衆院選での圧勝によって、高市政権は当面、大規模な国政選挙に直面しない安定した政治日程を手にした。自民党総裁としての任期は2027年9月末まで続き、参議院議員の任期満了は2028年7月25日。2027年春に統一地方選を挟むものの、国政選挙日程に大きな制約を受けない政治環境の中で、看板政策である消費税減税の実現に向けた制度設計が本格化する。高市総理は、衆院選翌日となる2月9日の記者会見で、「飲食料品の消費税を2年間ゼロにする」との公約について、「給付付き税額控除」導入までのつなぎ措置と位置付けた上で、「夏前には国民会議での中間とりまとめを出したい」と述べ、議論を進める考えを示した。これに先立つ1月26日、日本記者クラブ主催の党首討論でも、高市総理は、「内閣総理大臣としての希望は、できたら2026年度内を目指していきたい」と語り、早期実施への意欲をにじませている。
高市政権は特別国会(2月18日召集)後、できる限り早期に与野党や有識者による「国民会議」を設置し、6月中に中間とりまとめを行う方針。その後、今秋の臨時国会で税制改正法案を提出する可能性も出てくる。高市総理は、2026年度内に消費税減税を実現するとう意欲を示している。また、制度設計には慎重論もあり、1月26日の日本記者クラブ主催による党首討論で、高市総理は、「税率、実施時期、外食産業への影響も含めて諸課題は議論しなければいけない。大事な話ですから国民会議でしっかり議論しましょう」と述べ、拙速な決定は避ける姿勢を示した。実務面の課題も大きい。高市総理は、物価高対策の一環として検討が進む消費税減税をめぐり、外食を含めた一律の取り扱いとする方向性に言及した。高市総理は1月19日の衆院解散表明に際し、現行制度について「『テイクアウトかイートインか』という複雑な線引きは、現場の皆様に多大な負担を強いている」と指摘。そのうえで、今回の措置では制度を一律に整理し、「国民の皆様がどこで食事をされても、等しく物価高対策の恩恵を受けられる仕組みを目指す」と述べ、国民が場所を問わず減税の恩恵を受けられる仕組みの構築を目指す考えを示した。
政府・与党内で食料品の消費税減税や廃止を求める議論が強まる中、外食産業からは先行きへの懸念の声が上がっている。店内飲食に適用される消費税10%と、弁当や総菜など持ち帰り食品の税率が引き下げられた場合の価格差が、消費行動に影響を与えかねないとの見方がある。1月30日の朝日新聞によると、外食大手の関係者は、「安いものに流れる、デフレマインドが復活するのではないか」と指摘。価格志向が強まれば、家庭での食事や持ち帰り需要が増え、外食の利用が減少する可能性があると警戒する。
高市政権が打ち出した「飲食料品の消費税2年間ゼロ」構想の実現に向けて、最大の焦点となるのが財源の確保。税率をゼロ%とした場合、年間で約5兆円規模の財源が必要とされる。高市総理は1月25日の党首討論(フジテレビ「日曜報道THE PRIME」)で、食料品に限った2年間の時限措置としたうえで、「税外収入も含めて、租税特別措置や補助金の見直しで、1年で4兆8000億円は出る。2年分も出ると確信している」と述べ、特例公債(赤字国債)に頼らない方針を明確にした。具体的な財源候補として挙がるのが、法人向けの租税特別措置で、2023年度の規模は約2兆9000億円にのぼる。また、2024年度の産業向け補助金は約4兆7000億円規模に。加えて、税外収入の活用も浮上している。外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金で、2024年度は約5兆3000億円に達する見込みとされる。さらに、外為特会には為替差益などによる含み益が約50兆円規模で存在するとの指摘がある。高市総理は衆院選期間中、消費税減税への言及を控えていた。1月19日の「衆議院解散」表明会見では、「消費税減税は自民と維新の連立政権合意書に書いた政策であり、私自身の悲願でもあった」と述べつつも、具体的な減税策には踏み込まなかった。
日本の長期金利上昇をめぐり、米国側が日本による財政政策への影響に懸念を示す場面がみられた。与野党双方から消費税減税に言及が相次ぐ中、市場では財政悪化への警戒感が強まった。ベッセント米財務長官は1月21日、日本の経済政策担当部局と連絡を取り合っていることを明らかにした上で、「日本の状況と切り離して考えるのは非常に難しい。彼らは市場を落ち着かせるための発言をし始めるだろう」と述べ、日本側の対応に期待を示した。1月20日には、日本の長期金利が上昇。これと歩調を合わせる形で米国の債券市場でも長期金利が上昇した。背景には、日本の財政状況そのものへの懸念がある。財務省によると、国の借金にあたる国債や借入金などを合わせた政府債務残高は、2025年末時点で1342兆1720億円と過去最大を更新した。前年からは約24兆5000億円増加しており、債務の累増傾向は依然として続いている。
★ゲスト:久江雅彦(共同通信社編集委員兼論説委員)、今野忍(政治ジャーナリスト/元朝日新聞記者)
★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信社論説委員長)







































