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さて、きのうからこの宮森ジェット機墜落事故については独自取材で明らかになったアメリカ軍が書いた医療報告書をお伝えしています。2日目のきょうは、この文書が何の目的で作られたものかその意図を探ります。

宮森ジェット機事故米軍医療報告書にみる新事実01

當眞嗣孝さん「飛行機が落ちて、そして頭に破片が刺さって飛ばされたと。そして頭が割れていたので死んだと思って。だから私は学校にも、市役所にも死亡届けが出ていたらしいです。」

事故当時3年生だった當眞嗣孝さんは爆風で飛ばされ、頭蓋骨骨折の重傷を負いました。アメリカ軍が作成した医療報告書には、当時の痛々しい写真が残っていました。

當眞嗣孝さん「そうですね、私ですよ。初めて見ましたですね。少なくとも4、5回くらいは手術したような記憶がある。普通手術と言うと、糸で縫うと思うが、糸じゃなくて、針金で縫われていた、針金で。」

當眞さんは、長い入院生活で出会った他の負傷者のことを覚えていました。

當眞嗣孝さん「やけどの人が多かった。一般の人、学生じゃなくて、一般の人もやけどをして、女性で肌を見せられないじゃないですか。男の子見たいにTシャツ一枚というわけにはいかないじゃないので、夏なのに冬含みたいな長袖をつけて、沈んでいた。」

この事故のケガ人は200人以上に上っていますが、彼らの治療の経過やその後の暮らしぶりを調査した資料は残されていません。

今回見つかったアメリカ軍の医療報告書は多くの人がケガと闘っているさなかにも関わらず、アメリカ軍の処置で患者は回復に向かい、事態が収拾に向かっているかのような内容になっていました。

宮森ジェット機事故米軍医療報告書にみる新事実02

「沖縄ではアメリカ政府に対する負傷者の要求が解決されていなかったため、政治的緊張が高まっていたが、最初の数日でおさまってきたのは明らかだった。全ての要求は現金支払いとアメリカの施設での治療を約束することで解決した。」

被害者たちの証言とは明らかに食い違う報告書。一体これは、誰が何の目的で作ったものなのか。沖縄国際大学の佐藤学教授はある記述に注目しています。

佐藤学教授「1つ気になったのは、空軍の損害賠償担当局からの要請で、患者が加わったという記述があるんですけど、これは要するに事故を起こしたのは空軍で、病院は陸軍が持っていて、これを治療したのは陸軍病院で恐らく軍の中での予算配分、だれがどう出費するのか、という話しがあったと思うんです。」

さらに、報告書に添付されている笑顔の医師と子どもたちの写真。アメリカ軍が沖縄の人たちの反発を抑え込もうとメディアを利用した事実もはっきり書かれていました。

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「1番と2番は患者が診察を受けた外科外来部局で撮影された写真で、これは石川での事故が原因の反米感情を和らげるため、沖縄のメディアにリリースされたものである。」

佐藤学教授「1959年の沖縄は日本の憲法が停止されていて、アメリカ市民、国民でもない。そういうところの人がその後どうするのか、責任を負うつもりもない。治療はしましたと打ち立てておいて、改善しました。というおしまいにする話だと思います。」

當眞嗣孝さん「その当時は、あまりにも貧乏人が多くて、一度っきりの補償金をあげて、それで人間の口を塞いでしまったという記憶しかないですね。今はそう思っています。」

事故から数年が経ち、人々の生活が落ち着き始めても當眞さんは後遺症に悩まされました。

當眞嗣孝さん「4年生に転入したが、字が読めなくて、非常に苦労しました。幼稚園生、1年生、2年生、結局ジェット機が落ちるまでの3年生の間の記憶が一切ない。記憶が一切なくて、勉強をやったという記憶が無いものだから字も読めないし書けないし。」

さらに50代をすぎてから驚くような事実を医師から聞かされたと言います。

宮森ジェット機事故米軍医療報告書にみる新事実04

當眞嗣孝さん「脳のMRIを当ててみたら、幼児の頃に大きな脳梗塞をしているねと言われて、どうしてですかって言ったら、ちゃんとMRI映った写真というか、これを見せてくれと言われたんです。」

當眞さんは今も頭痛に悩まされ、将来に不安を感じています。小学校にジェット機が墜落するという衝撃的な事故も57年の間に風化しようとしていますが被害者の苦しみは、あの日からずっと続いているのです。

学校という子ども達にとって一番安全であるはずの場所に空から突然、パイロットが脱出した無人のジェット機が落ち多くの子どもたちの命が奪われ、傷つきました。

しかし、今回見つかったアメリカ軍の医療報告書からは苦悩するケガ人や遺族への配慮は感じられません。早く事故を収束させたいという思いよりも、沖縄の人々の命を軽く見る思いが見え隠れします。