年はゼロだった10月の人身被害が、今年は30件以上も起きている秋田県。1日から、ツキノワグマやイノシシなどの狩猟期間に突入しました。番組が訪ねたのは、北秋田市で猟師をしている松橋さん(28)。江戸時代から続くマタギの家系に産まれ、現在16代目として修業中の身です。今年から猟に持っていく道具が増えたと言います。
16代目のマタギ 松橋翔さん
「クマスプレーも持っていくようになりました。今までのクマの生態から予想がつかないような動きをしてくるので、 そういうのに対峙するには、今までの猟具ではどうともいかない」
今季初めての猟に向かうと、早速異変が。イノシシやシカ用の罠を仕掛けようと栗林へ入った時でした。
16代目のマタギ 松橋翔さん
「これクマが食べてますね。こっちは(罠を)かけるのやめておきます。これもこれもそうなんですけど、クマの糞なんですね」
想定以上だったクマの痕跡。
16代目のマタギ 松橋翔さん
「クマがいるところにはイノシシが近寄りたくないし、イノシシがいるところはクマが近寄りたくないし、そういう関係性だったのが、今回で明確になったのが、共存はバッチリしているなというところ。かなり異常かなと思います」
クマ対策が猟師頼みになっている現状にも危機感をつのらせていました。
16代目のマタギ 松橋翔さん
「(猟師の)募集をかけて免許を持って銃を持って、という人が増えても、ライフル銃を持って、いざクマと立ち向かえるのは10年後なので、まだまだその間にクマの数も増えて、里にも近くなってくるでしょうし」
先月31日、秋田県男鹿市でクマが目撃された場所は、山から6キロ以上も離れた海岸沿いでした。
報告・富樫知之ディレクター
「この辺りでは連日クマが目撃されていますが、近隣住民の方によると、箱罠の数が足りず、設置が進んでいないということです」
秋田市内で住民に話を聞けば、必ずといっていいほど、「クマを見た」と言われる状況です。庭の柿の実をクマに食べられたという人は…
庭の柿がクマ被害にあった住民
「怖いけど年齢が年齢だから食べることもできないし、そのままにして置いてるの」
■河川敷のクマ対策も急ピッチ
こうした状況を打開するための対策が急ピッチで進められているところも…
報告・内田吾郎ディレクター(先月31日 新潟・関川村)
「こちらの河川敷では重機で草木を踏み倒す作業をしているようです」
新潟県・関川村の河川敷周辺では、クマの目撃情報が相次ぎ、隠れ場所になっている河川敷の草木を重機で踏み倒す作業やくるみの木を伐採していました。
関川村役場 市井謙太郎 主幹
「9月上旬時点ではまだクマ数頭の目撃だったんですが10月の時に急激にクマの村全体においても出没が増加してきたもので10月に入りまして村から(国に)要望したものです」
■“朝夕の外出自粛”求められる地域も
3連休なのに自由に過ごせない街もありました。
「こちらは南砺市です。クマの目撃・痕跡情報が相次いでいます」
富山県・南砺市では3日まで「朝夕の不要不急の外出」や「単独での野外活動」の自粛を呼びかけています。先月26日。70代女性がカキの実を採っていたところクマに襲われケガをするなど市内でクマの目撃情報が相次いでいます。これは同じ先月26日に撮影されたドライブレコーダーの映像。
クマと遭遇した女性
「あ、クマや、クマおった」
車を車庫にいれずにバック。すると、車庫の横にある茂みから1頭のクマが…そのまま道路を横切って歩いていきました。動画を提供してくれた女性はクマよけスプレーを買いに行った帰りの出来事だったといいます。
クマと遭遇した女性
「怖かったというのが一番で家の中にも子どもがいたので子どもが外に出てこないか、とても不安で外には出ないようにと、すぐ連絡をしました」
市内にある屋内スポーツ施設で出会ったのは、2日に屋外でソフトテニスの試合がある女子中学生。
翌日にソフトテニスの試合がある女子中学生
「(施設の)中のコートは人工芝で造られているので(ボールの)バウンドとかは(施設の)中の方がいいってこともあるけど、やっぱり大会は外だから」
父親「風も吹くしね」
施設には、クマ対策として入り口に犬の鳴き声と銃声のような音が出るセンサーを設置。利用には送り迎えもしてもらうよう徹底しています。
スポーツ施設の館長
「本来であれば、当然外で練習してこの風の中、吹いている中でやった方が絶対にいいと思うんですけれどもやっぱりこれだけクマがこれだけ頻繁に出没するとそうも言っていられないかなと思います」
◇
高島彩キャスター:
収まる気配のないクマ被害に対して政府も対策に本腰を入れ始めています。自衛隊による『箱わな』の運搬支援なども始まる見通しですが、他にはどんな動きがあるのでしょうか?
板倉朋希アナウンサー:
今週開かれたクマ被害の対策を話し合う閣僚会議を受けて、赤間国家公安委員長は、警察がライフル銃を使ったクマの駆除に乗り出す方針を示しました。
高島彩キャスター:
具体的な運用はこれからだと思いますが、どんな部署が担当して、どういった課題が考えられるのでしょうか?
板倉朋希アナウンサー:
元機動隊員で特殊部隊SATにも所属していた伊藤鋼一さんにうかがったところ、「警察でライフル銃を持っているのは機動隊内の銃器対策部隊で、日頃から100メートルの距離から5センチほどの的を撃ちぬく訓練をしている」ということです。ただ「クマの駆除に対応するためにはクマの生態や急所などの専門知識が必要で、高い射撃技術を持つSATによる集中的な訓練も想定され、実際の運用までには1~2週間はかかるのではないか」ということでした。また、銃器対策部隊は全国でおよそ2100人いるものの「ライフルを扱える隊員は限られていて、頻繁な出動要請には対応が難しく効果に関しては未知数」と指摘しています。
高島彩キャスター:
政府としても、クマ被害対策に本腰を入れているということですが、柳澤さんどうご覧になっていますか?
ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
人的被害をこれ以上増やさないためにも、駆除対策は必要だと思うんです。でも、それだけでは決して十分ではない、根本的な解決になっていないのではないかとの指摘もあるんですよね。クマが生息している自然の生態系が壊れてしまっているのではないか。そうすると専門家が指摘しているように、人間とクマが生息している地域をゾーニング、分離するということが必要になってくると思うんですが、そのためには人も物もお金も必要。でも山間地帯ですから、なかなか思うようにはいかない。かといって手をこまねいているわけにいきませんから、ここはやはり政府が司令塔となって、待ったなしで次の手を打つ、そういう段階に来てると思いますね
高島彩キャスター:
駆除というのは対症療法にすぎないわけですからね。緩衝地帯を作る、ゾーニングをする、など先を見据えた対策を同時に進めていく必要性を感じますね。









