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ことしに入り急増しているアメリカ軍の原子力潜水艦の寄港についてです。先月18日には、アメリカ海軍の原子力空母と航空自衛隊が沖縄近海で共同訓練を行うなど、軍事的な連携をさらに深める日本とアメリカ。沖縄の海でいったい何がおきているのか?岸本記者のリポートです。

嶺井カメラマン「過去最大級となる原子力潜水艦オハイオが今、ホワイトビーチに姿を現しました」

先月12日、うるま市のホワイトビーチに寄港したオハイオ。その2時間前に寄港したハンプトンの他、日本側への通知なしに入港したプロビデンスなど、原潜の入港回数はこの数年で急増。

去年は24回、ことしは現時点で39回を記録していて、神奈川の横須賀基地や長崎の佐世保基地への寄港回数が序々に減少しているのとはとても対照的です。

寄港増加の理由は何なのか?在日アメリカ軍の調査・研究を行うNPOピースデポの梅林宏道特別顧問はその大きな理由として「中国」に対する警戒をあげます。

ピースデポ・梅林宏道特別顧問「中国が一番気にしているのは、台湾海峡事態が起った時。中国は台湾海峡の制海権を確保して、台湾の独立を阻止するということを計画する訳。アメリカ(軍)は何とかして台湾海峡に入る態勢を確保しないといけない」

梅林さんはアメリカのこの考えは、アメリカ軍がアジアで影響力を保つための一方的な理屈だと指摘します。

梅林さん「アメリカの論理に立てばそうなんです。中国の脅威があるからと言いますが、それが正しい認識かどうかは別問題」

リムピース・頼和太郎さん「正面に見えるのがジョージワシントン原子力空母です。こうして仲間と情報を共有して、毎日どんな風に動いてるかを見てる訳です」

アメリカ軍の艦船や戦闘機の動きをこれまで13年間、毎日監視してきた市民団体「リムピース」の頼和太郎編集長はホワイトビーチへの原潜の寄港の目的は、アメリカ軍が説明する「補給や乗組員の休養」ではないと分析します。

頼さん「ホワイトビーチの寄港というのは一時寄港というのがものすごく多い。この横須賀にも原潜は入ります。でも一時寄港というのはこの2年間で一隻しかありません。ホワイトビーチへの寄港(目的)は、いわゆる乗組員の休養とかそういうものではない。僕はその潜水艦のデータ、無線では渡せない膨大な情報を磁気データとして渡してるのではと思う。そのためにホワイトビーチにちょっと寄ってすぐ出ていくと」

実際、ことしの39回の原潜の寄港のうち桟橋に接岸しない沖合寄港は実に33回にも上ります。

頼さんはオハイオに海上自衛隊の幹部2人が搭乗したことも問題視しています。

頼さん「オハイオは潜水艦を攻撃する潜水艦ではなく、相手の(領土)を攻撃する潜水艦ですから。平和憲法を踏みにじって、海外派兵とか、外国の領土を攻めるとかそういったことが出来る軍隊になりつつあるといった気がする」

日米の軍事一体化が進む一方、その情報の開示はますます制限される傾向にあります。

アメリカ軍は、原潜が日本に入港する際には外務省を通して県と地元市町村とその漁協、またマスコミに対し、24時間前までに連絡していましたが、2001年の同時テロ以降は原潜への攻撃を避けるため、マスコミを通知対象から除外。また、直接的な影響を受ける地元の漁民にも、潜水艦の寄港情報は完全には伝わっていません。

漁師「潜水艦が入るのか、入らないのかもわからない」「(Q:漁船の通行制限はどういう形で知るのか?)潜水艦が入ってこれば、アメリカ軍のパトロール船が止めに入る」

漁協への連絡はあっても、漁師は毎日、漁協に寄ってから漁に出るわけではないので、連絡が行き届いていないのが現状。

このホワイトビーチの今の状況は、多くの船で過密状態の海、そして連絡・監視体制の不備が原因で起きたことし2月のイージス艦と漁船の衝突事故の時と良く似ているとも言えます。

今後、沖縄の海はどう軍事的に利用されていくのか?

頼さん「いざという時に補助艦船だとか、調査船みたいなものがいつでも入れるようにしたいという気持ちはあるでしょう。そういう意味で、沖縄のいろんな港にこれからも入ろうとするかもしれません」

梅林さん「グアムもすでに3隻の潜水艦の母港になっている。ただ、台湾海峡ということを考えると、やっぱり沖縄はグアムよりずっと(米軍にとって)有利な場所にあるので、沖縄を使った情報交換は続くと思う」

アメリカ軍の「アジアの火種」に対する警戒の動きが沖縄の海の緊張をさらに高めています。

実際に、きのうも中国の海洋調査船が尖閣諸島付近で領海侵犯するなど、中国の動きが不穏なのは事実ですが、それに軍事力で睨みをきかせるのでは緊張が高まる一方です。武力によるエスカレートに歯止めをかけるためには、日本や基地を抱える沖縄から力に頼らない外交を提案することも必要です。