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Qリポートです。来年5月から始まる裁判員制度。先月28日には最高裁判所から全国およそ29万5000人に裁判員候補者の通知が送られました。県内でもきのうまでに、候補者となった人たちへ通知が届いているはずです。実際に裁判員裁判が始まるのは来年夏ごろと見られていますが、国民が司法に参加するこの制度のしくみと問題点について考えてみました。中村記者です。

先月28日から始まった裁判員候補者への通知。県内で裁判員候補者になるのは2000人で、その確率は529人に1人です。

最高裁判所では先月からコマーシャルなどを通じて制度開始を呼びかけています。

裁判員制度は、国民のなかから選ばれた6人の裁判員が刑事事件に参加し3人の裁判官とともに、被告人が、有罪かどうか、有罪の場合はどのような刑にするのかを決める制度です。

対象となる事件は、殺人や強盗致傷など一定の重大犯罪と決められています。ただ、暴力団が絡んだ犯罪や大掛かりな組織が関わっていて、判決後裁判員やその家族などに危害が加わえられる恐れのある事件については除外する規定が設けられています。

Q:もし裁判員候補者に選ばれたら?

「まだ実感はないですけど、真剣に考えてできる限り受けるようになるんじゃないかなと自分では思っています。」

「義務だからいかんといけないだろうね。いやだけどね。自分の時間を裂くことになるだろう。」

裁判員候補者は、20歳以上の有権者で各市町村の選挙管理委員会がくじによって選び作成した名簿をもとに選ばれます。今、住んでいる管轄の地方裁判所以外の裁判所で裁判員候補に選ばれることはありません。自衛官や警察官などの公務員は裁判員にはなれません。70歳以上の男女、20歳以上でも学生や生徒、病気などを理由に裁判員を断ることができます。

裁判員候補者が実際の裁判員となる仕組みはこうです。ある事件の裁判の日程が決まった時、裁判所が候補者名簿から再びくじで選び出します。選ばれるのは50人から100人です。裁判当日、その50人から100人が裁判所に呼び出され、裁判官、検察、弁護士を交えて面接が行われ3人の裁判員が選ばれます。当日の午前中はこの裁判員を選ぶ時間に当てられ、裁判が始まるのは午後からです。

那覇地裁では、これまで模擬裁判などを通じて市民に対して制度の周知を行ってきました。那覇地裁の吉井広幸裁判官も、実際に市民の反応を確かめていました。

吉井判事「法律の専門家じゃない人達とどういう風に話したらいいんだろうかという、本当に五里霧中の状態から始まりましたが模擬裁判とかやっていくと、そんなに心配しなくいてもいいのかなと、という手ごたえをかなり感じています。」

制度に対する市民の理解は浸透していると話てくれましたが、実際に裁判員として参加すること市民からは、

「罪は憎んでも、人は(憎まず)というのがあるじゃないですか。そんなこと考えたら、なかなか判決というのは難しい」「裁かれる方の一生にも関わることだったりもするので、その専門的な知識を積んでいない自分がやっていいのかどうかというところからまず悩んでしまいます。」

裁くことに対する不安だという声が多く聞かれました。

吉井判事「我々専門家であって、裁判員は専門家ではありませんからそういった違いに基づいて、裁判員がきちんと参加して意見が言いやすいように、サポートは十分にします。安心して一緒に審理・評決に臨んでくださいというような感じでしょうか。」

裁判員になった市民の不安を取り除く作業は惜しまないとしています。

一方で、裁かれる側の被告人を守る立場の弁護士からは裁判員制度自体の問題を上げて、制度の廃止を訴えています。

岡島弁護士「裁判員制度というのは、いわばその二つの柱、人権保障の観点から言っても真実発見のからいっても、まったく真っ向から遠さかっていく反対のほうにいっています。」

岡島弁護士は、裁判員裁判の場合、期間が3日から1週間という短い間に判決が出されてしまうため、被告人が反論するための十分な時間が与えられなかったり、裁判員が被害者の感情だけに配慮してしまうのではないかという危惧を抱いているのです。

岡島弁護士「訴追機関と被告人の側、対等の訴訟当事者であるという考え方がどれだけ社会に浸透するかということです。被告人の目線に立たないと制度のバランスが崩れるのです。制度のバランスが崩れたら、刑事訴訟自体のシステムが崩壊するはずです。」

岡島弁護士は被告人にもしっかり目を向けてほしいと訴えます。

日本の司法制度に大きな変化をもたらす裁判員制度。

吉井判事「参加する国民と裁判所が一緒にあるいは法曹関係者が一緒に育てていくものじゃないかなと思いますけど」

こちらが、裁判員候補者に送られた通知書の見本です。きのうから県内でも郵送による通知が始まっています。共同通信の試算によりますと、県内で裁判員候補者になって実際に呼び出しを受ける確率は1.3人とほぼ全員が呼ばれることになります。

最高裁判所では、候補者になった人からの相談などを受ける専用のコールセンターを設置しているということです。

以上Qリポートでした。