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動かぬ基地、きょうはおとといお伝えした、伊江島の現状第二弾です。伊江島といえば、沖縄の戦後史を代表する土地闘争で知られる島。しかし地元は、今も基地に翻弄され続けています。そこには、島の経済に深く入り込んだ、基地の実態がありました。

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名嘉さん「(Q.これは何ですか?)これは基地の境界。向こうに向かってあるでしょ、黄色いのが。向こうにおうちあるでしょ、あれはまた(軍用地から)外れているわけ。」

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島内のいたるところに建てられた黄色い鉄柱。これらが、アメリカ軍基地の境界線です。伊江島は、島の3分の1がアメリカ軍基地で占められています。基地とは言っても、その多くは、住民たちの農地でもある、いわゆる黙認耕作地。軍隊の演習と住民の生活が混在する、異様な光景が広がっています。

名嘉さん「国の勝手で(境界線が)決められているわけで、個人の権利は全然受け入れてもらっていないわけ。」

島の中でも、かつて激しい土地闘争が展開された真謝地区。平安山良有さんも、阿波根昌鴻さんと一緒に戦ったひとりです。

平安山さん「畑を集団で農耕すると、演習場に入ったんですよ。(米兵に銃で)強く打たれてですね、息もできないくらいのがあったんですけど。そしてその時32名の逮捕が。私たちは嘉手納に輸送機で連れていかれて、翌日裁判で6か月の懲役。」

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平安山さんは同じく農業を営む息子と、アメリカ軍に接収された7000坪の土地の契約を拒否し続けています。

平安山さんの息子「『きれいごとを言うな』という村民もいるかもしれないけど、『日本を守る』ということを米軍たちは言うんだけれども、軍隊に土地を貸すというのは、許されないことですよ。」

かつて農民たちが立ち上がった伊江島。しかし、状況は変わりつつあります。

農業用のため池に、観光客が行き交う港。これらの島のインフラ整備を可能としてきたのは、アメリカ軍基地と見返りに支払われる交付金なのです。

村長「学校の校舎の建築、道路の整備、村民が楽しめるゴルフ場、そのほかたくさんあるわけですよ。」

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村長「他の省庁のものを利用して出来ないことはないんだが、ただし、防衛(省)の事業と言うのは、短期間でこれを認めてくれた。そういうようなことも、村民への還元をしてきたというのがあるわけですから、そういうことで、ある程度基地に依存せざるをえない状況になったということです。」

さらに住民たちが基地に頼らざるを得ない要因のひとつが、島の農業の低迷です。

特に、島の主要産業のひとつである畜産は、近年の不況や、口蹄疫の風評被害などを受け、ここ20年間で、農家の数が、およそ半分にまで減少しました。畜産を営む名嘉さんは、所有している土地の半分が軍用地ですが、ここ4、5年ほど年間300万円もの赤字が続いています。

名嘉さん「(農業が)衰退しているというのは、これでは食っていけないからであって、高齢化して、農業も出来ない人たちはこれ(軍用地料)に頼らざるをえないというかな、それが現状だろうな。」

しかし、その軍用地料は実は、非常に安く抑えられています。伊江島で一番高い単価でも、一平米あたり、およそ445円。

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普天間基地、嘉手納基地など、県内のその他に比べると、伊江島での地料は比較にならないほど低いのです。それでも、軍用地料がなければ生活が成り立たちません。

「いずれは地料に頼らず、自立するためにも事業を拡大したい」という名嘉さんですが、農地の多くはいわゆる黙認耕作地。地主の自由に使うことはできません。

名嘉さん「基地がある上に、農業とか事業とか新しいのを導入できない。というのもあって、若い人たちのやる気というのかな、やる気のある人たちが損をする面もある。」

大城村長「提供地内においては建物も施設も出来ないわけですよ。提供地以外のところは基盤整理をばんばんやっていくし、提供地内のところは基盤整備が遅れるということも予想される。」

地主の自由にならない軍用地。基地への依存から抜け出したいと考えながらも、その農地が軍用地であるという現実。戦後、島の経済の根幹に深く入り込んだ基地が、人々をがんじがらめにしています。

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そんな住民たちの暮らしの中、新たに配備されたオスプレイ。配備から4か月。基地と隣り合わせで働く人々は日々、爆音と低周波の不安にさらされながら暮らしています。その影響は、地主にも、そうでない人にもおよび、いま、経済と異なる新たな火種を生んでいます。

名嘉さん「この3、4軒は騒音一番激しいではあるけど、向こうのあるでしょ、住宅が。あれは(軍用地)外れているわけさ。だから、そこに住民の不平不満があって、『何で向こうは(軍用地料)あって、こっちは同じように騒音があるのに』ってのがあるの。」

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名嘉さん「いつも住民の2極化というのが出てきて、(軍用地料を)取っている人はそれでいいのかといえば、そうではないので、健康はいつも心配しているので住民全体が。(軍用地料を)取ってない人たちも同じように我慢している。ということに対して、国はどうするか考えてあげるべきじゃないかな。」

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<記者解説>

Q:黙認耕作地は地代と農業のW収入かと思っていましたが、伊江島の地代がこんあに低いのは知らなかったし、基地だからこそ農業の整備もできないんですね。

軍用地の線引きは、住民たちの選んだものではなく、名嘉さんの言葉を借りれば「国の勝手で」引かれているものです。それによって、ひとつの島が分断されていることを取材の中で知って私も驚きました。

Q:軍用地料をめぐって分断されているから、声をあげにくいのも現状かもしれませんね。

伊江島の現状については報道も少なく、島の人たちからは「置き去りにされている」との声があると、先日もお伝えしました。地域に必要なものを防衛予算でさっと作ってくれる状況が当たりまえとなり、そうやって何十年も生活してきたからこそ、声高な反対を聞くことは少ないかもしれません。しかし、私はそれは決して賛成しているとは言えないし、オスプレイでもどうぞということではないと思いました。まさに基地にがんじがらめのまま、分断され、声を上げても無視されたままどうしていいのか分からない伊江島の状況は、沖縄の縮図であると考えて、解決の糸口を一緒に探していきたいと思っています。