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69年前の沖縄戦で、人々が身を潜めた壕に向かってうちなーぐちで投降を呼びかけ、多くの命を救った人たちがいました。沖縄にルーツをもつ、日系アメリカ人たちです。そのひとりで、現在、ハワイに暮らす91才の男性が沖縄を訪れました。ふたつの国のはざまで生きた彼にとってあの沖縄戦とは

糸満市でのシンポジウム。ある男性が、アメリカ軍への入隊を決めた時の複雑な思いを語りました。

タケジロウ・ヒガさん「秒間戦争勃発のたった2年前にハワイに戻った私。(米軍に)志願しなければ敵性青年とみなされて、収容所にぶち込まれるかもしれないという思いで、仕方がなく志願しました。」

元アメリカ兵、タケジロウ・ヒガさん、91才です。ヒガさんは、北中城村で育ち、その後、ハワイに移住。日本軍の真珠湾攻撃を受け、アメリカ全土で高まる反日感情のうねりの中、悩みに悩んだ末、アメリカ軍への入隊を決めたのです。

タケジロウ・ヒガさん「沖縄戦開戦の日、船のデッキから沖縄本島を見て、言葉にならない悲しみでいっぱいでした。沖縄は私のルーツだから。米兵として故郷を攻撃する。なぜこんなことをしなければならないのかと。」

普天間基地を訪れたヒガさん。沖縄戦当時、うちなーぐちを話せる通訳だった自らの体験を語りました。

タケジロウ・ヒガさん「壕に向かって呼びかけました「みなさんはまだ若い。命は一つだけ。無駄にしてはいけない」

「故郷、沖縄の人たちを助けたい」という思いで数えきれないほどの壕を駆け回ったヒガさん。「もう歳で言うことを聞かなくなった」という体を引きずるようにしながら、基地の中に残された壕を訪ねました。ヒガさんが、およそ230人を救い出したとみられる壕です。この場所に立つと、戦争に対する思いが込み上げてくるといいます。

タケジロウ・ヒガさん「もともとは、物を壊す、人を殺す。それが目的。戦争は、私たち人々の欲がある限り、あるかもしれませんがね。戦争ほどばかばかしい人間の技はないと思います。」

今回はるばるハワイから訪れたヒガさん。「この壕を訪れるのは、これが最後かもしれない」と話し、集まった海兵隊員たちに向かって、「戦争は地獄だ、全てを破壊する」と、一生懸命訴えていたということです。