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地域住民の利便性を第一に自治体などの支援を受けながら走る、コミュニティバス。その導入を巡って、いま県内の自治体が揺れています。

自家用車を削らし、環境にもお年寄りなど交通弱者にも優しい、コミュニティバス。県内でも、これまで様々な導入例がありますが、採算性など、多くの課題を抱えているのが現状です。そして、ここにきて、撤退を決める自治体、一方、率先して導入を決定する自治体とコミュニティバスを巡る動きが、二分してきています。その現状を取材しました。

西原町内と那覇市のモノレール首里駅を結ぶコミュニティバス。西原町が9月から実証実験として運行させています。

「こちらが、コミュニティバスです。車両はごらんのようにとても小さいですが、夕方になりますとこうしてお客さんは大勢いらっしゃいます」

住民「初めてです。きょう」「便利っていうかね、助かりますよ」

コミュニティバスとは、地域住民の交通の利便性を目的に路線バスが走らない、いわゆる交通空白地帯など一定区域内の中を走るバスのこと。県内では現在、豊見城市などで本格運行が行われています。         運賃も安く、補助金など自治体の支援を受けているのが一般的です。自家用車を減らし、環境にも交通弱者にも優しいという触れ込みで、人気が広がる中バス事業そのものが経営難の中、収支ではほとんどの例が赤字です。

去年から今年にかけ、2ヶ月間の実証実験を行い、本格運行に向けて検討を進めてきた沖縄市。県内第二の都市での、大規模なコミュニティバス事業としてその行方が注目されてきました。しかし、採算性の問題から、このたび、ついに、本格運行は難しいとの見方を固めました。

こうした、実験だけで終わってしまうコミュニティバス事業は、徐々に増えています。

「こんにちはー、よろしくお願いします。このバスですか?はい」

そんな中、宜野湾市のNPO法人、オムニバスデザイン社は、県内でコミュニティバスを普及させようと今年8月、ついにバスまで購入しました。

高江洲代表「20数センチぐらいの高さまで下りてくるということで、乗り降りがしやすいというのが一番の特徴ですね」車両はオーストリア製の低床仕様車。ガソリンと天然ガスで走り、定員は27人。本土で中古車として売りに出されていました。

高江洲代表「その普及を図っていくことが僕らの一つの狙いでもあったので、もうチャンスだということで、買ってしまえということで、中古ですけど…」「ピンチですよ。確かにね。そういった意味ではピンチですけど、方法をもう一回考えてみるというそういった時期だっていうことではないんですかね」

一方、実験などを行わないまま、コミュニティバスの本格運行を決めた自治体があります。読谷村です。

副村長「交通混雑と交通事故の事故の危険も避けられますし、CO2削減にも当然つながっていくというふうに考えております」

来年4月から、路線バスが走らない交通空白地帯と、村役場を循環する村内3ルートで、コミュニティバスを運行させる計画です。村内全ての小中学校も通ることで、通学の足としても期待されています。年間の経費は試算で、およそ1,800万円。当初の運賃収入の目標は1000万円と、赤字は覚悟の上です。

副村長「採算性の面は、それを含めたそのサービスで補えるんじゃないかと思っていますので、最初から採算が合う、合わないの話ではなくてですね、村民の利便性を考えたコミュニティバスということになっております」

先週土曜日、宜野湾市では、オムニバスデザイン社が障害者らを招き、バスの試乗会を開催しました。低床バスは、乗り降りの際には、車体が自働で傾くため、車いすでも、ほとんど自力で乗れるほどです。

障害者「初めてです。今回が」「けっこう揺れも少ないし」

一行は、市内の産業祭りなどを見学しながらバスで市内を回りました。大勢で一緒に遠出するのは初めてのことです。いつでも、誰でも、どこへでも、オムニバスデザイン社では、コミュニティバスこそ、人にも環境にも優しい地域に欠かせないインフラの一つだと訴えます。

谷田貝理事「町にそういう人たちが出て来ることで、たとえば、町中のお店の売り上げが増えたりとか、あるいは、家に閉じこもりがちのお年寄りが街に出ることで元気になったりとかですね。生きがいを感じたりとか、そういうところも含めてコミュニティバスの評価をしていくべきだと思うので、もっと広い視点で見て、単純に運賃収入で経費が賄えないから赤字ですよじゃなくて、もっと広い視点で街に必要な装置だとそういう視点でとらえてほしいですし」

導入をめぐり、別れる自治体の対応。いま、あらためてコミュニティバスの意義が問われています。

県内の公共交通を考えた時、バスという移動手段は、決してはずせないものですよね。先ほど、バスマップのニュースがありましたが、コミュニティーバスも、県内のバスをもっと元気にする一つのツールですよね。県全体として充実させない限りは、お客さんの足は遠のくばかりで、まさに公共交通に対する、自治体の姿勢が問われているといえます。