【独自】弁護団が語る山上被告…3年間で見えてきた『地獄』安倍元総理銃撃の初公判

【独自】弁護団が語る山上被告…3年間で見えてきた『地獄』安倍元総理銃撃の初公判

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安倍晋三元総理大臣が銃撃され亡くなった事件から約3年3カ月。28日から始まった裁判で、山上徹也被告(45)は「すべて事実です」と話し、殺人の罪を認めました。

複数の警備員が法廷内で警戒にあたるなど、異例の厳戒態勢のなか開かれた初公判。

山上被告は、裁判長から名前を尋ねられると、消え入るような声で「山上徹也です」と答えました。

田中伸一裁判長
「マイクに近づいて話してください。住所は不定ですか」
山上徹也被告
「はい」
田中伸一裁判長
「現在は無職ですか」
山上徹也被告
「はい」

認否を問われると、こう答えました。

山上徹也被告
「すべて事実です。私がしたことで間違いないです」

山上被告は、2022年7月、奈良市で、参議院選挙の応援演説中だった安倍元総理を手製の銃で殺害したとして、殺人や銃刀法違反などの罪に問われています。

事件が起きたのは演説が始まってすぐのこと。山上被告は、その場ですぐに取り押さえられ、現行犯逮捕されました。手には、使用された自作のパイプ銃を持っていました。

見えてきた動機も、社会に大きな波紋を広げました。

山上徹也被告(捜査段階の供述から)
「旧統一教会トップが日本に来たときに、殺そうと思っていたが、来ないのであきらめた。関係していると思い、安倍元総理を狙った」

山上被告が、旧統一教会と安倍元総理の関係性を事件の動機に上げたことで注目され、高額献金は、国会でも問題になり、今年3月には、東京地裁が解散命令を決定しました。

この裁判での主な争点の1つは、情状面で家庭状況を、どの程度、考慮するのかです。

検察側の冒頭陳述によりますと、山上被告が4歳のときに父親が自殺し、その後、母親が旧統一教会に多額の献金を行って家庭が崩壊。兄の自殺をきっかけに、教団への恨みを募らせたと説明としたうえで、こう指摘しました。

検察側
「元総理大臣の安倍氏を応援演説中に、白昼堂々、殺害したことは、我が国の戦後史において、前例を見ない極めて重大な結果をもたらした」

山上被告は、この3年余り、何を考えてきたのでしょうか。

事件後、最も長く接してきた4人の弁護団を取材しました。

弁護団の一人、松本恒平弁護士が、初めて山上被告と対面したのは、事件の2日後でした。

松本恒平弁護士
「行ったときにもういた、接見室の真ん中に。入ってきたこっちを、ちらっと見はするけど、目をすぐ伏せて、問いかけにも必要なことを、言葉少なに答える人という感じだった」

3年間で向き合ったのは、100時間を超えます。
拘置所での接見で、山上被告は、自らニュースの話題を持ち出すこともあり、旧統一教会の状況について、質問してきたこともあるといいます。

藤本卓司弁護士
「一番、大きな動きとしては、解散請求。もちろん強い関心を示していた」

こうした接見で多くを占めたのは、家族をめぐる話でした。
母親の入信に最も反発していた兄が自殺したことを「自分が殺したようなものだ」とし、自分を責めていたといいます。そして、あるとき、接見のなかで「家庭が地獄になった」と話しました。

藤本卓司弁護士
「常に家族、家の中で、いろんないさかいが起こる。彼のお兄さんは、母親に対して激しく反発する。家族の意思疎通が、だんだん取れなくなっていく。彼の言葉で言うと『地獄』だと言う」

しかし、弁護団が動機の核心に迫ると。

藤本卓司弁護士
「『あなたは、こういう気持ちで犯行を起こした』と聞くが、あまり一面的な聞き方をすると『それは違う』という反発もあるし、それについて、深く突っ込んでやりとりするのは、あまり積極的ではない。頭から拒否するわけではないが、『どんな気持ちで事件をやったのか』と言われて、そう簡単に答えられないんだろうと思う。(Q.被告の中でも適切な言葉を探すには時間が)かかると思いますね。いまも探していると思う」

事件から間もないころ、山上被告は、母親に宛てて1通の手紙を書いたといいます。そこには「統一教会にいくら献金したのか」と記されていたそうです。

しかし、母親からは、教団をかばうような内容で、納得できない返信。山上被告は、母親が拘置所に来ても面会を拒絶し、その後、送られてきた手紙も受け取ることはありませんでした。

ところが、初公判が迫った約2カ月前、母親から届いた手紙に山上被告は目を通したといいます。

松本恒平弁護士
「ひとつシンプルなところで、彼なりの怒りを感じます。だけど、そこにとどまらないかな。特に、母親に対する感情は、一番、複雑なところ。どう彼自身が言語化するかは、まさに裁判の中で明らかになる重要な点」

28日の初公判。

弁護側は「山上被告の生まれ育った環境は児童虐待にあたる。刑の重さを判断する際に十分に考慮されるべきだ」などと情状酌量を求めました。

一方、検察側は。

検察側
「不遇な生い立ちでも、犯罪をしない人もたくさんいる。犯行当時、40代の社会人で規範意識もあるのに、犯行を踏みとどまることができなかった。大きく刑を減軽する事情ではない。母が旧統一教会に傾倒したことや、被告の生い立ちに被害者(安倍元総理)は何ら関係なく、旧統一教会への注目を集め、批判を高めるためだけに殺害を企てた。計画性・危険性の高さは、目を見張るものがある」