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土の中から姿を現した巨大な構造物。金武町のギンバル訓練場にあった中距離ミサイル「メースB」。日米地位協定ではアメリカが土地を返還する際、提供された時の状態に戻したり、補償したりする義務を負わないとしているため、日本政府が1億5000万円をかけて撤去しています。

日本政府の責任を、より明確にしているのが去年施行された跡地利用推進法。返還される土地については建物や廃棄物、汚染物の除去に向けて国が「法制上、財政上、税制上、金融上の措置をとらなければならない」と明記しています。

ところが今回思いもよらない問題が発覚しました。ドラム缶が見つかった沖縄市のサッカー場。返還されて26年が経っていますが、返されて長い期間が経過した土地で汚染が見つかった場合、その調査や処理を誰が実施するのか定めた法制度がなく、「責任」の所在があいまいなのです。環境団体のメンバーとして返還軍用地の汚染の問題を調べてきた河村雅美さんはこう語ります。

河村雅美さん「このケースが出てこんなケースがあるんだと気付いたところがある。米軍基地の汚染に対応していない。今回のケースでは誰が責任を持ってどういう形で調査するか、 この2つの不備があぶり出されたのが沖縄市の例だと思う。」

実は過去にも似たような事ケースがあり、苦い経験をしていました。2002年、北谷町の射撃場跡地でタール状の液体が入ったドラム缶およそ200本が見つかった事件。アメリカ軍はそれらを自分たちが埋めた物とは認めなかったため、日本政府も対応を見合わせ、県や北谷町が調査などの負担を強いられることになったのです。

しかしその調査も納得のいかないものでした。

河村雅美さん「私たちがびっくりしたのは200本以上出たのに、検体が一つしか採られなかった。素人目から見てもずさん。なぜこの項目で、この検体数でなぜこの場所を採るのか全く計画されていない、そのまま結果が出て調査分析が無いままに、それからそこでドラム缶がなぜあったのか、聞き取りとかなぜあるのか含めずに、全く内容もドラム缶の中身も分からず、経緯も分からず、そのままにしてしまった。」 

こうした中、沖縄市の対応を急がせたのが皮肉にも「枯れ葉剤」への不安の声でした。沖縄市は、ドラム缶の発見から4日後には土壌などの調査を決定。国や県任せにはせず、市も独自で調査を行い、「ドラム缶に枯れ葉剤が含まれていた可能性」が出た後も事実を公開し、真摯に対応する考えを明らかにしたのです。

河村雅美さん「調査を誰がやるということと、調査は誰のための調査ということを考えて2つを比較する。私は国防を目的とする期間がやる調査、沖縄防衛局の調査。沖縄市は市民の健康を第一の目的とする調査をとらえています。非常にテストケースと言うか、これから非常に経験として大きいと思ったので。」

政府はサッカー場の観客スタンドなどを撤去し、全面調査することを決めました。これまでに無い異例の対応です。しかし課題もあります。沖縄防衛局は調査の結果、枯れ葉剤の存在に否定的です。そのため市と政府との方針には微妙な食い違いがあるのです。

東門沖縄市長「調査の際も、沖縄市としっかり協議してもらいたいと。国だけ突っ走るのではなく、クロス調査も入れたいと思っていますし、一番大事なのは市民が安心安全を感じる透明性を高めて納得いただけるようにしていただきたい。

小野寺防衛大臣「もう一度サッカー場として市民がサッカーできるようにしたいと思います。もしそこからドラム缶が出てきましたら、私ども陸上自衛隊の訓練場に保管させていただいて。」

東門沖縄市長「すぐ撤去じゃなくて、内容物とか出てきますので、ここで検体はしていただかないといけないと思います。」

今年4月、嘉手納より南側のアメリカ軍施設の返還を発表し、沖縄の経済発展が進むと胸を張った小野寺防衛大臣。しかし返って来る土地に汚染の心配もあります。河村さんは、この問題は沖縄市だけの問題ではなく県民が自分たちのこととして考えなければならない課題だと指摘します。

河村雅美さん「これから嘉手納以南の返還地の話が県内で大きな問題になると思うが、問題が出てきたら、これから返って来る土地に影響がある。不備のまま進めるのは非常に全県的な影響があるということで、市一つの問題ではなく、ここで制度の不備がどんなものかをきちんと学ぶ必要がある。」