7年前、沖縄市で起きたアメリカ兵によるタクシー強盗傷害事件で、裁判では2800万円あまりの損害賠償の支払いが命じられました。しかし、その後も日米政府の取り決めによって被害者に不利益が生じていることがわかりました。

大矢記者のリポートです。

事件が起きたのは、7年前の沖縄市。明け方、タクシーに乗り込んできたアメリカ兵2人が、突然、運転手の男性を絵羽交い絞めにし、現金およそ3万円の入った財布や、つり銭箱を奪って逃走しました。

裁判では、被告人に対し、懲役2年10か月の実刑判決とおよそ2800万円の損害賠償の支払いが命じられました。ところが、ことし8月・・・

Q+リポート 米兵犯罪の損害賠償の問題点

新垣勉弁護士「(判決から)約5年近く日時が経過したにも関わらず、見舞金さえ支払われないという非常に理不尽な状態が起きていると。」

放置された見舞金の支払い。被害にあった男性は、事件による精神的な後遺症で、働くことが出来ず、経済的にもとても厳しい生活を送っているというのです。それから2か月、新たな展開がありました。

新垣勉弁護士「(今月)17日に突然、沖縄防衛局から電話がありまして、米軍から見舞金を支払うので、示談書にサインをしてほしいと。」

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差し出されたのが、この示談書。アメリカ側が提示した最終的な支払金額は、およそ200万円。裁判所が命じた額の7%です。日米地位協定では、アメリカ兵が公務外に起こした事件や事故の賠償金は、兵士個人に支払う義務があります。しかし、今回のように、兵士に経済的な支払い能力がない場合、被害者は防衛局を通じてアメリカ軍に支払いを請求します。アメリカ軍は独自の査定を行い、「見舞金」という形で支払うことになっています。

新垣勉弁護士「どういう基準で査定をされるのか、全く支払いの基準が公にされていません。」

沖縄防衛局によると、2008年から5年間でアメリカが行った「見舞金」の支払いは、全国で57件で、およそ2億9000万円。そのうちの半分にあたる27件が沖縄での事案ですが、金額はおよそ1000万円。全体のわずか3%です。

日米間の合意はどうなっているのか。外務省のホームページには、60年程前の、日米代表者による合同委員会の取り決めが掲載されていました。損害賠償と慰謝料請求の手続きという項目はありますが、そのあとの文章が「空欄」になっていました。

QABはことし4月、情報公開法に基づいて、外務省にこの「空白」の開示を求めました。その回答は「不開示」。空欄にはそもそも文章など存在しないというのです。

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テレピック吉田敏浩さん「『空白』(の部分)なのですが、この最高裁部外秘資料に載っている。」

ジャーナリストの吉田敏浩さんが見つけたのは、「部外秘」と書かれた最高裁判所の資料。そこには、空欄となっていた慰謝料の申請や処理の方法について、細かく記されていました。資料の日付は1952年7月。「空欄」の文章の日付と一致しています。

吉田敏浩さん「おそらく大筋では、こういった形式で(運用が)続いているんだとは思いますが、その内容自体は非公開にされたままなんですね。」

その後、外務省から、空白部分に関する会談の記録は出せないと通知が来ました。

「公にすることにより、米国との信頼関係が損なわれるおそれがあるため、不開示としました」

多発するアメリカ軍がらみの事件事故。人権に係る重要な合意は、見えないところで生み出され、外交を理由に隠し続けられています。

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新垣勉弁護士「ガラス張りの制度にして、被害者にも納得してもらうような制度運営をするのが本来望ましいものだと思うんですね。」

アメリカ軍がどのような基準で、審査を行っているのか防衛省に問い合わせたところ、「日本側は把握していない」ということです。そして見舞金で払われなかった差額は、日本政府が支払うことになっていて、つまりアメリカ兵の支払い責任を私たちが税金で負うことになるのです。