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特集です。聴覚に障害がありながら太鼓を力強く演奏する、「琉球聾太鼓」というグループがあります。そのメンバーの中に、60歳から和太鼓を始めたという、男性下地さんの思いを追いました。

下地さん「歳なんか関係なく、それ(太鼓)に夢中になってやり始めました。だから、60歳という感覚はなかったですね」

結成3年目を迎えた「琉球聾太鼓」。メンバーは全員、聴覚に障害をもっています。県聴覚障害者協会の会員と、沖縄ろう学校に通う生徒たちが、毎週土曜日の夜、それぞれ、学校や仕事後に集まって練習に励んでいます。今は老人ホームで披露するイベントに向け練習中。団体の顧問を務めるのは下地盛栄さん。64歳。4年前に和太鼓に魅了され、活動をはじめました。

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下地さん「なかなか皆に合わせられなくて、ずっと練習しながら苦しいなって思いながら練習を続けてきました」

苦戦しながらも、それでも練習を続ける毎日。下地さんをそこまで奮い立たせる理由がありました。

下地さん「前若い時に会社で働いている時に慰労会があって、カラオケに行ったんですけれども、聞こえる人たちは、歌うたって楽しいかもしれないけど自分は聞こえないので。なんか嫌な気持ちがしてそれから誘われても行かなくなりました」

楽しいはずの音楽なのに、自分が取り残されてしまったという過去の経験を語る下地さん。音楽なんて一生できないとさえ思ったといいます。

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下地さん「普通の音楽は音の強弱が分からないが、和太鼓の場合は太鼓の振動を感じることができる、それで太鼓を叩くことができるんです。」

太鼓を叩き、初めて音楽を肌で感じられた下地さん。その喜びはひとしおです。この日も、メンバーとの練習は夜遅くまで続けられました。

この日、下地さんは、ある会議に向かいました。車の中でも、太鼓のことは忘れていません。

下地さん「赤信号になった時とか、あとちょっと周りをみて、今なら練習できそうかなっていうタイミングを見て練習しています。いつも肌身離さず車の中において、いつも持ち歩いています。」

ハンドルを太鼓に見立てて叩き、常にリズムを忘れないようにしているという下地さん。この日、下地さんが参加したのは今月末に沖縄で初めて開催される全国ろうあ者体育大会のための会議でした。下地さんはこの大会の実行委員長として皆を支えています。

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県聴覚障害者協会 富川将宏事務局長「下地さんの姿を見ると若い人にも負けないで頑張っているなという風に思います」

体育大会実行委員会 我喜屋健事務局長「下地さんは私と同じ年なんですけども、私は活動をのんびりしたいなという気持ちもあるんですけども、下地さんにとってはそういうことがなくて、何でも一生懸命頑張っていらっしゃいますね。」

下地さん「成功に向けて頑張っていきたいと思います、宜しくお願いします。」

いよいよ、老人ホームでの演奏の本番の日を迎えました。控室では、立ち位置などの最終確認を行います。そして本番直前。緊張感が高まります。ハチマキをまく下地さん。気を引き締めます。

円陣「敬老会、がんばるぞ、おー。」

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下地さん「私たち琉球聾太鼓は、メンバーみんな聞こえません。耳が聞こえません。太鼓の振動を感じてリズムとか振動に合わせて太鼓を演奏しています。皆さんのために一生懸命演奏しますので、聞いてください」

見ていた人は「とってもよかったですよ」「よかったですね、もう私も手うって応援した。」と話しました。舞台の締めは、やっぱりカチャーシー。会場全体が盛り上がりました。身体で感じるリズム。耳が聞こえなくても、そこにある音楽の喜びは世界共通だと、下地さんは考えています。

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下地さん「今後、外国にもいって聞こえなくても太鼓ができるんだということを、メンバーと一緒に伝えていきたいなと思っています。年齢のことはあまり考えたことはないが、まだ体力は元気ですので、続くと思います。75、80くらいまで続けられたらなと思っています。」

下地さんたちは、体全体で太鼓の響きをとらえ表現しているんですが、その音の迫力と真剣な姿に一生懸命の大切さを改めて教えられました。下地さんたちは、今月25日から沖縄で開かれる全国ろうあ者体育大会の開会式で演奏を披露するということです。