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裁判官3人に加え、国民から選ばれる6人が、殺人などの重大な裁判に参加する裁判員制度。裁判員は、どんな心構えで裁判を迎えればよいのでしょうか。裁判員候補者や専門家に話を聞きました。

那覇地裁亀川所長「見て聴いて分かる裁判を行って、国民に身近な刑事裁判というものを目指していきたいと考えております。」

いよいよ始まった裁判員制度。今年、県内で裁判員候補2000人の中から、200人前後が実際に裁判員になるとみられています。すでに他県では裁判員制度対象事件が起訴され、制度は走り出しています。県内の裁判員候補者に心境を聞きました。

裁判員候補の男性「始まってみないと分からないところもありますし、始まっていない中で反対だなというようなことも言えないと思うんでね」

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この男性は、「もし裁判員になっても、冷静に審理できると思う」と、制度参加に前向きです。ただ、死刑を言い渡すことだけはできないと考えています。

裁判員候補の男性「いろいろと死刑廃止論等もある中で、実際に裁判官じゃない一般の人が死刑の判決下せるかというと、それは無理が無いかな?と考えています」「自分自身ではそういうことはできないと思います」

裁判に参加する国民が、死刑の判断にまで加わるのは、アメリカの一部の州を除いて、日本だけ。裁判員の責任は重大です。ではもし裁判員になったら、法廷で何をすべきなのでしょうか。

那覇地裁亀川所長「裁判員となった以上は、法廷に現れた証拠のみに基づいて判断していただきたいと。そして、それに対する素直な自分の意見を言っていただきたい」

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大事なのは証言や証拠、検察官と弁護士の話に集中し、自分の意見を築き上げること。ただ、国語教育学が専門の、つくば国際大学、入部明子教授は多くの裁判員はここで壁にぶつかると指摘します。

入部明子教授「裁判員としての勤めを全うしようとしたときにですね、論理的な思考力、論理的な表現力というのが、とても重要になってくると思います」

裁判員には、裁判官のような専門知識ではなく、一般的な常識に基づいた意見が求められています。ただ、意見を発表する前に、検察官の起訴状朗読から評議までの各過程で、どんな事実があり何が検察の主張なのかなど、逃さず見聞きする必要があります。

そして、根拠に基づく意見を発表します。入部教授は、市民感覚を裁判に反映するという、制度の意義が達成されるかは、裁判員のこうした能力にかかっている、というのです。また入部教授は、「法廷の審理を見聞きするだけで、裁判員は十分意見を述べられる」と、最高裁が裁判中のメモを勧めないことに疑問を感じています。

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入部明子教授「おかしいなと思ったことを書くことはとても大事で、裁判員制度でも合理的な疑問があれば有罪にできないわけですよね」「それがないとですね、せっかく聞いたのに忘れてしまって、評議の中での裁判長の話で決めてしまう可能性が出てくるところを、非常に危惧しています」

数日間かけて行われる裁判。このなかで自分が抱いた印象や疑問を記したメモがあってこそ、自分の意見を建設的に述べることができます。また、評議の段階で自分の意見がなければ、ほかの裁判員や裁判官の話に頷くだけになってしまいます。裁判員候補の男性も、審理の状況によってメモを取る場面も出てくるだろうと、考えています。

裁判員候補の男性「ある程度のメモは取らざるを得ないのかなと思いますし」「事実認識をきちっとしていかないと、論理の組み立ては難しい」