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現代社会で多くの人が抱える「うつ病」。そのうちの一人でうつ病を抱えながらも社長として働く男性が、今月末に本を出版します。この本、そしてこの男性の姿から、私たちがうつ病とどう向き合っていくべきかを考えます。

『私のビジネススタイルは、うつ発症前と全く異なります。「うつ」になって以来、社員に「任せる」ことの重要さを痛感させられました』

「ハンディキャッパープレジデント」と題されたこの本。誰にでも見やすいように大きな字で、うつ病と向き合ってきた生活がつづられています。

糸数盛夫さん「これより編集会議を始めさせていただきます。宜しくお願いします」

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この本の著者であり、チーム・プレイズという企業の社長を20年以上務めているのが糸数盛夫さんです。糸数さんは、2009年秋のある朝、目覚めると全く体が動かなくなりました。病院の診断結果は、過労が原因のうつ病でした。

糸数さん「とにかくびっくりでした。それまで疲れとか知らなかった人間だったので。ONとOFFの切り替えが出来ないので。14~15時間くらい働いていました。孤独感というか、深い、光が見えないトンネルの中を歩くような感じ」

糸数さんはうつ発症後、社長として今までのように働くことができなくなりました。

糸数さんも患った「うつ病」とは、いったいどんな病気なのか。自身もうつ病経験者である心療内科医の蟻塚さんに伺いました。

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沖縄協同病院心療内科・蟻塚亮二部長「誰でもかかります。うつ病の憂鬱というのはこれが不思議なのだけど、朝起きた時に何の理屈もないけれど気持ちがつらいんです。メリハリがなくて、ずっとハイレベルで仕事をしているとちょっと無理が来るんじゃないでしょうか。周りにとって必要なのは、治れって言わないこと。うつ病になるということは、本人の心がけが悪いのではなくて、一生懸命頑張ったからうつになるわけだから」

ON・OFFの切り替えと周りの支え。この2つが糸数さんの今の生活にはありました。

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これは糸数さんが病気になってから書き始めたマインドマップ・心の地図です。時間軸に合わせて放射状に1日の予定を書き、わかりやすく整理することで自分の記憶を確認しています。以前の手帳に比べれば予定にゆとりがあるのもわかります。

午前9時、ゆったりと朝を過ごす糸数さんは会社ではなく、自宅で仕事のメールなどをチェックします。それからおよそ30分後、会社のある沖縄市へ向け出発します。

糸数さん「うちの会社の仲間を信頼しているからできるんですけど、本当に自分が最もやるべきことは何なのかということを大局的に見ることができる」

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今最もやるべきことは、体調を万全にすること。それは行き先にも表れています。

糸数さんは心身ともにリラックスするため、毎日、出社前に水泳を取り入れるようにしているのです。

糸数さん「僕はこれは業務の中の一部だと思っている。リワークするための」

水泳をしてからの出社。一見すると、楽をしているようにも見えますが、適度な運動をして体に無理をさせないように、少しでも早く病気を治そうという努力の一部なのです。

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糸数さんが社長として経営するのは就職支援のための学校、その名もパッション・ホープ・カレッジスクール。思いが込められた名前の学校で、就職を支援するためのセミナーなどを行っています。

午後になると糸数さんはこの日、最初の打ち合わせのため外へ。打ち合わせには、仕事にまだ不安のある糸数さんのため、スタッフがサポートにつくようになっています。

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この日はこの後、間に1時間の休憩を入れて2つの打ち合わせ。休憩を取るのも、会議を1時間ほどにするのも、糸数さんの体調を気遣ってのこと。そして打ち合わせが終わると…。

糸数さん「帰りますね、また明日よろしくお願いします。お先に失礼します、お疲れさまです」

実働4時間程度を目途に、糸数さんの一日の仕事は終わります。このように糸数さんが体調を気遣いながらの仕事ができるのは、現場スタッフの大きな支えのおかげです。

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スクール事業部・座波玲事務局長「早めに職場復帰していただくという流れで、この時間帯の活用というのは本人にとっても良いですし、私たちスタッフも理解した中でやっている感じですので。20年以上、チームプレイズという会社を彼が経営してきていますので、それならば社長が鬱の病気が回復するまで、みんなで支えていこうという形でスタッフ一丸となってやっています」

うつ病を境に一変した生活。それでも糸数さんは、病気の自分と向き合い、そして周りの温かな支えがあって一歩ずつ前へと進み続けています。

最後に本の帯にある言葉。『うつ病と向き合ってゆっくり走れば見えてくる世界がある』。糸数さんには病気になったからこそ、見えたものもありました

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糸数さん「(うつ病になって)失ったものでなく、あるものを数えていくと幸せが出てくるって言いますか。走っているときって、なかなかこういう足元のものが見えない、少なくとも私は忘れていた、置き忘れていたものが、ゆっくり景色を楽しんだりとか見られるようになってきて、すごい楽になって楽しい」

うつ病といいますと様々な症状がありますが、糸数さんの素直に自分に向き合う姿勢であったり、会社のスタッフの支えというのは、私たちがうつ病に向き合う一つのヒントになるのではないでしょうか

そしてこちらの本には「うつ病患者が立ち直るにはシェルター、避難する場所が必要」と書かれています。

糸数さんにとっては、それが水泳だったり休憩の時間だったりするわけです。私たちはうつ病を患う方にはそのような時間・場所が必要であることを理解していくべきだと言えます。

なお、こちらの本は今月29日から一般書店などで販売されるということです。