里親制度から考える家族の在り方とは

様々な事情で実の親の元で暮らせなくなった子どもを代わりに育てる「里親制度」というものがあります。今の法律では実の親が引き取りたいと申し出ると、子どもが行きたくなくても里親から離れざるを得ない現状があります。果たして子どもはそれで幸せなのか今の仕組みの見直しを考えさせられるような出来事が起きていました。

車内から差し出された手を振り払い、車に乗ることを拒もうとする幼女。

小橋川久美子さん「みんなの心を傷つけてまで、それほど血のつながりが大事なんでしょうか」

しがみつく子どもを車に乗せ泣き崩れる小橋川久美子さん。生後2カ月だった女の子Hさんを里子として、2016年に引き取って育ててきました。

小橋川さん一家は夫の学さんと小学3年生の姉の4人で、5年以上同じ屋根の下で過ごしてきました。今年の正月には姉妹お揃いの格好で神社に初詣に行きました。

小橋川久美子さん「(Q:初詣何をお願いしたの?)ママが良いってお祈りしたそうです」

甘えん坊で久美子さんにべったりなHさんは今5歳、天真爛漫で絵をかくことが大好きです。4人で過ごす穏やかな正月。しかし、それも今年が最後となりました。

親権者にあたる実の母親がHさんを自分のもとで育てるため、コザ児童相談所に里親委託措置の解除を求めてきたのです。

里親制度とは親の病気や家出など、様々な事情により家庭で暮らせない子どもたちを児童福祉法に基づき、自分の家庭に迎え入れて養育することをいいます。今の法律では里親側は措置の解除を拒否することができません。

そのため、小橋川夫妻は今月4日までにHさんを引き渡さなければいけなくなりました。

里親制度から考える家族の在り方とは

Hさんは喘息を抱えるなど体が弱いだけでなく、複数の病院からは発達障害があるとの診断を受けたといいます。そのため、夫妻は医師の「実の親ではない」と告知する真実告知を今行えば「心身などに悪影響を及ぼす」などという助言から行っていませんでした。

Hさんはいきなり実の親だと思っていた人から引き離される形となりました。

子どもの状態を鑑みず、一時保護をすることや実の親が申し立てると里子を引き渡さなければいけない弱い立場にある里親の現状を知ってもらいたいと夫妻は立ち上がりました。

里親制度から考える家族の在り方とは

県を相手取り裁判を起こしたのです。

小橋川学さん「子どもを無理やり児相の力でねじ伏せて一時保護して、そこに子どもの権利は発生しないのかと本当に思います。子どもの心を壊してはならないと僕は思っています」

里親制度から考える家族の在り方とは

小橋川夫妻は去年12月28日、Hさんの心に悪影響を与えるなどとして、里親委託解除の差し止めを求め、那覇地方裁判所に提訴しました。しかし、結果は「里親には訴えを起こす権利、いわゆる原告適格がない」などとして、異例ともいえる裁判を起こしたその日に申し立てを却下されました。

子どもがどの環境で育つことが適切か、司法に判断を求めたいとして、今月2日に控訴し、裁判を進めています。訴状によりますと、実母は県外に住んでいて、離婚し、経済的な部分も含めて、養育が可能か懸念が残るとしています。

コザ児童相談所は「個別の案件には答えられない」としています。

子どもの精神保健などの分野を研究している沖縄大学の名城教授は、今回の事案は子どもの精神状態に大きな不安を与えてしまった可能性があると指摘します。

里親制度から考える家族の在り方とは

沖縄大学人文学部福祉文化学科・名城健二教授「特定の大人が変わっていくということは、子どもの成長段階にダメージを与えてしまう。子どもの立場でいえば、大人が勝手にやっていることなので、大人が勝手にやっていることで自分の意に介さないことが起きてくる。世の中をどう信じていいかっていうショックがトラウマにならないとは言えない」

名城教授は発達障害の部分の判断は難しいとしながらも、子どもへの真実告知は子どもなりの解釈をするため、一時保護されるよりも前に伝えておくべきだったと話します。

実際に実母はコロナ禍前の2018年ごろから面談を求めていて、コザ児童相談所も真実告知を行うよう求めていました。

学さん「(Hさんは)自閉症スペクトラムという症状があって、事実告知とかにそぐわない心を持っております」

名城教授「4〜5歳ごろの方が子どもの動揺は大きいんですけど、子どもは心の動揺を里親さんにぶちまけることができるので、思春期に入る子どもたちは幼い子のように素直に表現が難しくなってくるので、やっぱり早い方がいいと思います」

名城教授はいま最も重要なことは、Hさんに時間をかけて丁寧に寄り添い、心のケアをしていく必要があると話します。

名城教授「人を信じられないということは、その先に社会を信じられないということに繋がる可能性が高い。何が心配?どうしようかこれから?とかですね、そういう話を丁寧にあと継続的に、それが何カ月続くかわかりませんけど、そういうフォローをしていただきたい」

久美子さん「あの子が今日の夜どうやって過ごすか、この先どうやって過ごすかとかいうことが。言葉にできません」

学さん「このまま心が壊れずに過ごしていけたらいいと、それしか思わない」

法律の中とはいえ翻弄される家族の姿がここにあります。

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