自宅に火を放って高齢の父親を殺害したなどの罪に問われた男の裁判で9日午後、無罪判決が言い渡されました。
■“寝たきり父”放火・殺害裁判
被告らを知る人
「介護していたみたい。父親が寝たきりで生活に困ってたみたい」
「(Q.大変だったというのは寝たきりで?)そうですね。介護していたみたい」
おととし1月、神奈川県藤沢市にあるマンション2階の1室が燃え、高橋康春さん(87)が死亡しました。
この事件で、自宅に火を付けて父親を殺害したなどの罪で逮捕・起訴されていたのが息子の高橋正雄被告(61)です。
これまでの裁判では、被告が父親の介護とともに生活に困窮していく様子を検察側が主張していました。
被告らを知る人
「(Q.家族は?)4人かな。息子さんと女の子、両親がいて。私の記憶では4人(家族)」
近隣住民が話すように現場には以前、被告とその両親、妹の4人が住んでいました。
ただ、2022年に妹が死亡し、母親は特別養護老人ホームに入所します。ここから被告と父親は2人で暮らし始めますが…。
まもなくして父親が意識障害を起こし、寝たきり状態になったといいます。
父親は7段階ある要介護認定のうち最も重い「要介護5」でした。
その生活の厳しさについて検察側が訴えてきたのは…。
検察側
「被害者は寝たきりの状態でヘルパーによる訪問看護等のサービスが開始された。被告人自身は収入がなく借金があり、被害者及び母親の年金等によって生活していた」
事件が起きる数カ月前の夏から被告はエアコンを使わず、ガスの契約も解約していたといいます。
検察側
「被告が『介護が大変』などと言うようになり、訪問看護師から短時間の施設利用を提案されたが『金が掛かる』と断っていた」
被告の携帯電話は料金滞納によって解約されます。さらに、訪問看護師が訪れている最中に電気が止まったということです。
電気、ガス、携帯電話、最終的には3つのライフラインが断たれていました。
近隣住民
「(Q.2人の収入源どうやって暮らしていた?)多分、父の年金だと思う。息子は仕事していなかったみたい」
また、被告は2度にわたって店で万引きをしたとされています。盗んだとされるのは総菜などの食料品やウイスキー、防寒用の手袋や乾電池などでした。
現場では3カ所が特に強く燃えていたといい、1カ所は洋室、あとの2カ所は6畳の和室内で、そのうちの1カ所は父親の寝ている介護ベッド付近だったといいます。
被告は出火当時、マンションの前に立って火災の様子を見ていたところを警察官に声を掛けられます。そのまま立ち去ろうとした際に職務質問を受け…。
高橋正雄被告(職務質問に対し)
「燃えているのは私の家です。父は家にいると思います」
これまで検察側は父親の介護をしていた息子が現実逃避のために殺人、放火をしたと主張してきましたが…。
■息子に“放火と殺人”無罪判決
今月9日に裁判所が言い渡したのは無罪でした。裁判長がその判決を下した理由は…。
自宅に放火し、寝たきりの父親を殺害した罪などに問われた息子は火災の原因について、このように主張してきました。
高橋正雄被告
「十数本の短いろうそくを皿の上に横にして置き、それをリビングに置いて火を付けた。本を片付けていたところ、気が付いた時には胸の高さまで燃え上がっていた。ろうそくの火が何らかの原因で周辺のものに引火したのだと思う」
逮捕直後には被告は容疑を認めていたものの、その後、否認に転じます。弁護側は当初、容疑を認めたのはうつ病などの影響としていました。
そうしたなか、横浜地裁が9日に下した判決は…。
殺人と放火の罪に関して高橋被告に言い渡されたのは無罪判決でした。有罪となったのは窃盗のみで懲役1年8カ月、執行猶予4年となりました。
殺人と放火に関する無罪。判決の理由について裁判長は…。
裁判長
「警察が声を掛けて逃げたことについて、何らやましいことがなかったとしても警察を避けることは不自然なものではなく、放火したとは認められない。何らかの形で火を使い、適切に使えなかった可能性は否定できない。不適切に扱った火が本件火災が発生した原因とは否定できない」
「火災があったのは被告の何らかの行為があり、実父がこれによって亡くなったことは認めるが、実父を殺そうとしたことについては疑いが残る。犯罪の証拠がないことから無罪の言い渡しをする」
裁判所は放火には合理的な疑いが残るとし、無罪判決を言い渡しました。







































