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普天間移設を巡り、突如浮上した「安波案」。この移設案の中心人物とみられる上原元国頭村長も公民館に入っていきました。国頭村安波地区の住民の一部から普天間基地の移設受け入れの要請が上がった問題で、地元安波区ではきょう区民総会が開かれています。区民総会の会場に島袋記者が行っています。

島袋記者「はい、私は今、区民総会が開かれている国頭村安波区の公民館前にいます。こちら安波区は那覇から117キロ。沖縄自動車道の終点である名護市の許田インターからもおよそ55キロのところにある人口170人余りの小さな集落です。区民総会は午後5時から始まりました。私たち報道関係者は会場に立ち入ることができないため、中の様子は伺うことができませんが、きょうは先月末に政府関係者に示されたという『普天間代替施設の受け入れ案』について説明があるものと見られます」

今回突然浮上し、小さな集落を揺さぶっている計画はどんなものなのかまとめました。

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問題の発端となったのは、「安波空港建設と地域振興について」と書かれた3枚の要請書。

宛先は沖縄担当大臣を兼務する枝野官房長官。提出者として安波区の区長の名前とそれに賛同する区の評議委員や老人会長など、17人の署名と捺印が添えられています。

『沖縄県北部地域に観光客の玄関口となる空港が絶対に必要であります。従いまして航空自衛隊駐屯基地をこの際、広大な土地を有する安波地区に移設することを前提に、安波空港を建設し、自衛隊と民間が共用することが望ましいと考えます。また、普天間基地の返還及び、米海兵隊のグアム移転が完了するまでの間、普天間基地所属の米海兵隊が安波空港に同居する形とすることで訓練場にも近いことから米海兵隊の演習も十二分に行えると同時に、最大の懸案事項である、普天間基地周辺の危険性の除去が実現できます』

こうした要請の背景には地域の深刻な事情がありました。

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区民の健康と安全を祈願して行われる伝統行事「アブシバレー」で賑わう安波区ですが、この20年間で過疎化は進んでいて、区は基地受け入れの見返りとして、高速道路を終点の名護市許田から安波地区まで延長することなどの振興策を求めているのです。

しかし、突然の受け入れ表明に驚きを隠しきれないのが国頭村の宮城村長。政府要請の事実を知ったのは1週間も経ってからだったと言います。

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国頭村・宮城村長「雑談のような格好で突然出てきた。実は東京の方で、普天間飛行場の移設問題で安波地区っていうことで話が進んでいますよと。そういう話が突然出てきました。私も初耳でびっくりしました」

宮城村長は昨日、緊急に村内の区長たちを集め、いかなる条件がついても移設は受け入れないとの意向を表明しました。

宮城村長「この問題は安波区だけの問題ではなく、国頭村全体としても大きな問題であるし、沖縄県全体の問題でもある。そのことについては先ほど申し上げたような断固反対という考え方は貫きます」

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しかし、この案を重要視する人物もいます。区民と政府との橋渡し役となった国民新党の下地幹郎議員。下地議員は訪米の際、予定地の図面などを携え、アメリカの有力議員たちにも提示していました。

下地幹郎議員「2500メートルから3000メートルが造れる環境にあるのは確か。安波の方々が了解いただいて、国が了解して、それを米軍が認めることになれば、何メートルの飛行場になるかが決められることになると思う。向こう(安波区)から、そのことについて自分たちでまとめてやりたいと仰っているので、それは注目していかないとと思っています」

村長も知らないところで進められていた受け入れの計画。こういったやり方に疑問の声も上がっています。

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沖縄国際大学・佐藤学教授「(安波区は)地方自治法上の自治体では当然ない、議会ではない。さらに言えば、これは沖縄県と国との関係の話ですから、安波区だけで決まるものではない。安波区の議決で通ったとしても、それで何かが決まることではない」

沖縄大学・桜井国俊教授「基地を受け入れる見返りとして振興策をほしがっている、そういう声もあるという形で、沖縄に対する構造的差別がこれからも続いていくということを私は恐れる」

こうした地域の問題に政府は、あくまで日米合意の堅持を強調。

過疎化や財政不安を背景に突如浮上した「安波案」。普天間基地の移設問題を巡り、またもや小さな地域を対立に導いてしまうのでは。そんな事態が心配されています。

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島袋記者「先ほど区民総会の前に、今回の中心人物とされる上原前村長に取材を試みましたが『今のところ話せることはない』とのことでした。また政府関係者への要請書を出した地元安波区の渋井区長ですが、ノーコメントを貫いています」

賛否の決はとられたのでしょうか。

島袋記者「きょうの話合いの結果、どのような結論がでるのかはわかりませんが、いずれにせよ、国頭村の宮城村長は『反対』の意向で、小さな村はまたもや基地問題を巡って大きく揺さぶられています。以上、国頭村安波区から中継でした」