議員定数削減は衆院比例で調整 「死活問題」中小政党で高まる危機感

議員定数削減は衆院比例で調整 「死活問題」中小政党で高まる危機感

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連立協議を行っている自民党と日本維新の会が、20日に連立政権の合意書に署名する見通しであることが分かりました。一方、維新が絶対条件としている「議員定数の削減」をめぐって、少数政党は「死活問題だ」として反発を強めています。

■維新・自民 連立合意書に署名へ

自民と維新の連立協議が大きく動きました。関係者によりますと、両党は20日に連立政権の合意書に署名する見通しです。

維新からは当面、入閣せず、閣外協力の形を取ることになります。一方、来週火曜の臨時国会の総理大臣指名選挙で、高市総裁が選ばれた場合、総理補佐官に、維新の遠藤国対委員長を起用する見通しであることがわかりました。官邸と国会のパイプ役を担う狙いがあるとみられます。

■議員定数削減は衆院比例で調整

維新が連立の絶対条件とする議員定数削減の内容の一部が明らかになりました。維新が求める削減対象は、“衆議院の比例代表”で、自民党執行部は受け入れる方針を示しているとのことです。衆議院の小選挙区や参議院については対象にしない見通しです。

衆議院議員の定数は465人。うち289人が小選挙区の選出議員で、176人が比例代表の選出議員です。この176人から、吉村氏がいう50人ほどが削減されるのでしょうか。

公明党 竹内譲衆議院議員
「民意をどう反映していくかという重要な問題ですので、全党が入ってしっかりとじっくりと議論していくべき問題だと思う」

これまで、衆議院の比例近畿ブロックで6回連続で当選してきた、公明党の現職、竹内議員。

公明党 竹内譲衆議院議員
「小選挙区に勝つかどうかは、51対49で決まるわけですよね。そうするとこの小選挙区制度というのは、多くの民意(49)を反映しないという制度ですから、どうしてもやっぱり比例区というのは必要。非常に拙速に、一部の党だけで決めていくことはよろしくない」

比例区選出の議員が多い公明党などへの影響は深刻です。今回の対象とされる、衆議院比例代表の各政党の議席数を見てみます。小選挙区に比べ、比例区により多く依存している政党は、公明党や共産党、国民民主党、れいわ、参政党など、中小規模の政党が多いことが分かります。

社民党 福島瑞穂党首
「社民党も本当に死活問題です。“身を切る改革”というけども、“民主主義を切る改革”です」。

福島党首は、参議院の比例で選出されているため今回の対象ではありませんが、少数政党の声が消えてしまうのではと、危機感を高めます。

■維新のおひざ元 大阪では期待と不安

急転直下の自民と維新の接近に、これまで自民と対立してきた、維新の地元、大阪は混乱しています。

大阪維新の会 佐竹りほ大阪市議
「(自民と)連立っていう言葉が、維新の政党に降りかかってくるとも思ってなかったので、やっぱり驚きっていうのが一番大きかったですね」

維新の佐竹りほ市議。驚くのも無理はありません。

日本維新の会 馬場伸幸前代表(去年10月)
「自民党は政治とお金の問題、全然反省していません。約束したことはやらない」

去年の衆院選での当時の馬場代表の応援演説。自民党の政治姿勢を痛烈に批判していました。結果、維新は大阪の19の選挙区で全勝し、自民・公明は全敗。衆議院で少数与党となります。この時も、自公との連立がささやかれました。

日本維新の会 馬場伸幸前代表(去年10月)
「連立政権入りというのは、今のところ全く考えていません」

さらに、7月の参院選で、自民公明の与党が大敗した後も。

日本維新の会 吉村洋文代表(7月)
「現時点において自民党と連立することは考えていない」

大阪維新の会 佐竹りほ大阪市議
「連立協定での選挙協力とかになりますと、そのまま私たちがしっかりとした地盤を築いていくことができるのかなと思う反面で、地方の方々は少し不安になられる側面もあるのかなと。(一方で)これを機に、自分たちの政策の実現っていうのを改革の推進力として捉えることができる」

維新支持者(50代)
「期待もありますけど、もしかしたら(自民に)飲み込まれてしまって、(維新が)大きく変わってしまう可能性があるかもしれない」

■維新と長年対立の大阪自民 戸惑いと期待

一方の自民党。きょう、大阪府連の役員会が開かれました。

自民党 占部走馬大阪府議
「議題は、公明党との連立解消についてと、維新との連立の話が出てます」

府議を三期務める自民党の占部議員。

自民党 占部走馬大阪府議
「これまで公明党と、割と政策が違うのに連立をしていたのと比べると、もともと維新は自民党から維新に行った人が多くて、政策が近いという意味では、もはや自維連立の方が健全な連立じゃないかと」

役員会には、20人ほどの府議会や市議会の議員らが参加しました。

自民党 占部走馬大阪府議
「市議会なんかは特に自民党、公明党で過半数をもって、市長を支えるというパターンが多いので、これが自公連立がなくなって、例えば自維連立となったときに、地方としてどう今後対応していくのかというところとか不明確なところが多いので、現状ここで物事を決めるというのは難しい」

厳しい意見も。

自民党 須田旭大阪府議
「大阪では(選挙で)本当にたくさんの先輩仲間が涙を流してきましたので、今のところは、本当に一緒になって選挙を応援し合う関係だというのは、想像が今はできていません。府民の皆さんにも今では戸惑いの方が多いと思います。(維新は)もともとの発祥が自由民主党というところもありますので、連携ができるところ、そしてまたしっかり選択肢を示していくところが、より明確にこれから議論していかなくてはならないのかなと思っています」

専門家は、自民党と連立を組むリスクについて指摘します。

維新に詳しい関西学院大学 善教将大教授
「連立政権を組んだ時に規模の小さな政党が支持を伸ばすという傾向は一般的には観測されていなくて、どちらかというとどんどん規模が小さくなっていくと。埋没していくという傾向が観察されます。それは最悪のケースで行くと、党の消滅のリスクにつながるという話ですので、デメリットなんだろうとは考えています」

■議員定数を連立条件に 維新の思惑は

高島彩キャスター
「日本維新の会が突然連立の条件として議員定数の削減を掲げたのはなぜなのか?ここからは、テレビ朝日の山本政治部長に伺います。山本さんよろしくお願いいたします。議員定数の削減を絶対条件として出した背景というのはどのように思われますか?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「突然出てきましたよね。自民党内からも想定外だったと受け止められているんですね。この背景ですが、自民党は企業団体献金の制限や禁止、これは党の存亡にかかわりますので、透明性を図ることでしか譲ることはできなかったんですね。公明党が連立を離脱する決定的な理由にもなったわけです。維新としては「身を切る改革」を進めなければ自民党の延命に力を貸すだけだと。単に補完勢力なんじゃないかという批判にまさに船出からさらされることになるわけです。そう見られないためにも絶対条件にする必要が背景にあった。その上で維新の幹部によりますと、国民のほとんどは献金をしていませんので、政治改革というならば議員定数の削減のほうが分かりやすいんじゃないかと、優先順位を変えた狙いを解説しています。ただ野党からは、企業団体献金の「目隠し」「すり替え」だという批判も出ているんですね」

高島彩キャスター
「議員定数削減に関しては、衆議院の比例が対象になるという情報は入っていますけれども、どういう影響があるんでしょうか?」

板倉朋希アナウンサー
「拓殖大学の河村教授に伺いました。『比例代表を減らすと少数政党の議員が減って、結果的に有権者の多様な意見を反映しにくい国会となってしまう』と指摘しています」

高島彩キャスター
「多様な意見を反映しにくい国会になるのは問題だと思いますが、柳澤さんはどうご覧になりますか?」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「日本の最近の政治は、複数の政党「多党制の時代」といわれていました。比例に大きく依存している少数政党が議席をなくしてしまうと日本の政治そのものが大きく変わるきっかけにもなりかねないということはないんでしょうか?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「その可能性はあると思います。比例を削減すると、基盤の強い大政党に比べて、弱い少数政党にダイレクトで影響が出てくると思います。そういう意味では政界の構図が変わる可能性もあると思います」

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「少数政党だけではなく、公明党も議席数の全体のうち、比例が占める割合が結構多いんです。国民民主党もそうですが、少数政党に限った話じゃないですよね?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「公明党はけっこう影響が大きいと思います。今回の連立の離脱で、小選挙区の擁立を諦めて比例で戦う方針を決めているので影響は大きいと思います。公明党からは『まさに宣戦布告だ』という声も聞こえてきています」

■定数削減 実現の可能性は?

高島彩キャスター
「反発も多いということで、実現の可能性はどうなのかというところもあります。維新は次の臨時国会で議員定数の削減に関する法案を出したいとしていますが、どうでしょうか?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「なかなか難しいと思います。次の臨時国会は物価高にどう対応するのか。その裏づけとなる補正予算の編成が最優先課題になってきます。総理の指名選挙がどんどん後ろ倒しになっていく中で、時間的な制約も大きな障害になってきますね。実は維新の中からでさえも、年内の臨時国会中に法案を提出して成立させるのは、さすがに言いすぎたのではないかと、法案が通らなかったら意味がないという声も上がってきていますから、ここは今後トーンダウンする可能性も出てくると思います」

高島彩キャスター
「国民民主党がどう出るかというところにかかってくるのかなとも思いますがそのあたりどうでしょうか?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「玉木さんは賛成する意向を示しているんですね。真意はちょっとまだ分からないんですが、国民にもかなり影響が出る可能性がありますので。ただこの流れの中で政治改革に後ろ向きだと見られないように先手を打って、前向きな姿勢をアピールしたんじゃないかと思います」

高島彩キャスター
「これまで議員定数削減をやりたがっていた立憲の野田さんは今どういった立場を見せているんでしょうか?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「野田さん総理時代、旗振り役でしたね。安倍元総理に約束を反故にされたとかなり強く批判していました。ただ今回は今の自民と維新主導の流れには強い警戒感を持っているんです。維新は絶対にだまされると、ここまで言ってるんですね。背景には立憲と公明の最近の接近も1つの理由としてあるんだろうと思いますね。公明は大反対の立場ですから、そこに気を遣う必要もあるわけです。ただこれまで野田さんは、旗振り役じゃなかったけど、過去との整合性を問われる可能性も出てきますね」

■なぜ入閣せず閣外協力?

ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「ここに来て自民と維新の連立なんですけれども、閣僚を出さずに閣外協力という方向に舵を切っているというふうに伝えられてますけれども、これはなぜなんでしょう?なぜ閣僚を出さないんでしょう?」

テレビ朝日 山本志門政治部長
「もともと実はですね、高市さんは維新に閣僚ポストの数を公明以上に渡したいと、副大臣や政務官人事でもどんどん政府の中に入って欲しいと、こういった打診をしていたんですね。維新の中には政府の中に入って政策をぐいぐい進めていった方が良いのではないかという考え方もあったようなんです。ただやはり、政府で仕事をしたことがない人がほとんどですので、取り込まれてしまう恐れもあるわけですね。ここは人材不足を認めていました。年内は閣外協力という形で自民党の出方について様子見をした上で、年明け以降閣僚を送って、より強い協力関係を築いていくのか、今後検討していくんだろうと思います」

高島彩キャスター
「その他、物価高対策ですとか社会保障など本当に私たちの暮らしに関わる課題というのも気になります。総理指名選挙は来週火曜日に行われる予定です」