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先週、玄葉大臣が発表した、日米地位協定の運用の見直し。きっかけとなったのは、ことし1月に沖縄市で起きた交通死亡事故です。

この事故では、アメリカ軍属の男が運転する車が対抗車線にはみ出して正面衝突。成人式のために帰省していた当時19歳の男性が亡くなりました。男は「公務中」を理由に不起訴となりましたが、運転禁止5年という懲戒処分のみで、刑事裁判にかけられていませんでした。

アメリカ軍属についてはこれまで、日本でもアメリカでも刑事裁判にかけられない状態が続いていて「法の空白」とされてきました。

しかし先週、那覇地検は日米地位協定の運用見直しを受け、これまでの不起訴を一転、起訴としたのです。

これまでは、軍属が公務中に事件・事故を起こした場合、日本では裁判ができず、アメリカ軍で運転禁止などの懲戒処分がなされていました。

今回の運用見直しでは、軍属に関する第一次裁判権はアメリカにありますが、アメリカが刑事裁判をしないときに限って、日本で裁判ができるよう要請することができ、その要請に対して、アメリカが「好意的考慮」を払うことで、日本が裁判権を行使できるというのです。

この場合、日本の要請は事件の被害者が死亡するか、生命を脅かす傷害を引き起こすなどといった条件が付けられています。

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国際問題研究者・新原昭治さん「(日本で裁けるとはいえ)どういうふうに仕分けをして、日本側に一部裁かせる可能性を開くかということについては、裁量権をアメリカが握り続ける」

日本の裁判権放棄などの密約を裏付ける資料を掘り起こしてきた新原昭治さんは、今回の見直しは本質的には何も変わっていないと指摘します。

新原さん「人が亡くなったり、重大なことが起きたときには、アメリカが好意的考慮を払うっていう、なんか施し物をしてくれるような、そういう書き方。当事者の玄葉外務大臣なんかが言ってるほどに、本質的な意味を持ちえていない」

日米地位協定に詳しい新垣勉弁護士は、今回の見直しを改悪だといいます。新垣弁護士は、軍属に対してはそもそもアメリカ軍に裁判権はないと主張します。

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新垣勉弁護士「地位協定でははっきりと軍法に服する者についてだけ米軍は裁判権を持つと書いてありますので、アメリカの連邦最高裁の判決に従うと、軍属は軍法の適応を受けないことになります」

1960年にアメリカの最高裁判所で、軍属を軍法会議にかけることは憲法違反とされ、軍属が「軍法会議に服する者」から外れた時点で、アメリカ軍は軍属に対する裁判権を失っているというのです。

新垣弁護士「日米地位協定の規定の中で、日本が公務中の軍属を裁けるようになっているにも関わらず、なぜ、アメリカ合衆国の第一次裁判権を認める運用合意をしたのか。これは地位協定の立場から言いますと、明らかに改悪であり、後退した合意」

新垣弁護士は解釈の余地を残したまま、運用の見直しだけを続ける政府に対して疑問を投げかけます。

新垣弁護士「国民の権利に関わる問題をちゃんと地位協定を改定することで明確にすることが大切」