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今月13日、普天間基地ゲート前で、アメリカ軍が掲げたある警告看板が撤去されました。それは、アメリカの法律を、日本国内に暮らす県民に向けるという、驚くべき内容のものでした。その看板の真意とは。大矢記者のリポートです。

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桃原さん「その看板はここで一枚おきに2,4,5枚ありますけど、1メーター、1メーターくらいで貼られていたんです」

宜野湾市議会議員の桃原功さん。今月13日、普天間基地野岳ゲート前で、驚くような出来事に遭遇しました。

「米兵が7名。憲兵が2,3名。もうものの2,3分で、この大きな掲示板を電動ミノでですね」「はぎ取ったかんじで」

撤去されたのは、ある「警告看板」。先月はじめ、オスプレイの強行配備に反対する人々がゲート前で座り込みをした直後に出されました。

そこに不可解な文言が。基地内制限区域に入る場合、「国内保安条例」と「合衆国法」というアメリカの法律に基づいて「身体、所持品の検査」をするいうのです。

「調べてやはりおかしいと。合衆国法に基づくと記されていたので」この掲示が「日本の主権を侵害する行為だ」と指摘するのは、琉球大学の高良鉄美教授です。

高良先生「米軍基地の中にいるアメリカ軍人にはアメリカの法律は適用されるわけ。だけど日本人にはそれは適用されない」

日本国内の日本人がアメリカの法律で処罰されることはありえないといいます。しかし、実は、こうした看板は、以前から県内各地で目撃されていたのです。

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「金武町のブルービーチ前に来ています。こちらには、何か看板の跡がありますね。老朽化していて、長い間こちらに置かれていた様子がうかがえます」

去年まで、ここにも問題の看板がありました。高良先生「基地は沖縄のものじゃなくて、米軍のものだと思っているのが根本にあるんですよね」「基地管理権は自分たちが持っているからできるというのと、米国の法をここで適用するのと、別問題」「都合のいい時だけアメリカの法律を引っ張ってきて、規制をする。都合が悪くなれば、アメリカの法律は適用されませんと。フェアじゃない」

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この看板は、30年ほど前に埼玉県でも設置され、国会で問題に。アメリカ軍は謝罪の言葉を述べたうえで誤りを認めました。しかし、なぜこのような威圧的な看板が何度も設置されてきたのか。

高良先生「(制定された1950年は)冷戦の時代ですから、共産主義がアメリカに入ってきて、共産主義者の活動によって、アメリカの政府が転覆されるということに対して、非常に恐れを抱いたんですね」「政府を転覆させるような組織とか、団体とか、を対象としている法律なんですよね。それを一般のひとにやれば当然(憲法で保障されている)集会の自由を侵害するし、表現の自由を侵害することになるわけですね」

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今回普天間基地で看板が出されたのはオスプレイへの抗議の運動が高まった時期。アメリカ軍は、QABの取材に対し、看板設置の理由を「普天間基地の安全を脅かそうとした大勢の抗議者に警告するためだった」と述べています。

高良先生「復帰前の米軍が、沖縄の人たちのいろんな集会などに対して銃剣を向けているというのがありましたけど」「抗議行動とか、集会に対して神経をとがらせているのが見える」「アメリカの法律を使って萎縮させているということになる」

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看板の撤去を目撃した宜野湾市議の桃原さんは、看板が撤去された今も葛藤を抱え続けています。

桃原さん「こうやって立つといつも疑問に思いますよね。どこに立っているのか。立ち位置はいつも沖縄でいたいんですけど、いつも、沖縄どこでも米軍基地があるので」「はたしてここはどこなんだろう。沖縄なんだろうか、と」

看板に書かれている保安法は、アメリカ国内では、言論や表現の自由を脅かす法律として、93年に主要な条文が削除されています。そんな法律を、オスプレイに抗議する県民に向けるという、許されない行為が行われた。

しかも、いま始まったことではなく、県内外で行われてきた。米軍の行動がいかに法的に誤りがあるかということをチェックする機能がこの国に欠落しているといえる。