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日本には、推定で240万人いるといわれるアルコール依存症患者。15年前に飲酒運転事故を起こし、アルコール依存症と診断された男性が断酒会を通じて立ち直り、現在は講演活動などで飲酒運転根絶を訴えています。どのような思いで活動を続けているか、取材しました。

大田元章さん「事故後、何年たっても飲酒運転による事故の被害者に対して、許されない過ちを犯した行為に、胸が張り裂けるような苦しみになります」

豊見城市の公民館で行われた飲酒運転根絶講演会。講師は自らの飲酒運転で事故を起こした体験を持つ男性で、現在、豊見城断酒会会長を務める大田元章さんです。

大田さんは15年前、酒を飲んで車を運転し、軽乗用車と衝突。軽乗用車の女性に大ケガを負わせました。

事故後も将来への不安から酒をたつことができず、さらに飲酒の量が増え、精神的にも不安定になり、その後、アルコール依存症と診断されました。

大田さん「酒を飲む喜びが生きがいみたいに感じた人生でしたから、いきなり依存症で、あなたは今後二度と飲めないですといわれても、受け入れられなかったですね」

ただ治療を受けても、また飲酒を繰り返す日々は続きます。

妻・房子さん「主人が、お酒が切れかかってくると幻覚を見るようになった。私が入院させなくなってから、自分で離脱と戦うわけですよね。部屋にこもって、三日ぐらい」

アルコール依存症はアルコール摂取を続けることによって、酒の量がコントロール出来なくなり、酒を飲まないと手の震えやイライラなど、身体的にも精神的にも障害が生じる状態です。一度かかると、完治することはありません。

大田さんは症状の悪化で、入院を余儀なくされました。

県の統計によれば、アルコール依存症で入院する人は過去5年、横ばい傾向にあります。

アルコール専門の治療を20年以上行っている糸満晴明病院。この病院では、断酒に向けての入院プログラムがあり、期間は2ヶ月半から3ヶ月を設定。

まず、最初の1ヶ月は完全に体内から酒を抜くために、投薬治療などで体調を回復させます。その後、医師のカウンセリングや入院患者同士で体験談を語り合い、お酒を飲まないための方法を見つけ出すのです。

プログラムの後半では、酒のない日常生活に慣れてもらうため、外出や外泊を許可しながら、退院に備えます。

糸満晴明病院アルコール病棟・平田雄三医長「やはり新しい生活をするのにリハビリテーションが必要で、それに慣れていく段階が必要。リハビリテーションのためにも断酒会というのは、重要な存在だと思っています」

大田さんが断酒会の門をたたいたのは10年前。断酒会はアルコール依存症の患者とその家族らが自らの体験を語り合い、情報を交換する集まりで、全国に650あります。

参加者「自分は4年前に断酒会につながっていながら、3年間回り道して、ようやく気づいた」「飲んでいるころと、今考えて比べると、比べ物にならないぐらい、今がいい」

大田さんは断酒会に参加し、自分と同じ悩みで苦しんでいる人たちと出会い、語りあうことで、仲間として絆ができたたことで、酒を断つことにつながっていきます。

大田さん「飲んでしまったら、仲間にも顔向けできないし、生きていけないといのが自分の中にありました」

大田さん夫妻は、断酒会への参加を強く呼びかけます。

房子さん「家族の方は敷居は高いですが、勇気を持って、援助者のいるところに助けを求めてほしいと思う」

大田さん「すべて回答は、断酒会のなかにあるものですから」

飲酒運転事故から15年。普通の生活が取り戻せた今でも、被害者の状況を思い、悩む日々は続いています。

アルコール依存症の本人はなかなか助けを求めることが出来ないので、その家族が是非、最寄の保健所などに相談してほしいと大田さん夫妻は話していました。