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クラシックの若手演奏家の登竜門、シュガーホールの新人演奏会が15周年の節目を迎えました。今月11日の記念コンサート出演のため、思い出のホールに集まった演奏家たちを取材しました。

南城市佐敷。練習室にはモーツァルトのオペラ「女はみんなこうしたもの」のアンサンブルが流れています。二組のカップルが繰り広げる、愛の喜びにあふれた喜歌劇を軽やかに演じているのは、県内外で活躍する若手演奏家たち。

小橋さん「こんなこと言ったらあれだけど同窓会じゃないんですけど 笑」「みんなで集まってこの沖縄の地で歌えることが楽しい」

彼らは、このシュガーホールで毎年行われる新人演奏会で入賞し、演奏家としての第一歩を踏みだした人たちです。今月、演奏会の15周年を記念して歴代入賞者によるガラコンサートがひらかれることになりました。

小橋さん「あの頃いっしょうけんめいやってたから今がありますから当時の一生懸命さを忘れたらいかんと思います」

おきでんシュガーホール新人演奏会は1995年にスタート。沖縄から若手音楽家の発掘を目指す小さなホールの取り組みは15周年を迎えます。これは第一回の演奏会のようす。現在スイスのチューリヒ歌劇場管弦楽団ヴァイオリニストして活躍する新垣裕子さんや、作曲家の玉城篤さんなど、いまや中堅として音楽界を支える人たちの原点の姿があります。

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ヨーロッパ・東京で演奏活動を続けるフルート奏者・渡久地さんもこの演奏会出身者のひとり。若手演奏家の登竜門、新人演奏会が世に送り出した入賞者はこれまでに134人に上ります。シュガーホールの芸術アドバイザーをつとめる、指揮者の大勝秀也さん。ドイツをはじめヨーロッパ各地のオペラやオーケストラを指揮してきた大勝さんは、沖縄でクラシックをまなぶ若者たちにこんな感想を持っています。

大勝先生「沖縄の人ってフレキシブルというかリミットをあまり持たない。気付かないところでリミットはあるんですがどこまでキャパシティかを知らないところがいいところで、どんどんいろんなのを吸収して教わったらすっと自分のものにしていくという若い人がおおい」

ソプラノ歌手、知念利津子さん。のびやかで艶のある声、そして情感あふれる演技が注目されている、県出身の演奏家です。

知念さん「枠にとらわれない個性的な人が、やはりこの土地からは育っていると思います。そういう意味で私も枠にはまらない音楽を表現したいと思って」

知念さんは第10回演奏会のグランプリ。入賞後はドイツ・イタリアに留学し研さんを積んだあと東京や全国の演奏会でソリストを務めています。海外留学、本土での演奏活動を通して、沖縄に生まれ育った自分の中には音楽が息づいていることを実感したといいます。

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知念さん「やはり沖縄で生まれ育って」「ちゃんと勉強したり習っているわけでもないのに、ちゃんと心に、魂に刻み込まれている沖縄の音楽ってありますよね。それを一歩外に出た時に実感したんです」

オーディションは音楽を学ぶ人にとって、ひとつのステップ。そこからプロとしてどのような経験を積むか、そして、チャンスをどう生かしていくか。演奏家としての道が、沖縄の小さなホールから生まれています。

大勝先生「(演奏会から)巣立った時は新人だったんですが、それから3年・5年、10年と外で活躍することによってプロ意識というか」

知念さん「やはりお客さんが楽しんでくれないと演奏会は意味がないとみな思うようになっているところが、僕は久しぶりに集まってみんな変わったと思いますよ」

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知念さん「国際コンクールですから、海外からもいろんな方に挑戦してほしいと思いますし、やはり私としては沖縄の人間ですから、沖縄の人がどんどんここで表現して、チャンスをつかみとってくれたらいいなと思います」

沖縄の心を持って巣立った若い演奏家の皆さんが15年という時間の中でどのように変わったのか、私たち聴衆が演奏を聴くことが、音楽のすそ野を広げますよね。

オペラだけでなくヴァイオリンソロ、ピアノ協奏曲、管楽器アンサンブルなども演奏されるシュガーホールのガラコンサートは今週日曜日に開かれます。