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大田昌秀参議院議員「若泉先生の責任の取り方に対して、ある種深い感銘を受けたわけですが、総理はその点についてどのようなご感想をお持ちでしょうか」

2006年3月、参議院予算委員会で、社民党の大田昌秀議員が、沖縄返還交渉の際、佐藤総理の密使として「密約」交渉に当たった若泉敬さんの著書を取り上げました。著書の中で若泉さんは「密約」があったことを公表しています。

小泉総理「私もあの本で外交交渉というものは、こういうものかと機微にわたっている大変興味深く読みまして、今の時点からいうと、あのような密使的な役割を果たす方は当分出ないだろうと」

歴代総理で、沖縄返還協定の密約を暗に認める答弁をしたのは小泉総理が初めてです。しかし、外務省は現在も「密約」の存在を一貫して否定しています。

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1972年5月15日、沖縄は日本に復帰しました。しかし復帰に向けた日米両政府の沖縄返還交渉の過程で、「密約」がありました。その柱は、核とカネでした。

カネの問題は、基地の返還、移転に当たっての費用を日本側が負担する。その額6億8500万ドル。このうち400万ドルは軍用地復元補償費としてアメリカ側が沖縄に支払うものでした。

毎日新聞の西山太吉記者が、外務省の事務官から極秘電信文の情報を入手。それは表向きはアメリカが沖縄に支払う400万ドルを日本側が肩代わりするという内容で、西山記者の「密約」スクープは国会でも取り上げられました。

しかし、日本政府は密約の存在を否定。逆に2人を国家公務員法違反容疑で逮捕。すると「密約」問題は「国家機密漏洩」へとすり返られていきました。当時、沖縄タイムス東京支社で取材に当たっていた元編集局長の由井晶子さんは、西山事件について当時を振り返ります。

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由井晶子元沖縄タイムス編集局長「経済問題にかかわる密約で大騒ぎしましたけれども、もっと重大な、核に関するものとかあるであろうと」「もちろん密約をしたこと、それをすっぱ抜いた人の業績というものは高く評価していました」

「密約」文書は、琉球大学の我部政明教授らによってアメリカ国立公文書館で発見され、西山さんが国家賠償法訴訟を起こします。しかし裁判所は「密約」の判断は避けて西山さんの訴えを退けました。

沖縄返還密約は新たな動きを見せ始めます。今年3月、ジャーナリストや識者らが原告となって「密約」文書の開示を求める情報公開請求訴訟を起こしたのです。アメリカで公開された「密約」文書は、沖縄返還協定に携わった外務省の吉野文六アメリカ局長と、リチャード・スナイダー駐日アメリカ公使の署名がされた秘密合意文書です。BYは吉野さんのサインでした。

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我部政明琉球大学教授「これまでアメリカ側の記録の中から出てきたように、日本側も署名しているというものです。アメリカの文書にあるのではなくて、アメリカの文書の中に日本も署名している文書が残っているわけですので、この写しが日本側にないはずがない」

つまり新たな訴訟の意義は、日本側が署名したアメリカの公文書があるにもかかわらず、一貫して「密約」を日本政府が否定するのであれば、政府の側でなぜないのかを説明する必要性が出てくる。今回の情報公開請求訴訟は、そのことを司法に判断させる画期的な訴訟だといえます。

原告に加わった由井さんはこう話します。

由井晶子さん「事実がしっかり明らかになっているにもかかわらず、日本(政府)は知らない、知らぬ存ぜぬ、ない、シラを切っていますよね」「少しは沖縄から、ちょっと違うんじゃないですかとうことを、日本の国民にも訴えるチャンスになれば」

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アメリカ軍再編の一環として、グアム移転協定が日米両政府によって締結されました。普天間基地の辺野古への移設を条件に、嘉手納基地以南の施設の返還、海兵隊のグアム移転などが盛り込まれています。

海兵隊8000人とその家族9000人をグアムへ移転させるグアム移転協定では、移転費用や施設、住宅建設費用を日本側が負担することが決まっています。グアム移転協定は、まさに37年前の沖縄返還協定が源流にあると指摘されています。沖縄に基地があり続け、アメリカ軍に「思いやり予算」を出し続ける構図に、この島に住む県民はどう向き合えばいいのでしょうか。

我部政明琉球大学教授「沖縄に基地があることについて沖縄の人がどう思っているのか、ということについて見れば、自分たちがこの基地とどんな形であるにせよ、直面、対峙しなければいけないという人たちであるという意味では当事者なので、どうすべきなのか、発言する権利というか、発言権は大きいと思います」