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歴代の総理大臣が存在を否定していた核の持ち込みなどに関する密約。その密約について調査していた外務省の有識者委員会が9日、岡田外務大臣に報告書を提出しました。しかしその内容は、密約の存在を認めつつも、政府の対応を擁護するものです。

2009年9月に外務省内に設置された委員会では、1960年の安保改定時に結ばれたとされる核の持ち込みに関する密約や、沖縄返還の際、本来、アメリカが支払うべき原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりすることなどを決めた密約について調査しました。

報告書では、核を搭載した船の寄港については日本政府が事前協議なしの寄港を事実上黙認していたと指摘。「暗黙の合意」という言葉を使い、広い意味の「密約」の存在を認めています。

また、朝鮮半島有事の際の基地使用に関する密約については、事前協議無しに直ちに出撃できることで合意していたことが確認されたと報告しています。

ただ「長い年月の間、国民に不正直な説明が続けられていたことは問題だ」としながらも「外交交渉にある程度の秘密性はつきもの。日本が軍備を持たず安全保障をアメリカに依存し、アメリカは冷戦さなかのソ連との厳しい競争の中、日本以外のアジア諸国も防衛する義務を負っており、日本の基地は重要だったということなど複雑な背景を持つがゆえに密約が生じた」などと、政府の対応を擁護するともとれるコメントで締めくくられています。

沖縄返還で佐藤総理大臣とニクソン大統領が交わしたのは「有事の際に沖縄に各を持ち込める」という密約ですが、今回、それについては「歴代の総理大臣を拘束するものではない」「密約ではない」という解釈になっている点です。

時の総理が少なくとも緊急時の核の持ち込みを認めていたという大きな事実に触れていないことも、当事者である沖縄にとっては納得しがたい内容になっています。

核の持ち込みなどに関する日米間の「密約」を調査していた外務省の有識者委員会が9日に岡田外務大臣に提出した報告書について、元県知事で、大田平和総合研究所を主宰する大田昌秀さんは、調査不足で不十分だと不満を示しています。

太田さんは「国民に不利な状況をもたらしていないかのような表現になっているが、沖縄にとっては差別的な処遇、明確に差別と言っていいような影響をもたらしている。基地問題一つをとってみても」と指摘しています。

また大田さんは、報告書は非常にわかりにくいと指摘。「密約という非常に重大な問題についての報告書なので、もう少し国民にわかりやすく、沖縄県民の問題が関わっているわけですから、県民にわかるように書いてほしい」と話していました。