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新石垣空港の開港まであと3日です。最初の基本計画がつくられてからこの日を迎えるまで、実に37年という長い年月がありました。そこには、本土復帰後、社会資本の整備が加速する中、開発か環境保護かで二分された島の人々の激しい葛藤の歴史があったのです。これまでの経緯を振り返ります。

今月7日の開港を前に、華々しく行われた開港式典。離発着訓練面積はこれまでの3倍の142ヘクタール、滑走路も500メートル長い2000メートルに。より多くの乗客や貨物を積載できる中型機が運航できるようになることから、八重山経済の発展にと、期待が寄せられているのです。

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現在、国頭村の診療所で医師を務めるこちらの男性もそのひとり。前石垣市長 大浜長照さん「ようやくね。石垣市の本土復帰が空港の開港によって仕上がった。そういう思いでいっぱいです。」

1994年から16年間、石垣市長を務めた大浜長照さん。大浜さんには、新空港をつくらなければという強い使命感がありました。1982年、旧空港で起きたオーバーラン事故。那覇から石垣へと飛んできた定期便が、滑走路を外れ炎上したのです。

一報を受け、当時、県立八重山病院に医師として勤務していた大浜さんも現場に駆けつけました。

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大浜さん「当時の光景というのは、いつまでも焼き付いて消えないわけで。やはり飛行場は危険だ心配だという思いが常にあったわけです。だから安全な飛行場を作ろうというのが原点ですよ。」しかし、事故と同じ年にスタートした新空港事業は、その建設地をめぐり迷走することになります。

県が最初に発表した白保海上案。計画は、集落沖合のサンゴ礁を埋め立てるものだったため、住民だけでなく、世界的な環境保護団体をも巻き込んでの激しい反対運動が起こりました。

そして、その後も新たな予定地が浮上しては、反発が起き撤回されるという事態が、およそ20年に渡って繰り返されることになるのです。

元WWFジャパン職員 小林孝さん「ほんとにできちまったなぁー・・・なんでしょうか」「この周辺に実は私の大好きだった景観の良い場所がいくつもあったんですけど、それがもうことごとくなくなったわけですよね。そういう意味で、ここに来るのがちょっとつらい部分があります。」

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こう話すのは、かつて環境保護団体の職員として、反対運動に取り組んだ小林孝さん。小林さんが注目を集めたのは、1999年、当時の稲嶺県政が、暗礁に乗り上げた建設地選びを打破しようと設置した建設位置選定委員会でのこと。地元中心で構成された委員の中には、大浜さんの姿も。

小林さんは、この中でただひとり、環境保全は不可能だとして、現在の建設地となったカラ岳陸上案に、反対を貫いたのです。

小林さん「あくまでも反対は反対。だけれども、確かにこの島の皆さんが希望する空港であるんだということは、やっぱり尊重した。」

大浜さん「大変つらかったと思うんですよね。」「小林さんたちも長い間これ(経緯)見てるだけに、やはり島の将来考えて納得したと思うんです。妥協したと思う。」

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最終的に、委員会は、開発と環境保護を両立できるとして、カラ岳陸上案を選定。しかし、最後まで地域は賛否の声に二分され、それぞれのプレッシャーにも翻弄された小林さん。当時を特別の思いで振り返ります。

小林さん「推進派と反対派、それのいがみあいというのがあって、それはもう大変酷な歴史がありましたですね」「この島でまたこういったことが起きないようにするためにも、これまでの経緯、要するに歴史を忘れ去ってはいけないなぁという思いがとてもするんです。」

かつては、小林さんと意見を戦わせた大浜さんもこうした思いは同じです。

大浜さん「怒り悲しみとか妥協とか複雑な思いを持った人が多くいて、飛行場開港をみんなバンザイバンザイで大喜びするわけにはいかない方々もいるんですよね。」「ですから、これ多くの方々の努力が実ったわけであって、決して誰かひとりが頑張ったからではないということなんですよ。そこはぜひ多くの方々にわかってほしいなと思いますけどね」

新空港雑感さまざまな人間もようと時には島を二分する議論の末に完成した新空港。まもなく離陸の時を迎えます。

大浜さんと小林さんは、「開港がゴールではない」という点でも共通した思いを持っていて、今後も環境事後調査をしっかり継続していくということや尖閣問題で、八重山地域が日中間の緊張にさらされる中、新空港が軍事利用される可能性など、さまざまな課題を県民が注視していかなくてはいけないということを強くおっしゃっていました。

新空港をいかに有効利用していくか。その責任は私たちに託されています。