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県立病院の赤字を解消しようと、県は県立の6病院を地方独立行政法人化にする方針です。

しかし、独法化は離島へき地医療などの不採算部門の切り捨てが予想されるのではと、離島の人々の間に不安が広がっています。八重山地域の現状を金城記者が取材しました。

県立病院のあり方検討部会はこれまで6回開かれ、ほぼ議論は出尽くしたとして、県立病院を独立行政法人化へ切り離す案をとりまとめ、知事に答申する予定です。

なぜ今、独立行政法人化なのか。県は財政難を理由に赤字経営の県立病院事業にこれ以上予算を繰り出すことは出来ず、病院独自での経営改善を図るべきだとの考え方です。

竹富町西表島東部の大原地区。主な産業はさとうきびや畜産、観光がです。ここに県立八重山病院付属の大原診療所があります。県立病院の独法化の動きを懸念して、診療所に地域の人たちが集まってきました。

竹盛洋一さん「父親が急変して診療所に連れてきたら手術が必要だと。八重山病院へ搬送され、すぐに手術ができた」

山盛 力さん「医師がいなくなると、助かる命も助からない。一人の国民として、離島に住んでいても医療を平等に受ける権利がある」

石原和義さん「診療所とは単なる医療行為のみにあらず、お年寄りが話しをしたり、癒しの場所でもある。離島であればこそ、診療所に県は力を入れてほしい」

大原診療所の一日の患者は20人ほど。これでは診療所の経営は成り立ちません。離島へき地の診療所は不採算です。住民は独法化されると真っ先に診療所の切り捨てが始まると不安を募らせています。

独法化の問題の不安は大原地区に限らず、竹富町の島々、与那国町の住民にとっても同じことです。

今月7日、石垣市内で県立八重山病院の独法化に反対する八重山郡民総決起大会が開かれました。

主催者の大浜石垣市長は「いつも真っ先に切り捨てられるのは離島。命の重さは同じであり、医は算術か」と県の姿勢を強く批判。大会では県立病院の現行維持を求める大会決議が採択されました。

竹富町・川満栄長町長「不採算部門というのは離島医療。診療所がなくなることが当然考えられる。これは断固として反対。離島医療を逆に充実してほしい」

与那国町・外間守吉町長「採算性の合わないものについて当然切り捨てられることになるわけで。そうなると与那国町の医療はどうなるのか。これは崩壊に近いんじゃないのか」

そして、八重山地区医師会の上原副会長は、県立病院あってこそ開業医として医療を行える点を強調しました。

八重山地区医師会・上原秀政副会長「開業医の先生にとってバックアップである県立八重山病院の機能がしっかりしていないと、日々の診療も差し障りがある」

県立八重山病院は、八重山圏域の中核病院として救急、高度、離島へき地医療など一手に引き受けています。それに加えて年間80万人近い観光客が訪れます。観光客にも高度医療が提供できる県立病院の存在は、八重山観光を支えているといっても過言ではありません。

石垣市民「大変なことだと思います。県立病院がなくなるということは」「これまで通り、ちゃんと離島医療に責任を持ってやってほしい」

きのう、県議会予算特別委員会は、県立病院の独法化問題を集中審議しました。県立6病院の院長が答弁者として出席。独法化に疑問を投げかけました。

前田政明議員(共産党)「独立法人化したら、ほかの病院に医師を派遣することができるんですか?」

中部病院・平安山英盛院長「今でも派遣は非常に難しい。独法化されたら、私が経営者だったら(医師派遣は)難しいでしょう」

比嘉京子議員(社大党)「独法化に対して医師確保に対する不安は?」

宮古病院・安谷屋正明院長「離島に医師、看護師、医療技術部門の職員の確保がしっかり出来るのか疑問」

八重山病院・伊江朝次院長「毎年、医師確保に関して大変懸念している。医師を確保できるかどうかがその年の経営収支を左右する」

金城記者「離島へき地を抱える県立病院には不採算部門が生じるのは当たり前のことです。それをカバーするのが県の政策医療であるはずです。命の重さより、財政難を理由に独法化に突き進む県のあり方に大きな疑問が残ります」

島々に住む人々にとっては、救命救急医療などの高度、特殊医療から不採算部門の離島へき地医療までをカバーする医療体制の県立病院はまさに命綱。

離島へき地の人々が、自分達の命をどう見ているのかと不安や怒りを持つのは当然だと思います。県がめざす「均衡ある発展」の意味が改めて問われるところです。