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来年の春から高校の現代社会の授業で使われる教科書に大きな変化が起きています。大矢さんに入ってもらいます。大矢さん、教科書の記述が問題になっていますがそれがどこにあるのでしょうか。

こちらに再現してみた教科書が、問題となっている帝国書院が発行する「新現代社会」です。こちらの教科書、先月、教科書検定を通過しましたが、一部に、事実と異なる箇所があるとの指摘を受け、文科省に訂正申請が出され、今月11日付で、あらたに承認されといいう経緯があるんです。では、何が訂正されたのか見ていきましょう。

Q+リポート 「教科書が自主規制していく」沖縄への“誤解”なぜ生まれる

まず、訂正前。記述の内容を大きく3つのパートに色分けしました・

「アメリカ軍がいることで、地元経済がうるおっているという意見がある」と始まり、最後は、「日本政府も、事実上、基地の存続と引き換えに莫大な振興資金を沖縄県に支出しており、県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」と書かれていました。

これが、指摘を受け、こちらに訂正されます。注目して頂きたいのは、最後のところです。

「日本政府は沖縄のアメリカ統治が続いたこと、広大な海域に多数の離島が点在していることなど、そしてアメリカ軍施設が沖縄県に集中していることなどを考慮して、年間3000億円の振興資金を沖縄に支出し、公共事業などを実施している」とあります。

これでは訂正したけれど、さらにそこに沖縄は基地の見返りにお金をもらっているとの誤解を与える記述が書き加えられているかっこうですよね。

これは、あきらかに誤りです。なぜ、このような教科書が生まれるのか、専門家に話を聞いてました。

Q+リポート 「教科書が自主規制していく」沖縄への“誤解”なぜ生まれる

琉球大学・山口剛史准教授「訂正申請をしたことが解決になるとは思っていない」

そう話すのは、琉球大学で教育学を担当する山口剛史准教授。今回、帝国書院が「訂正」した内容は「訂正になってはいない」と指摘します。

そもそも、訂正された教科書に書き加えられた「年間3000億円」というのは「沖縄振興予算」のこと。これは、生活基盤の整備などのための予算で、アメリカ軍基地とは無関係に計上されるものです。

琉球大学・山口剛史准教授「経済効果があるから基地を置いてほしいとか、基地に依存していきたいという人たちがたくさんいるというようなこと自体は事実誤認になってしまうのではないだろうかと」

おととし、政府は教科書に関する新たな基準をもうけ、政府の見解を書くこと、定説がない場合は定説がないと明記することを定めたことが今回の教科書の内容に反映されていると山口准教授は指摘します。

琉球大学・山口剛史准教授「この間、教科書検定基準の改定や様々な政治の圧力の中で、教科書が自主規制をしていく。政府の今の考え方を並べていく、そういうかたちに教科書自体がなっている傾向は危惧されるところだと思います」

沖縄が莫大な国の予算をもらっているように見えますが、実際には、平成25年度の調べでは国庫支出金と地方交付税交付金の合計額は全国14位で、まったくの誤りであることは知られていますよね。

その誤りが教科書に記載されていることには驚きがあります。山口先生の話の中で印象的だったのが、教科書会社が自主規制をしていくということでした。

ことしの夏からは18歳選挙権が始まります。正しい知識がなければ、正しい選択はできません。教科書は子供達が最初に触れる「正しい知識」でなければならず問題は深刻です。