復興が進む首里城で今、何が行われているのか、その軌跡を追う「復興のキセキ」です。
2019年10月31日未明、首里城を襲った火災で正殿や北殿など9つの施設が焼失しました。しかし、平成の復元の時点では、防火対策について、明確な義務付けはされていませんでした。今回の「復興のキセキ」では、火災の教訓を踏まえて、文化財のなかで防災のトップを走る存在を目指して取り組んできた2人の専門家にスポットを当てます。
2019年10月、大火に見舞われた首里城。正殿をはじめ多くの建物が焼失しました。復元に向けた動きは、発生から2か月後、「首里城復元検討委員会」を国が設置し、木材や彫刻など技術的な側面を検討・指導するなかで一番に掲げられたのは「防火・防災対策」でした
早稲田大学 工学博士 長谷見雄二名誉教授「これだけ大きな火事になってしまったということに関しては、建物の特性とそれからやっぱり火事に弱い建物なんですよ」
こう話すのは委員のメンバーで、木造建築の防耐火基準や都市防災に詳しい、建築学者の長谷見雄二さんです。首里城火災で正殿やまわりの施設が全焼したのは建物の特性と木造建築だったこと、とくに正殿は本土の城が役割として持っている要塞ではなく、宮殿に近い建物であると話します。
早稲田大学 工学博士 長谷見雄二名誉教授「首里城はもう正殿はどちらかと言えば宮殿に近いんだと思います。あの姫路城だとか本土の城って言われてるものは要塞なので攻められても最後まですごい守り切るっていう。そういうためのもので、だから外側はほぼ漆喰で固められているとで建物の中もですね。天井が非常に高いんですね。あの1階特に首里城は2階ですけど、1階なんかは天井 2.4m ぐらいっていう住宅ぐらいですよ。火事でその初期消火に失敗すると、もうどんどん広がっちゃうんですね。そこはだいぶ違うところですね」
2000年に世界文化遺産に登録された首里城。しかし、登録されたのは地下にある遺構部分で、復元された正殿は重要文化財にも指定されませんでした。そのため、木造建築でありながら文化財保護法や消防法に基づく防災対策は義務付けられておらす、また正殿内部の景観を損ねるとしてスプリンクラーの設置はされてませんでした。
しかし、2019年4月のフランス・ノートルダム大聖堂の火災に、10月の首里城火災と相次ぐ文化財の焼失で文化庁は「国宝・重要文化財 防火対策ガイドライン」を改定。次世代に継承するため自動火災報知器やスプリンクラーなどの機器の設置を促し、首里城復元技術検討委員会でも最先端の設備で防災・防火対策に乗り出します。
早稲田大学 工学博士 長谷見雄二名誉教授「火災を早く感知するってことに関しては感知機を一新する煙式の感知機とそれから炎を感じる感知器ですね。内部に関してはスプリンクラーがあり正殿の周りにはドレンチャーって言ってスプリンクラーをつけるようなものなんですけど、放水してそれであの壁を濡らして、それであの類焼しないようにする」
令和の復元では、建物内で火が出た時に熱を感知して自動で散水し火を消し止める「スプリンクラー」と建物外に水の幕を作り隣の建物から火をもらわないようにする「ドレンチャー」で初期消火の役目を果たします。いずれの設備も景観を損なわないよう装飾に馴染む工夫で設置するとしています。
また正殿周りでは、城壁と城郭内との動線を確保し、新たに防火・消火水槽の設置や城郭内の各所に高性能な消火栓を配置します。
早稲田大学 工学博士 長谷見雄二名誉教授「文化財の防災としては、あの日本のみならその世界でもトップレベルのことをやっている、あとはこれをきちんと維持していくということが課題です」
そしてもう一人の委員で、火災安全工学や防災まちづくりを専門家としている関澤愛さんは、火災時は初動が大事だと話します。
日本防火技術者協会 関澤愛 理事長「二度とああいう火災で正殿失わないためには、その早期発見して消防来るの待つんじゃなくて。管理者自身が自衛消防隊で初期消火をする。そういう設備と体制を取るべきだと」
2019年の火災では、煙により初期消火が間に合わず、火だねの特定に時間がかかりました。その教訓を踏まえ、令和の復元では火災の原因が早い段階で検知できる煙感知器の配置が強化されました。
日本防火技術者協会 関澤愛 理事長「煙感知器にすれば防犯センサーよりも先にあれも熱ですから、煙で感知するし(建物)中に煙が入って充満して入っていけない時に、初期消火設備があったとしても、熱ではなくて煙で侵入できないので、そういう時はスプリンクラーで自動消火を」
関澤さんは初期消火の際に、通報担当や消火担当、避難誘導担当など役割分担を決めるのではなく全ての人が習熟できる環境が1番のポイントと話します。
日本防火技術者協会 関澤愛 理事長「紙の上での役割分担そうではなくて、いつ何時誰が最初に気がついて、例えば屋内消火栓のホース引っ張り出して消すかもしれない。 誰もが1番最初に気づいて近くにいる人がそれやんないと初期消火間に合わないんで、全員に習熟させた方がいいと」
2人の専門家からの提言を受け、沖縄美ら島財団は県や国の協力のもと毎月1回、首里城公園内で防災に関する訓練を行っています。
訓練 警備員「火事です」「火事です火事です逃げて下さい」
訓練 受付け「こちらに避難してください。お客様火事ですこちらに避難してください」
この日の訓練は、奉神門1階で火災が発生したという想定で行われ園内の警備員や案内員など総勢80人が初期消火にあたりました。
沖縄美ら島財団 本部 防災危機管理室 屋嘉比勝室長「実際火災が起こった場合にですね。人命を安全に確保する。同時にですね。被害を最小限に留める。これがしっかりできるようにま訓練を毎月繰り返しています」
沖縄美ら島財団で防災危機管理室の屋嘉比勝さん。元那覇消防本部の職員で、訓練を通して、職員一人ひとりがオールラウンドにできる体制を心がけて指導していると話します。
屋嘉比勝さん「基本的にはその場その場の役割っていうのがま必要だと思ってますけど、職員 1人ひとりが、全ての例えば、初期消火もそうだったり通報・避難、誘導、それがオールラウンドにできるようなこういった体制にはしていきたい」
また首里城管理センターにある自動火災報知設備を活用して初期消火や避難誘導など現場で対応する職員への指示やモニターの見方などの訓練も実施しています。
屋嘉比勝さん「いくら設備が完璧でも、いくつもあっても使える人がいなったら本当に役に立たないものですから、そこを意識をどう高めていくか、スキル・知識もそうですけどどう高めていくかっていうのが、我々の仕事なのでそういった部分で。個々の職員の気持ちを高めていくスキルを高めていくそれが私の仕事です」
訓練に参加した職員「訓練を重ねることで練度を挙げて安全な管理を進めていくことが重要だと思っています」
訓練に参加した職員「日々同じ火災を起こさないために、訓練と鍛錬を重ねております安心安全を提供できる場所、そして歴史文化を体感できる場所として来ていただけるように努めます」
首里城を二度と失わないために、様々な対策が講じられた今回の復元工事。防災の専門家らも正殿が文化財のなかで、防災のトップを走る存在であって欲しいと願っています。
早稲田大学 工学博士 長谷見雄二名誉教授「いま正殿だけですけど、周りの建物できてくると、昔の琉球王朝時代の状態がこう見れるということになります。沖縄のみならず、いやこの世界中にありませんので、やっぱりあのそういうみんなに自慢ができるのとしてずっと残って欲しい」
日本防火技術者協会 関澤愛 理事長「トップランナーとして誇りを持って全国のモデルの首里城として正殿が立派に復興したと。文化財防災の立地点がこう変わった、ものすごい画期的な年なんですよ。その代表が理想的なモデルが私はね首里城なんですよ』












































