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アメリカ議会上下両院の軍事委員会は12日、沖縄に駐留する海兵隊のグアムへの移転に関連する予算の全額を削除することで合意しました。近く、可決される見通しです。

アメリカ政府は、2012会計年度にグアムへの移転に伴う費用としておよそ1億5600万ドル、日本円でおよそ120億円を要求していました。下院は日米合意に基づき、政府の要求を認めていましたが、上院はグアムのインフラ整備の遅れや辺野古への代替施設建設の実現性を疑問視して、全額削除するよう求めたため、協議が続いていました。

米議会マケイン議員は「国防総省と我々は一旦立ち止まって再編問題全体についてできるだけ早く調査することで合意した」と話します。

海兵隊のグアム移転は普天間基地の辺野古への移設とセットで合意されているため、予算の全額削除が日米合意にどのような影響を与えるか注目が集まります。

一川防衛大臣は「最終的に、環境影響評価書が年内に作業が整うように作業を進めている。作業の方向は変わることではないと思う」と話します。

玄葉外務大臣は「今後、アメリカ政府としては改めてグアム移転に対するコミットメントを発表されるのではないかと」と話し、仲井真知事は「今度はグアム移転のどの予算なのか。アメリカ政府はなんて言っています?アメリカ大統領には拒否権がある。政府の反応見てみないと。そしてこの中にどんな予算があったのか」と話しました。

予算削減を求めてきた上院の中には、普天間基地の嘉手納統合案を強硬に主張する有力議員もいて、今後、日米両政府の対応によっては普天間基地移設問題はさらに混迷の度を深めそうです。

グアム移転費用削除 研究者はこう見る

海兵隊のグアム移転が困難になったことで、日米両政府がその前提のように語ってきた普天間基地の辺野古への移設の必要性も完全に崩れたわけですが、日本政府はこの事実すら辺野古移設が遅れたためとして、計画を急ごうとするのではと逆に懸念する声もあります。

沖縄国際大学の佐藤学教授は「日本政府は当然、そのように受け取ってとにかく辺野古をやらなければならないという政治的な材料で使うことは間違いないと思います」「日本政府にとって辺野古の基地を造って、それを差し出すことで、アメリカをつなぎとめること、それのみが今の政策の選択肢になっている」と話します。

財政状況が苦しいアメリカの情勢をみると、オバマ大統領がこの法案を認めるのは必至で、普天間基地の移設問題は今後、新たな局面を迎えることになりそうです。